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アルゾナ王国の防衛(3)

 ルーカス一行を煽っているレベニにカロラも続く。


「そうだな。だがよ、冥途の土産に教えてやる。あれほど張り合いの無い戦いは無かったが、確かに俺達が人族のジジィを始末したぜ。次はテメーらだ!」


 どう見ても好戦的で、威圧からも相当な強さであると判断できる魔族二人に対し、【勇者の館】は半ば強引に奪った強力な武具を全員が持っている上、Sランカーのルーカス、Aランカー五人、元Aランカーのドリアスとハンナ。


 ここまで圧倒的な戦力差であれば負けは無いと、余裕の姿勢は崩さない。


「ハハハ、確かにお前らが倒した人はSランカーだったが、引退間近の爺ぃさんを捻った程度で調子に乗るなよ?」


 ルーカスのこの言葉は本心からの言葉で魔族を挑発する意味も有ったのだが、その言葉を聞いていた騎士や民達は、一瞬鉾を収めていた【勇者の館】に対する怒りの感情を再び心に灯す事になってしまった。


「フィライトさん、落ち着いて下さい」


 城門の上で状況を観察していた【鋭利な盾】のAランカーであり、目の前に見えている魔族と戦闘すらできずにギルドマスターであるホスフォを失ってしまったフィライトを見て、周囲の騎士は自らもルーカスの言葉に怒りの感情を沸かせながらも必死に宥めている。


 そんな住民達の気持ちなどお構いなしに、突如として戦闘は開始される。


 事前の約束通りに動いている魔族は、カロラがその身体能力を活かしてルーカスに襲い掛かり、他の冒険者達の対応をレベニが行っている。


 カロラの初撃こそ剣で何とか防いだルーカスだが、その一撃だけで大きく城門付近に吹き飛ばされる。


 他の【勇者の館】はルーカスの補助に動こうとするのだが、その先にレベニの魔術が炸裂する。


「クッ、この赤髪(レベニ)を先に始末するぞ!」


 ルーカスと共に戦闘しているのは、元からルーカスの近くに位置取りしていた元Aランカーの二人、ドリアスとハンナだ。


 この二人もルーカスの回復時間を稼ぐべくカロラに攻撃するのだが、ドリアスの短剣もハンナの炎魔術も全て軽く躱される。


 ダンジョンのとある階層とは異なる広大な場所であり、身体能力を十二分に活用できるので、いくら武具で能力を底上げしていたとしても敵う相手ではなかった。


「この野郎!」


 短剣を投げると同時に近接したドリアスだが、こちらの攻撃もあえなく片手で弾かれた瞬間に、ルーカスと同じ位置に吹き飛ばされる。


「あ~?テメーら舐めてんのか?三人揃ってもあのジジィの方がよっぽど歯ごたえがあったぜ?」


 悠々と近くにいるハンナに近接するカロラ。


 筋肉質で長身、更には丸坊主と言う威圧的な風貌にすっかり飲まれたハンナは、既に攻撃する気力は一切失っている。


「おう!聞いてんのか?コラ!」


 杖を持って震えているハンナの頭を軽く小突いたカロラだが、それだけで大きく仰け反って倒れ込むハンナ。


 その醜態を見せられている門番を始めとした騎士や民は我が目を疑っている。


圧倒的な強さを持つ魔族に対し、あれ程尊大で自信満々な態度を見せていたルーカス達は手も足も出ないのだ。


城門付近に吹き飛ばされているルーカスとドリアスは何とか収納袋から回復薬を取り出して飲んではいるが、再び魔族に仕掛ける素振りは一切見せていない。


レベニと戦闘しているAランカー達も劣勢で、既に半数以上が倒れてピクリとも動かない。


そこにレベニの魔術が炸裂するのだから、もう生きてはいないだろう。


 これは負けを認めて門を閉じるしかないかと判断した門番は、門を動かし始める。


 すると、近くにいたルーカスとドリアスは、門が閉まるのを察知して我先にと逃げ込んだので、門番、騎士ばかりか、その姿が目に入ったハンナさえ悲痛な声を上げていた。


「ル、ルーカス様!!」


「あの野郎!仲間を見捨ててさっさと逃げやがったぞ!」


「偉そうにしておきながら、本丸が来て敵わないと見るや、仲間もあっさり見捨てやがった!」


 城門の上から観察していた騎士やフィライトは、ルーカスとドリアスの動きに愕然としている。


「は~、少しは楽しめると思ったが、これまでか。だが、俺達の目的は先代を始末したあの男(ルーカス)だ。テメーじゃね~んだよな!」


 目の前で尻餅をついているハンナに向かって、カロラはわざとゆっくりと拳を引きつつ大声でこう告げる。


 そこに反応したのは、フィライトだ。


 完全に癒えていない体で城門の上から飛び降りる。


 城門の中から外には何の防御魔術もかかっておらず、場合によっては城門の上から攻撃を行えるが、逆は不可能。


 つまりフィライトは魔族を倒すか、逃げて城門内部に入るしか助かる道は無くなった。


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