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その後(9)

「お、魔王様よ……こいつが対象のスナイクだ。で、あのババァ(ロジャ)の言っていたカプセルは……ここだな」


 再び小さな針を出すと、少しウネウネしているスナイクに刺して引き抜くミハイル。


「ホラ、こいつだ。俺はこんなモンに興味はね~から、魔王様が持っていてくれて良いぜ」


 突然投げ渡されたカプセルを見てミハイルの言っていた事は真実であると確信し、ロジャの愚行によって呪いに苦しみ、解除の為に大金を払っている現状を即座に改善すべきと思いつつも中身を広げる。


「うっ……確かに何らかの作成方法のようですが、残念ですが理解できません」


「そりゃそうだろうよ。作成方法のほんの一部が部分的に書いてあるだけだからよ?まぁ、こんなモンでもババァ(ロジャ)からすれば無くなれば薬は一切作れねーからな。俺達【癒しの雫】が呪いの対処を終わらせた事を確認できた時にでも捨てちまえば良いんじゃねーか?」


 そのまま未だに蠢いているスナイクに中身を抜いたカプセルを封入して、二人でロレアルとバーミルがいる場所まで戻る。


 何やら怪しげな液体がグツグツ煮立っており、そこから立ち上る煙だけでも具合が悪くなりそうな代物で、これが呪いを付与する薬だと言われれば簡単に納得できる外観、匂い、になっている。


 この場に留まっていたジスドネアと共にゴクドも非常に苦い表情なのだが、鍛冶三人組は満足そうな表情になっている。


「流石ロレアル。これならば万能解呪薬だ」


 鑑定ができるバーミルが、錬金術でこの薬品を作成したロレアルに鑑定結果を告げる。


「こ、これが?呪いを付与するのではなくて……ですか?」


 ジスドネアの言葉に深く頷くゴクドだが、その質問を一笑に付す三人組。


「おいおい、全ての(・・・)呪いの解呪ができる薬だぞ?呪いを打ち負かす程の力が必要なんだ。この位の雰囲気がなきゃ―、負けちまうだろうよ?」


 ミハイルの説明に納得できない部分はあるのだが、そう言うモノかと納得せざるを得ないゴクドとジスドネア。


「で、ミハイル様。どうやって呪いが発現していない者を探すのですか?」


「んぁ?説明しただろ?ババァ(ロジャ)が作ったモンにはババァ(ロジャ)の魔力紋が残っているんだよ。そんでそいつの状態、呪いの有無を探れば終わりだ。ま、この国から出国している奴もいるかもしれねーが、あのババァ(ロジャ)が作る程度の呪いじゃ、命の心配はね~だろ。一応この薬は余剰に作って置いておくぜ」


 再び針の魔道具を数か所に刺しているミハイルだが、その表情は少しだけ残念そうな表情に見えてしまい最悪の事態を想定したゴクドなのだが……


「魔王様よ、あのババァ(ロジャ)の商売は終盤に差し掛かっていたようだな。発現していない奴も含めて、呪いがあるのは三人だ。行くぜ!」


 こうして三人の家に向かって事情を説明した上で小分けにされた解除薬を手渡すのだが、その全員が非常に嫌そうな顔をする。


 まるで新たな呪いを付与されるかのような感覚に陥っているのだが、三人共に【癒しの雫】の驚異的な力を認識している側の魔族だった事、目の前には魔王や四星筆頭のジスドネアもいる事から、鼻をつまんで涙を流しながら一気に飲み干す。


「どれどれ……よし、呪いは解除されている。良かったね!」


 バーミルが鑑定してゴクドも同様に確認すると、今度は商会長であるロジャの元に戻る。


ババァ(ロジャ)、戻ったぜ。コイツがお探しの個体だろう?」


「はっ、異常に速いじゃないか。まさかどこかで購入してきたんじゃないだろうね?」


 ここでミハイルの機嫌が悪くなっては、折角今回の依頼を被害なく乗り越えられそうな所に水を差す事になるので、ゴクドが敢えて一歩前に出る。


「ロジャよ、御託は良い。このスナイクが探索を希望した個体かどうかを判断しろ」


「……はいよっ、と。フム、確かにこの個体で間違いなさそうだねぇ。少しだけ見直したよ」


 カプセルを仕込んでいる場所をさりげなく手で押して、中にカプセルがあるのかを確認したロジャは、満足そうにしている。


「そうか。ならば余は魔王国の国王として貴様を処罰する」


「ほぇ?何を言って……」


 ゴクドの手にはレシピの一部があり、これだけで全てがバレたと判断したロジャだが、何としてもそのレシピだけは手に入れる必要があると思い行動する。


 呪いを付与する薬は簡単だが解除する薬は非常に作成が難しく、仮に誰かしらが自分に呪いを付与してきた時に対処できないのだ。


 こんな商売をしていれば、いくら呪い付与の薬品を裏で売っていたとしても誰かしらに恨みを買う事は確実であり、その対策が取れなくなる事を嫌ったロジャはスナイクをゴクドに投げつけて、その隙に紙を奪い取ろうとする。


……べちゃ……


 顔面にスナイクを受けたゴクドだが、だからなんだと言う事で一切隙を見せないので、ロジャはすかさず手持ちの呪い付与の薬品をゴクドに浴びせる。


 これは即座に意識を奪う程の呪いであり、解除も非常に難しい呪いであるためにロジャ自身に万が一でも降りかかる可能性を考慮して普段は使う事がないのだが、この緊急事態ではそうも言っていられない……が目の前のゴクドは微動だにせず紙を燃やしながらこう言っている。


「は~、あの不味い……失礼。あの素晴らしい薬品を事前に飲んでおいて正解でしたよ、ミハイル様」


もう一話で、終了です

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