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その後(7)

 カロラを通して人選の結果を聞いたゴクドも、あの非人道的な、とんでもない機能を持つ魔道具を“生かさず殺さずマシーン”と言う非常識な名前をつけた人物が依頼遂行のメンバーの中に入っている事に気が付き、渋い顔をしている。


「ゴ、ゴクド様、このメンバー……ミハイル様がいらっしゃると言う事は、ちょっと……厳しいかもしれませんね」


「言うな。わかっている。わかっているがどうしようもないだろう!せいぜい、少しでも調査対象の一部でも残るように、更には魔王国に被害がないように祈るしかない!」


 絶望的な気分になっているゴクド達だが、それでも強さを見せつけると言う意味ではこれ以上ない成果にはなるので何とか上手く行くようにと祈る気持ちでいる。


 一方のミハイル一行は非常にやる気に満ち溢れている。


「ガハハハハ、気配を消している毛虫一匹を広大な土地から探し出すか!夢があるなぁ。だろう?バーミル、ロレアル!」


「全くだ。今後は討伐一辺倒じゃなくなるし、今回の依頼は願ってもない状況。最悪は少し周囲の環境が変わる程度だから問題ないしね」


「こんなチャンスは滅多にないからな。しっかりと鑑定しておかないと」


 ミハイル、ロレアル、バーミルの順の発言だが、真ん中の人物の発言の中には不穏な内容が含まれており、その言葉を残りの二人が全く否定しない様子を見ている他の【癒しの雫】のメンバーは、早い段階で魔王国に謝罪を入れたうえで補償の準備をした方が良いだろうと考えている。


 こうして意気揚々と【癒しの雫】を出てジャロリア王国を出国し、その気合からか全力で魔王国に向かってそう時間がかからずに到着する三人。


 出迎えたのは魔王国の国王……魔王であるゴクドと、四星筆頭のジスドネア。


「よ、ようこそお越しくださいました、【癒しの雫】の皆様。先ずは旅の疲れを癒してから依頼について話しましょう。どうぞこちらへ」


 ひきつった笑顔で鍛冶三人組を出迎え、迎賓館に通そうとするのだが……


「いやいや、俺達は全く疲れちゃいねーよ。早速小せー虫の調査をさせてくれ」


「ミハイル、虫じゃないぞ。えっと……」


「何だよ!ミハイルもバーミルも、蛇の魔獣スナイクだ。で、依頼主と早速話をさせて頂きたいけど、大丈夫かな?」


 少しでも被害が起きるのを後にずらそうとした二人の目論見は崩れ去り、即依頼を達成すべく活動を始めてしまう三人組。


 今回の依頼は、この魔王国の特産品の一つである呪いの解除薬をほぼ独占的に販売している商会長から来たものであり、流石のゴクドもいつもの通りに上から高圧的に対応できない相手だ。


 クオウの時代には、表向きにこの魔王国は平和で呪いの解除薬など必要にはなっていなかったのだが、短い間ではあったが、ゴクドの統治時代の初期には治安が悪化して魔王国内にも呪いによる攻撃を行うような人物が出てきてしまった。


 今は【癒しの雫】の力、特に同族であるフレナブルの力を恐れている者ばかりなので呪いによる攻撃を行うような者は鳴りを潜めているが、既に呪いを受けていた者も多数判明しており、未だに呪いが発動していない状況の者もいるはずなので、その解除が可能な薬を一手に販売している商会長の機嫌を損ねるわけにはいかないのだ。


 実はゴクド、次の依頼はこの呪いの解除を【癒しの雫】に依頼しようと思っているのだが、今この話を口にすると商会長が横槍を入れてくる事位はわかっているので黙っている。


「こちらです」


 こうして三人を商会長の自宅に案内すると、流石に話が通っているのか即座に中に案内される。


「今回、スナイクの捜索をお願いしたロジャだよ。一刻も早く私の可愛いスナイクを見つけておくれ。あの子がいないと私は寂しくてね。早く世話をしてあげたいよ」


 ロジャは、商会が独占している呪いの解除薬のレシピが漏れないようにその工程を小分けにしてそれぞれの場所に隠している。


 一応全ての工程は頭に入って入るのだが、あくまでも大まかな流れだけであり、細かい調整箇所については覚えきれないので、分割して保管しているのだ。


 その保管場所の一つが、今回逃走してしまったスナイクの体に埋め込んだカプセル。


 決してペットのスナイクが消えて不安であるために捜索するのではなく、レシピを早く手元に戻しておきたいと言う気持ちからの依頼だ。


 そもそも今回の呪いの攻撃増加はロジャがその攻撃ができる薬品を裏で製造して販売した結果であり、正にマッチポンプとでも言うべき商売を継続している。


 ゴクドとジスドネアはロジャの口ぶりに少し同情しているのだが、鍛冶三人組は一切そのような素振りを見せないばかりか、少し怒りの色が滲み出ている。


「おい、バぁさん(ロジャ)!お前、俺達【癒しの雫】を舐めてんのか?依頼の理由は正確に伝えろや!」


 突然切れるミハイルと、止める素振りが一切ない二人を見て焦るゴクドとジスドネアだが、ミハイルが魔道具を手にしている事から何か事情があるのかと様子を見守る。


「こいつはな、俺達特製のウソ発見器だ。お前は分かり易い程に依頼の内容を偽っている。だからこの依頼は完全には成立しねーよ。まぁ、【癒しの雫】のマスターが受けると言った以上は捜索(・・)はしてやるぜ、捜索(・・)は……な」


 今回の依頼を達成する事で、魔王国に反旗を翻す可能性が最も高い商会長ロジャを抑える切っ掛けにできると考えていたゴクドだが、ミハイルの一言でロジャを抑え込む必要はなくなったと理解する。


 ロジャは人族と侮っていたミハイルの剣幕に怯え切っているからだが、腐っても商会長であり、そのまま引き下がる事は無かった。


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