転校生
今日もがんばります!
「千葉から引っ越してきた二階堂凪です。
よろしくお願いします。」
転校生の挨拶に教室がざわめく中、
前の席のあかりのポニーテールがゆれ
少し興奮気味に振り返ってささやいた。
「やばい。かっこかわいい!背も高いし!」
エマは転校生の顔をあらためてを見た。
転校生と目が合いエマはいそいで笑顔をつくる。
二階堂凪は少し垂れた目元が優しげでどこか懐かしさも感じた。
「うん…そうだね。優しそうな感じする。」
妹の葬儀から1週間がたち、ようやく学校に通学できるようになったのは3日前だった。
母親はあれからかなり不安定な状態が続いている。
調子が良い時はエマを真央だと思いご機嫌に接してくるのだが、
悪い時はすべての事を完全に無視して寝込んでいる。
エマはあの悪夢を繰り返し見るようになっていた。
白い家の窓から見える幸せそうな家族と、自分を睨みつける妹の顔。
今では夢を見るのが怖くてしっかり眠ることができなくなっていた。
「…エマ?きいてる?」
ぼーっとしているエマをあかりがポニーテールを揺らして覗き込む
「ああ、ごめん何?」
「まだ夜よく眠れてないの?」
「うん…ちょっとしか…。
HR終わったら保健室行って寝かせてもらうわ。」
「そうしなよ、先生には伝えとくからさ、無理しないで。ひとりで行ける?一緒に行こうか?あ、」
チャイムがなった。
「大丈夫、眠いだけだし。1人で行けるよ。」
そう言ってエマが席を立つと
「どうしたエマ?」
気づくと湊が横に立っていた
「あ、ちょっと保健室にいこうかなって。昨日もあまり良く眠れなくて。」
「マジか、しんどいね。俺一緒に行くよ。」
そう言って湊はエマの手をにぎった。
「はぁうらやましい。ラブラブかよ。王子様、姫をよろしくねー。」
あかりはヒラヒラと手を振った。
「エマ夜眠れないの?」
湊はエマの手をにぎり少し前を
引っ張るように廊下を歩いていた
「うん。何か怖くって。」
「真央ちゃんのことがあったから?」
「たぶん…そうなのかな。いろいろ考えちゃって。あの日、真央から電話がかかってきたこととかも……」
湊が突然立ち止まったのでエマは湊の背中に顔をぶつけてしまった。
「電話…?なんか言ってたの?」
「え?」
「何かその、こうなった理由とか言ってた?」
「ううん。何か言ってたかもしれないけど…聞きとれなかった…」
「そっか。そりゃ気にしちゃうよな。」
湊は再び歩きはじめた。
「でも、あんまり思い詰めないで。」
ふりかえってエマをみつめる
「うん。そうだね…」
保健室では不思議と不安を感じることなく眠りにつくことができた。
毎日コツコツ。