エスペラント王国
エスペラント王国は、人間と、エルフ、ドワーフ、ホビット、それから亜種とか亜人とか呼ばれる、外見的な特徴は人間と同じだが、人間以外の種族の特徴を兼ね備えている者たちとの、共存共栄を図ろうとしているという、そういう国だ。
エスペラント王国とは、そういう国だ。
エスペラントという言葉自体が、種族や言語、文化の違いなどを越えて、共存共栄を図るという意味の言葉らしい。エスペラント王国の建国の祖、エスペラント1世が提唱したらしい。
それをよく思わない、単一種族による単一国家が支配する世界をつくろうとしているといわれているのが、アノ帝国であり、ヒューマンオンリーだという。
かくいう俺、ザードも、リザードマンと人間の両方の特徴、能力を兼ね備えている。
といっても俺の場合、外見的な特徴は人間と同じなので、簡単には見分けがつかない。
よく『トカゲの尻尾切り』などという言葉を聞く。これも育ての親に教わった言葉だが、俺には尻尾は無い。
見た目は人間の姿、強いていえば、トカゲの好物が俺の好物、といったところか。
エスペラント王も、もとをただせば、ドラゴニュートと人間のハーフだという。
建国の祖、エスペラント1世がドラゴニュートと人間のハーフだったということもあり、その子孫もまた、その血筋をひいており、実際に、自ら戦場に出て、竜石を使って戦うという。
なるほど、武器スキルの欄に、竜石というのがあったのは、そういうことか。
そしてなんと、エスペラント王国軍には、ゴブリンの部隊や、ケンタウロスの部隊までいるという。
ベヒーモスやグリフォンをペットとして飼い、放し飼いにしているという。
牧場で飼育している飛竜は、竜騎士団の乗馬代わりとなり、実際に戦場でも活躍するという。
また、同じく牧場で飼育しているペガサスは、天馬騎士団の馬として、やはり実際に戦場に出て、戦うという。
そんなエスペラント王から、ある日、手紙が届いた。
実はエスペラント王国には行ったことがあるし、エスペラント王にも会ったことがある。
手紙の内容は、こうだ。
『親愛なるザード君へ
突然だが、私の願いを聞いてほしい。
君はリザードマンと人間の両方の特性を持っているという。その特性は、わがエスペラント王国軍の戦力として、是非欲しいところだ。
できれば、ザード君。君は城下町に来て、城下町に住んでみる気はあるかね?
そして、願わくは、わがエスペラント王国軍に入隊してほしいのだが、いかがかな?』
このような内容の手紙だ。
少し考えさせてくれ、と言って、その場をやり過ごした。
しばらく考えた後に、やっぱり農村でのスローライフが板についているから、いいやと、返事を書いて送ってやった。
が、その後も国王からの手紙は何度も送られてきた。どうしたものかと、考えはじめている。
『親愛なるザード君へ』
いつも、この一文から始まる。
『ぜひ、城下町に移り住んでくれ、破格の条件をつけてもいい。
私がこのような手紙を書いたのは、もうこれで何度目かな?何度目かも忘れるほど書いているような気がする。
無理強いしているようで悪いが、君の力を、わが王国軍も必要としている。』
別に無理強いとか、そういうことではないが、だけど今は、農村でのスローライフがいいと思っている。
農業のスキルも、身につけてみたいと思っているし、この農村の人々(?)には、大変お世話になっている。とてもよくしてくれる。