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ギルド本部受付の二人(4)

 所在はジャロリア王国にあれども所属はアルゾナ王国であるため、事務処理が少々異なっていたが、元ギルド本部の二人の力で事なきを得たクオウ。


「流石は元ギルド本部のお二人ですね。俺一人であれば、ここまで早く処理できませんでしたよ。ありがとうございます」


「いえいえ。基本的に本部の受付は、鑑定と周辺国に緊急依頼を出す可能性を含めて各国の事務処理に精通している必要がありますから」


「お役に立てて、嬉しいです。ですが、やはり【癒しの雫】は凄いですね。受けている依頼は高レベルばかり。そもそもあの距離を日帰りでこなすなんて……報酬金額も○が多すぎて、ちょっとクラクラしちゃいますね」


 漸く慣れて来てはいるが、アルゾナ王国近辺の魔獣の討伐依頼を毎日受けており、素材はミハイル達が使用する分を除いて全てアルゾナ王国のギルド本部に納品している。


 担当している所属冒険者は最早何かを隠す必要はないので、収納袋やら収納魔法やらを隠す事無く使っている為に納品数も多く、その実力の高さから得られる素材の状態も極めて良いので、報酬も凄い事になっている。


「そうだ!そろそろお二人も仕事に慣れてきたので、城下町で買い物等しゃれこんでは如何ですか?」


 【癒しの雫】の仲間になった二人はギルド裏の建屋で皆と共に生活しており、漸くミハイル達からの拘束時間も終了して仕事にも慣れ始めた事から、息抜きを提案しているクオウ。


「嬉しいですけれど、今あの場所へは……あまり行きたいとは思えません」


「危なそうですし、【勇者の館】も近いですから」


「アハハハ、勘違いしていますよ。俺達【癒しの雫】はアルゾナ王国所属ですよ?城下町と言えば、アルゾナ王国の事……ですよ!フレナブルの力が有れば、お二人を連れても十分ほどで着けますから」


 と、ここでも異常な力を紹介されるのだが、それであれば行ってみたい気持ちになり、二人はその提案を嬉しそうに受け入れ、翌日は休みとして息抜きをする事になった。


「では、参りましょう」


 フレナブルが闇魔法を行使して二人を収納すると、クオウの宣言した通りに十分ほどでアルゾナ王国に到着する。


 闇魔法による収納と聞いて怯えていた二人だが、そこはきちんと対処できており、睡眠状態にして保管した上で運搬しているフレナブル。


「着きました。こちらがアルゾナ王国……お二方は、恐らくギルド本部関連のお仕事で来られた事もあるかと思いますが」


「うわぁ~、眠くなったと思ったらついちゃった!」


「凄いですよ、フレナブルさん!!」


 入場門の前に並んで騒いでいる三人。

 特にそのうちの一人、【癒しの雫】のフレナブルに気が付いた門番の一人が慌てて駆け寄ってくる。


「フレナブル様、こんな所に並ばずに……そちらのお二方も【癒しの雫】のお方ですね?ささっ、こちらへ!」


 ギルドカードの紋章、円状に水滴が描かれているカードを見た門番の男性は、三人を列から外して即座に入国させる。


 この短い間でも相当の実績を叩き出している上に横柄な態度をとらない【癒しの雫】は、【鋭利な盾】が抜けた穴を塞ぐばかりか、それ以上の存在として称えられているので、周囲の誰もが文句を言ったり嫌な表情をしたりする事はない。


 こうして城壁外周辺を含めて非常に安定しているアルゾナ王国を満喫する事が出来ている三人。


 いつの間にか二人のペースに呑まれたフレナブルも、美味しい食事やお菓子、デザートを口に詰め込まれながら楽しく過ごす事が出来ていた。


「あ、そう言えば今日は本部に行っておりませんでした。少し顔を出してきますので、門を出た所でお待ちいただけますか?」


 楽しい時が過ぎるのは早い。


 今迄経験した事のない楽しさに、二人を送るついでにギルド本部の依頼について話を聞く事をすっかり忘れていたフレナブルは、ギルド本部に向かって消えて行く。


「じゃあ行こっか」


「そうしましょう。あ~、本当に楽しかった。こんな生活が続けば……ううん。続けられるように、頑張らなくっちゃ!」


 嬉しそうに話しながら出国し、出入国の邪魔にならないように少し外れた場所でフレナブルを待つ二人。


「おいおい、ねーちゃん。こんな所に二人でいると危ねーよ?俺達が守ってやるぜ?」


 どこにでもいるチンピラ。

 以前の二人であれば怯えていただろうが、今二人が日常的に接しているのはSランク魔獣すら瞬殺できるような冒険者達。


 冒険者でないミハイル達ですら、そもそも普通では素材を入手できないのだが、フレナブル達の力によって得た尋常ではないレベルの素材を加工した有りえない武具を使用してSランカー以上の力を得てしまっている。


 その武具、実はこの二人にも安全のために渡されており、既に実践訓練も終了しているのだから、この程度のチンピラに怯える要素がどこにもない。


「はぁ、鬱陶しいから消えてくれる?」


「そうそう、アンタ達に守ってもらう程弱くないから。力自慢がしたかったら、ジャロリア王国周辺にたむろしている魔獣でも相手にしたら?【自由の風】の冒険者さん」


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