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ギルド本部受付の二人(3)

話も終盤に差し掛かってきました

 とてつもなく価値がある物だとミバスロアとラスカから指摘されたのだが、あまり価値について詳しくないクオウは軽く回答する。


「あぁ、これはフレナブルが祖国を去る時に持ってきた調度品ですよ。結構飲みやすい水が出るので、良ければどうぞ」


「ありがとうござ……って、そうじゃなくって!!この価値、知っています?わかっています?大丈夫ですかクオウさん!?マスターも、ニコニコしていますけどこの価値を聞いたら……」


「ま、まぁまぁ、落ち着いてよ、ミバスロア。気持ちは分かるけど。その、クオウさん、マスター。この壺ですが、仮にオークションに出したとすると、虹金貨500枚(500億円)以上は確実ですよ?」


「ほえぇ~、凄いじゃないですかクオウさん。でも、なんだかもうギルドの一部と言う感じがしますから、できればこのままが良いですね?」


「流石はマスター。私達のセンスを認めて頂けたのですね!」


 何故水のでる壺が通常であれば込み合う依頼ボードの横にあるのか……センスの欠片もないと思っているラスカとミバスロアだが、冷静に考えればSランク魔獣すら瞬殺できる冒険者がいるのだから、虹金貨500枚(500億円)と聞いても驚かないのだろうと、無理やり自分達を納得させた。


「お、デカイ声がしたからやっぱりまだいたな。よしよし、嬢ちゃん達(ラスカ・ミバスロア)はちょっと来てくれよ。良いよな?マスター、旦那」


 そこに来たのは、何やら無駄にニヤニヤしているミハイル。


 呼ばれた二人は不思議そうな顔をしているが、これから何が起きるか想像できるシアとクオウは苦笑い。


 間違いなく二人の安全確保のための武具を与えるために各種調査が強制的に行われ、そして武具に対しての熱い想いを三人組から延々と聞かされる事になる。


 その後は鉄板の流れとして、出来上がった武具の説明に数日、実戦に数日、改良のための事情聴取に数日、更に実践と言う工程を繰り返す事になる。


「えっと、ラスカさんとミバスロアさんは、色々準備が整った後に受付業務について頂きますね。では、ミハイルさん、よろしくお願いします」


 二人の安全につながる事なので、疲れ切っている二人の姿が想像出来るのだが止める事はない。


 こんな長閑な【癒しの雫】とその周辺だが、王都中央付近にある王城やギルド本部、【勇者の館】を含めた各ギルドや冒険者達はそうではない。


「クソ!せっかくの武具が壊れやがった。おい!【癒しの雫】に発注を出しておけ!」


「む、無理です。もうあそこはジャロリア王国所属の者達の依頼を受けないと公言しています!」


 散々【癒しの雫】を邪魔者扱いしていたギルドのメンバーでさえ武具の性能は認めざるを得なかったのだが、その武具が、度重なる格上の魔獣との無理な戦いで破損し、メンテンナンスしようにも断られているのだ。


 巻き添えを食ってしまったのは【癒しの雫】に対して今までと変わらず接する事が出来ている者達だが、仮にここで【癒しの雫】がその者達だけに対応しようものなら、更に格上の魔獣討伐を押し付けられる可能性が高い事から、全ての依頼を断っていた。


 もちろんギルドの評価にならない地域の依頼は受けてはいるが……


 高性能の武具が使えなくなると、武具込みでの強さが認定されている冒険者達の戦力は一気に下がり、今まで何とか対処できていた魔獣に大敗を喫するようになる。


「おい、【勇者の館】はまだ出ねーのかよ?」


「そうだ!俺達ばかりが痛い目を見て、早く出させろ!Sランクギルドだろうが!!」


 ギルド本部では、数多くのギルドマスター達が本部ギルドマスターであるツイマに詰め寄って殺気立っている。


「その、【勇者の館】には依頼を出してはいるのですが……」


 出撃できない理由を知っているので、非常に歯切れが悪いツイマ。


 まさか人族の希望でもあるSランカーのルーカスが、魔獣が怖くて外に出られません……と言える訳もない。


 最近では【癒しの雫】がある場所近辺からしか出国できない程に周囲は荒れており、当然ジャロリア国王からも矢のような出撃要請が来ている。


 予定通りにジャロリア王国周辺を荒らす事が出来ている上、危険と認識しているフレナブルが所属する【癒しの雫】が今を持って尚対応しない事から魔王国側からの進撃はより苛烈になっているので、数日を待たずして最早城壁の外に出向いて対処できるレベルではなく、城壁の上から攻撃するだけになってしまったのだ。


 こうなってしまうと、もう出入国出来るのは【癒しの雫】が存在している場所の門だけ。


 身の危険を感じているこのエリア以外に住む人々は我先にと出国し、その様子を呆れた表情で見ている【癒しの雫】周辺住民。


「はぁ、あれ程助けになってくれていた【癒しの雫】を馬鹿にして、害虫の【勇者の館】を持ち上げればこうなるのは目に見えているだろうに」


「本当だ。未だにルーカスとか言う名ばかりの腰抜けSランカーは出撃していないと言うから、救えないな」


 この辺りの住民は、お茶をすすって急ぎ出国する人々を見ながらこんな話をするのが日課になってしまう程だ。


 この状況を横目に、【癒しの雫】の活動は続いている。


 所属国家が変わって依頼処理方法も若干違っていた事から、流石のクオウも暫くは対処に追われていたのだが、ミハイル達からの強制拉致地獄を終了したラスカとミバスロアの加入によって余裕を持って事務処理をさばけるようになっていた。


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