農業指導
俺たちが今住んでいるところは、辺境の農村だから、主な産業は農業だ。自分たちの食べる分くらいは生産できる。自給自足で暮らすのも、別に悪くない。
俺たちに農業を指導してくれるのが、ドワーフのおっさん、スミスさんだ。
スミス「やあ、今日はトマトを栽培しているエリアを案内しよう。」
村は小さいが、畑は広い。広い土地に、人はまばらだ。いや亜人か。
スミス「実は、全ての小麦畑とライ麦畑と、野菜畑には、見張りとしてオオカミと、オオカミ男に変身するウェアウルフを差し向けているのさ。」
ザード「ウェアウルフ!?」
スミス「なーに、大丈夫。あいつらなら信用できる。ヘタな人間の皮だけ被っているような奴らよりもな。
人間の皮だけ被っている奴ら、それこそアノ帝国の兵と、ヒューマンオンリーの野盗どものことさ。
あいつらは、畑に火をつけたり、馬で踏み荒らしたりしてくるんだ。
だからな、奴らがそんなことをしないようにと、オオカミとオオカミ男を見張りとして、差し向けているのさ。」
アノ帝国兵に、ヒューマンオンリーの連中。
一応は人間だが、人の心はかけらもない。みじんもない。
俺は、栽培されているトマトを味見してみた。
うまい、実にうまい、こんなうまいトマトを食べたのは、生まれて初めてかもしれない。
こんなうまい作物を毎日のように自給自足で食べられるなら、一生こんな生活でもいいくらいだ。
ここで栽培している小麦と野菜と、牛肉、豚肉、鶏肉を使って、ハンバーガーを作って食べるのが、何よりの楽しみだ。
あとは、ここで栽培しているトマトを使って、
トマトケチャップを作れば、スパゲッティーの麺に絡ませれば、おいしいナポリタンの出来上がり、という。
ドワーフのスミスのおっさんは、料理を作るのも得意で、俺も自慢の料理を食べさせてもらっている。
こんな感じで毎日過ごしている。
しかし、よくよく考えてみた。
この世界では人間の方が悪者で亜人の方が人間の心を持ち合わせ、人間的な生活をしているという。
人間は、悲惨な事件が起こるたびに、よってたかってそれに飛びつく。あること無いこと、面白おかしく書きたてる。
一方で、ネットの掲示板とかいうやつでは、そう、ネット民とかいうやつらが、コメントというものを書くが、ほとんど特定の他人への批判、誹謗中傷だ。自分が悪いとは、絶対に認めない。都合の悪いことは全て他人のせいにする。
そうだな、マスコミもクズなら、ネット民もそれ以下のクズ。批判ばかり。
そんな種族に価値などあるのか。いっそのこと、ここいらで滅びた方がいいのではないか。
人間より強い種族が出てきて、いたぶってやらなければ、この先どんどん増長する一方だ。
しかしな、人間ってのは、本当にそんな悪い奴らばかりなのか?という思いも、どこかにある。
いつか、亜人と人間とが分かり合う。分かり合うようにするためには、間違いを一つずつ、正していくこと。
このまま争いを続ければ、犠牲は増え、やがて一方がもう一方を絶滅させるまで殺し合いを続けることになってしまいかねないと、最近になって、思い始めている。