音楽で耳を塞ぐ
人生一度きりだとか
今しかない青春だとか
そんな歌が
こわくて苦手だった
人生はどんどん消費されていくけれど
私の足は そんなに早く動かせなくて
必死に歩みを進めながらも
一度道を間違えたら
二度と引き返すことは出来ないから
夢を追うのが 怖くて逃げたんだ。
前向きな歌詞が
そんな自分の後ろめたさを明るみにするようで
心についた無数の傷が 熱を持って
ジクジクと 私の胸を熱くした。
残酷なメロディがリフレインするたび
誰かに問いかけ続けてた。
キラキラした夢を抱えて
理想の自分を生きていなくちゃ
価値がないの?
失敗を恐れるなって そんなの無理だ
だって人生は 1度っきり。
やりたい事だけでは生きていけない
現実を見てるんだって
そう自分に言い聞かせて
どれだけ時間が経ったかな。
諦めて、逃げ出して、傷つきながら選んだこの道も
そんなに悪くもないなって 今は思うよ
あの頃見えてなかった今日までに
色んな拾い物があったよ
こわくて聴けなかったあの日の歌詞も
旧友となって 大人の私を包むんだ。
でもね、
あの日の君が
沢山涙を零しながら、付けてきた傷跡は
今もここに残ってる。
ダラダラとこぼしてきた
熱い血潮を塞ぐ カサブタみたいに
流れる何かが 溢れないよう
今日も音楽で耳を塞いだ。
いつかまた、このカサブタを剥がして
音楽で心を痛める日々が来てもいいのかもしれない。
こうして文字を書いていると
忘れたはずの あの日の傷が疼いてくる。
あの時つけた傷跡が 今の私にそう思わせる。
いくら大人になったって
青春はいつも、この手の中に。
あの日の君が
残してくれた 可能性だよ。