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ジャロリア国王の愚行(3)

 そもそも他国所属のギルドを自国の国家反逆罪で裁く事に大きな違和感があるのだが、そこはとりあえず無視し、失ってしまった権威を取り戻したと諸外国に理解させるための一つの手法としてこのような言い回しをしたのだが、今この場では悪手だ。


「ジャロリア国王、アルゾナのラスカーレ・アルゾナです。正しい判断を行った結果、貴公の申し出、謹んでお断りいたします。私は、我らアルゾナ王国は【癒しの雫】と共にある。逆にこの場で宣言させていただきましょう。貴公が【癒しの雫】に手を出した瞬間、我らはジャロリア王国を敵国とみなします」


 ジャロリア国王としては全く予想していなかった言葉が聞こえてきたのだが……期待しているような他国のアルゾナ王国を咎めるような声は聞こえてこなかった。


 この情報も、既にリビル公爵を送り届けて戻ってきているペトロによって筒抜けになっており、【癒しの雫】の他のメンバーも今日の謁見で事が起こる事は知っていたので、事前に決めていた対策を実行することにした。


「はぁ~、こんな事をしないで済めばよかったですね」


「クオウさん、落ち込まないでください。これが終われば、また日常が戻ってきますよ!」


 幼い子供であるシアの明るい笑顔に支えられている、最強魔王であったクオウ。


「クオウの旦那、マスターの言う通りだぜ。さっさと片付けようぜ!俺も早くこの武具のチェックをしてーんだ」


 ミハイルの言葉に、相変わらずだなと思いつつも苦笑をしているクオウ。


「じゃあ皆さん、作戦通りにお願いします!終了したら、明日は依頼を受けていませんからパーティーをしましょう!」


 シアの宣言で各自が事前に決めていた行動を起こす。


 と言っても実際にこれから対応をするのはフレナブル、カスミ、シアの三人だ。


 ラトールは、アルフレドとリアントと共にリビル公爵家の守りの為に【癒しの雫】にはいないし、残ったメンバーは【癒しの雫】を守るためにこの場に残る。


 フレナブルは、カスミとシアを伴ってギルドの裏庭で怯えて震えている人物に声をかける。


「お待たせしました。では、これより王城に行きますよ?」


「「は、はい!!」」


 そこにいるのは、現魔王であるゴクドと四星筆頭のジスドネア。


 五人で王城に向かって歩いていると、周辺住民が見た事もないような人物がいる事に不安を覚えて声をかけてくる。


「シアちゃん!どうしたんだい?何かあったのかい?」


「大丈夫です!あっ、ここに【勇者の館】や騎士達が来るかもしれませんが、残っているメンバーが対処しますのでご安心ください!」


 何が何だかわからないが、いつも通りの明るい笑顔のシアやフレナブル、カスミを見て不安が無くなった女性。


「わかったよ。でも、無理をすんじゃないよ?」


 本当に軽いやり取りをしつつも、少しだけ回り道をして王城に到着する。

 こうすれば、王城から向かって来る騎士やルーカスと鉢合わせないと考えての行動だ。


 ズカズカと遠慮無しに侵入し、必死で大陸中に正当性を主張している国王がいる部屋に侵入する。


「お久しぶりですね、国王陛下」


「?な??貴様、【癒しの雫】のギルドマスターか。そこにいるのは……」


 フレナブルは相当有名であり、魔族と知られている。

 国王はフレナブルが【癒しの雫】最強と認識しているので、瞬間に命の危機だと思い弁明する。


「ま、まて!何をしに来たか知らんが、余は悪くない。ルーカスを担いで【癒しの雫】を追い出そうとしているわけではないぞ!いつの間にか魔王国も大人しくなっているので、今の内にジャロリア王国の安定化を図ろうとしているだけだ!」


「……ジャロリア国王。魔王国がいつの間にか大人しくなっている?ルーカス率いる【勇者の館】の功績ではなかったのですか?」


「う?いや、アルゾナ国王。それは少々誤解があると言うかなんというか」


 ジャロリア国王は、ここで大陸中にとんでもない事を口走ってしまった事に気が付き修正しようとするのだが、その前に魔道具から大声が聞こえてきた。


「そ、そこにいるのは……魔王ゴクドではないか!」


 アルゾナ王国に隣接するテイグ帝国の皇帝によるこの一言で、ジャロリア国王は狼狽しつつも反逆者として【癒しの雫】を落とそうとする。


「み、見て頂けましたか諸国の王よ!これが【癒しの雫】が反逆者である良い証拠である。さぁ、決断なされよ!」


 自分の命を捨ててまで真実を告げると言う偽りの姿に酔っているジャロリア国王。


「あら?面白いですね。ではゴクド。真実を告げなさい!」


「はっ。お…我は指摘のあった通りに魔王国の国王だが、決してルーカスとか言う腑抜けにやられたわけではない。こちらにいらっしゃるフレナブル様を始めとした【癒しの雫】の命により、人族の国家に侵攻しない事にした。だが、例外もある」


「理解しましたよ。流石は【癒しの雫】ですね。魔王国すら制御するとは、素晴らしい。事実魔王がこう言っており、今この時点で侵攻がない事が良い証拠ですね」


 ここぞとばかりにアルゾナ国王がフォローを入れる。


「ありがとうございます。ゴクド、続き!」


 一気に機嫌がよくなるフレナブルだが、ゴクドに対する姿勢は厳しいままだ。


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