ジャロリア国王
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突然【癒しの雫】に騎士を伴って現れたジャロリア国王。
「……どう言ったご用件でしょうか?」
さんざん自分達を排除した人物であり、所在はジャロリア王国内部ではあるが、所属はアルゾナ王国であるために遜る事はしないシアと、その姿を見て納得の笑顔の【癒しの雫】のメンバー。
その態度に頬を軽く痙攣させながらも、あくまでも尊大な態度でこう告げる国王。
「【癒しの雫】に告げる。この度の魔獣共の襲来で防壁が破られてしまった事は知っておるだろう。修復しようとすると魔獣が現れるので、未だにそのままだ。だが、国家として、王都としての面目もある。そこでこの余自ら【癒しの雫】に対して直接依頼を告げる。出向いてやったのも、真摯な姿勢を見せるためだ。光栄に思うが良い。良いか?良く聞くのだ。今回の依頼は王都の……」
「お断りします」
説明を聞く前に、国王からの直接依頼を切って捨てるシア。
「さすがはマスターだぜ!なぁ?クオウの旦那!」
「そうですね。立派になりましたね」
【癒しの雫】の面々がシアを持ち上げている話を聞きながらも、平静を取り繕っているジャロリア国王は諦める事なく話を続けようとする。
「良く聞くがよい!」
「ですから、お断りします。そちらこそ良く聞いてください。そもそも私達【癒しの雫】はジャロリア王国所属ではありませんので、依頼を受ける義務も謂れもありません。どうせ防壁を修復するか、修復の間に襲撃しに来る魔獣の対処と言った所でしょうが、【勇者の館】のルーカス、ジャロリア王国認定のSランカーに任せれば良いと思いますよ?私達はジャロリア王国ではギルド認定されていませんから」
「フフフ、流石はシア様ですね。まぁ、一切依頼を受けずにアルゾナ王国に夜逃げして、挙句入国禁止を食らって戻ってくるような男が対処する事は不可能でしょうが、そんな男を推したのですから自業自得ですね」
「フレナブルさん、事実を言っちゃ可哀そう……でもないか。アハハハハ、前は威厳がある立派な方と思ったけど、こうしてみると小さいわね。この国の国王って」
「カスミ、あまり本当の事を言うなよ!」
何かを言おうとしても、いつの間にかジャロリア国王の悪口に繋がってしまう状況になっている。
「くっ、魔族風情が偉そうに!」
思わず漏れる本音。
「そうですね。ですから、そんな魔族を擁するギルド、いいえ、一集団に依頼を出さない方が良いですよ?では、お帰りください」
騎士達は【癒しの雫】の実力を嫌という程目にしているので、ここまでの不敬であっても止める事すらできずに、ただ見守っているだけだ。
最早ジャロリア王国で今迄通りに生活ができているのは、【癒しの雫】周辺だけ。
他は民が逃げ出すか、怯えて引きこもっているかの二択であり、国家としての体裁も取れなくなりつつある。
「ミハイル!貴様は人族としての誇りはないのか?貴様達が作った武具は相当な威力である事は間違いない。余も認めておる。その武具、我が騎士達に……」
「いや~、依頼を直接受ける事は出来ねーんだよ。何と言っても俺達のボスはギルドマスターだからな。そのマスターが受けないと言っている以上、受けるわけにはいかねーな。個人的にもお断りだ。よそを当たってくれ」
コバエを払うかのようにシッシと手を振るミハイル。
「これ以上不快な姿を晒すのであれば、こちらにも考えがありますよ!」
あまりにもしつこい国王に対して強硬手段も辞さないと暗に告げると、逃げるように去っていく一行。
「結局、何がしたかったのか……良くわかりませんね。そもそも【癒しの雫】がジャロリア王国の、しかも国王の依頼を受けると思っている時点で信じられません」
クオウの一言に全員が納得しつつも、話を元に戻して魔王国の話をする。
やはり何かしらの警告は必要だと言う事になり、行動に移すことになったのだ。
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