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Sランクギルドと(3)

 二つのギルドがかち合わない様に時間をずらして呼んでいた為、二つ目のギルド【癒しの雫】が夕方にギルド本部にやってくる。


 そこにいるのはギルドマスターのシア、そしていつもであればクオウがいるのだが、今日はミハイル、シルバだった。


 三人を見つけた担当のラスカは、三人をギルドマスターの私室に案内しつつ軽く話をする。


「お待ちしておりました。クオウさんではなくてミハイルさんとシルバさんが来るのは珍しいですね。いえ、初めてではないですか?」


「そうかもしれません」


 これからされる話は間違いなく魔王討伐関連依頼妥当とわかっているシア達は、いくらクオウ達が魔族に対して思い入れがないと言い切っていたとしても、魔王国を滅ぼす必要がある程の依頼を受けたくはなかったのだ。


 その為に魔族の三人とハーフであるペトロをギルドに残し、人族の一部だけで今回の呼び出しに応じる事にしていた。


「マスター、【癒しの雫】の皆さんをお連れしました」


「入ってくれ」

 

 そのまま扉を開けて中に入ると、ギルドマスターであるラクロスと受付のラスカに対面するように【癒しの雫】の三人は座る。


「早速だが本題だ。既に予想は出来ていると思うが、【勇者の館】が受けていた依頼をそのまま【癒しの雫】に引き継いでもらいたい。【勇者の館】はアルゾナ王国の防衛に重きを置く事になったので、魔王討伐と、迫りくる魔獣の対応だ」


 想定通りの内容であったため、既にシア達の中で決めていた通りの事を返す。


「魔獣の対応はさせていただきます。魔王討伐に関してですが、少し時間を頂いても良いでしょうか?迫りくる魔獣の対応は確実にするので、ジャロリア王国に被害は出ないようにします」


 普通であれば、非情に好戦的であると判明している魔王の脅威を前に何を甘ったれた事を言っているのだ!と言う事になるのだが、このセリフを言っているのがSランクの魔獣であるジュラすら仕留めたギルドを統括するギルドマスターの言葉であれば、無下には出来ない。


 変に機嫌を損ねさせて、ギルドの資格すら捨てる覚悟で反旗を翻されても困るのはギルド本部、そしてジャロリア王国、そしてこの世界なのだ。


 ギルドマスターではあるが、リビル公爵の騎士と言う立場でもあるラクロスは、最終的には国王の承認は必要になるのだが、一先ずは国家に対して魔族の脅威がなくなるのであれば問題ないだろうと判断する。


「それで問題ない。以前の状態に戻れるのであれば否やはない。とは言え、魔族にしてみれば突然自らの主を殺されたようなものだ。私もルーカス達が先代魔王を討伐したとリビル様と共に耳にして驚いたが、その衝撃以上に魔族達は怒りを感じているはず。そう簡単ではないだろうが、よろしく頼む。他国はそれぞれが認定している高レベルの者達が対応するだろう」


 前魔王(クオウ)の受け身の方針や、当時クオウはほぼ全ての魔族に良く思われていなかった為に、魔王国では前魔王(クオウ)討伐による怒りは無い事は分からないラクロス。


余談だが、ルーカス達がジャロリア国王含む一部の国家上層部の命令で前魔王(クオウ)を始末した事も結果を聞いて知ったほどで、リビル公爵自体が国王から公爵と言う立場であり重宝されてはいるのだが、穏健派と認識されている事が伺える。


 その為、リビル公爵の騎士でもあるラクロスも、魔王関連の情報は他の国家上層部と比較すると入りにくい立場にあったのだ。


 ある意味、他の者達がしでかした尻拭いをしている事になるラクロスだが、国家の危機である以上は文句も言ってはいられない。


 目の前の最後の希望とも言える【癒しの雫】のギルドマスターが、幼いながらも自信を持った表情で対応して見せると言い切るのだから、今迄の実績からも信じる他に手がないラクロス。


「では【癒しの雫】の皆さんに手段はお任せしますが、正式な依頼内容としては、迫りくる魔獣の対応、新魔王の件については別途折を見てと言う事にさせて頂きます」


 同席しているラスカは、ラクロスの言った最後の依頼の内容をその場で書面にし、ギルドマスターであるシアに差し出す。


「シアさん。こちらで宜しければ受託のサインを頂けますでしょうか」


 クオウよりギルドマスターとしての仕事を叩き込まれていたシアは、出された書類に目を通して問題ない事を確認すると、即サインをした。


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