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【癒しの雫】の活躍(防衛)(3)

「これ程とは思いませんでした。まるで魔獣の巣の中にいるようです」


 国境のジャロリア王国側の位置に到着したシア一行。


 急いでいたので街道に入った瞬間にフレナブルがシアを抱えて爆走し、カスミにあわせているので瞬間とは言わないが、数時間でこの場に到着している。


 そして見えた景色に対する感想が、シアの一言だ。


 未だかつてない程の魔獣の襲来だけに、既にジャロリア王国側に大きく侵入されているが、何とか援軍を待ちつつ持ちこたえている人族。


 シアの目に見えているのは、周囲を埋め尽くすような程の魔獣の群れ。


 この群れが直接ジャロリア王国に向かって襲い掛かれば、【癒しの雫】がいなければ手も足も出ずに崩壊する事は間違いないだろう。


 例え【勇者の館】がいたとしても多少防衛は出来るのだろうが、結果は同じだ。


「でもマスター。あれだけ騎士達が近くにいると、私の力では巻き添えにしちゃうわ」


「そうですね。あれだけ沢山混ざってしまうと、私でも厳しいかもしれませんね」


 既に王国側の騎士や冒険者達が魔獣を迎撃せんと命がけで戦闘しており、混戦状態になっている。


 ここに広範囲旬滅魔術をぶっ放そうものなら、騎士達も巻き添えになると二人は言っているのだ。


「ですよね……どうしましょうか。困りました」


 あまり時間をかけるとその分だけ犠牲が増えるが、かと言って、巻き添えを覚悟で魔術を行使する事も憚られる……


 実戦経験の無いシアでは打開策は出てこず、焦るばかりだ。


「では、ラトールに任せてはいかがでしょうか?」


 そこにフレナブルが助け舟を出す。


「え?ラトールちゃん?」


 シアの腕の中で眠そうにしているラトールに対策させると言っているフレナブル。


 シアもラトールの強さは信頼しているが、どのようにこの場を対処するのかは分からない。


 表情に出ていたのか、フレナブルは微笑みながら説明する。


「ラトールの威圧で魔獣を硬直させる事が可能です。その隙に、騎士や冒険者の方々にはジャロリア王国側に避難して頂きます。少々人族にも威圧が効いてしまうでしょうが、そこは頑張って頂くしかないですね」


 自分で考えても何も案が無い以上、フレナブルの案を即実行する事にした。


「ラトールちゃん、眠い所ゴメンね。お願いできる?」


 戦闘が行われている近くの崖まで移動して、ラトールに声がけするシア。


 ラトールも眠そうにしながらもフレナブルの話や状況把握は出来ているので、耳をピョコッと揺らしてシアの腕から飛び降りると、ピョンピョン無防備に戦闘が行われている方面に飛び跳ねていく。


 そこに、フレナブルが恐らく何かしらの魔術を行使しているのだろうが、心が洗われると錯覚するかのような声でこれからの事を伝えている。


 フレナブルは、魔王国側の魔獣に特殊個体がいる事は分かっているが、対処する術もない事を知っているので、このまま情報を流す。


「皆さん、私は【癒しの雫】のフレナブルと申します。国家の命を受け、この魔獣の対処に仲間と共に参りました。一旦威圧を行い魔獣の動きを止めます。皆さんにも影響は少なからずありますが、ジャロリア王国側に退避をお願い致します」


 直後、大気が揺れるかのような錯覚に襲われたシア。


 シアは威圧を行っているラトールよりもジャロリア王国側にいるので、実際に戦闘を行っている人が受ける威圧よりも遥かに小さい影響であるはずなのだが、それでもこれ程か……と、何故か感心している。


「未だ!離脱しろ!!」


 辛うじて動ける冒険者や騎士達が完全に動きを止めてしまった魔獣から離脱しつつ、威圧の影響を受けて動けない仲間、怪我によって動けない仲間を助けつつ離脱する。


 ラトールも人族に影響が出ないように調整しているのだが、力が強すぎてどうしても一部の人族に影響が出てしまっている。


 やがて威圧の影響が解けて魔獣が動き始めた頃に再びラトールが威圧する。


 この行為を複数回繰り返していく中で、シアがこの防衛を行っている騎士の一人から声をかけられる。


 必死で防衛していた騎士は、漸く援軍が来たと安堵した。


「おぉ、あなたが【癒しの雫】のギルドマスター殿……たしか、シア殿でしたかな?で、あちらの二人の冒険者以外の方々はどちらに?」


 これだけの大事態であるので、少数精鋭ながらもギルド所属の冒険者全員が来ているだろうと思っている騎士は、周囲を見回す。


「ここに来ているのは、私とあちらの二人、そしてマスコットのラトールだけです。えっと、これから広範囲魔術を行使しますが、全員避難できたと言う事で宜しいですか?」


 シアの前半の話に大きく落胆し、後半の話にギョッとする騎士。


「……えぇ、避難は完了しております。失礼ですが、お二人でこの数を対応するのですか?」


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