2枚目 少女
消えゆく監視カメラに映りこんだのは1人の少女だった
池の近くのの店の影に隠れ様子を伺っていた
「おい!お前大声出せ…か?」
俺「ひゃ…はい!」
唐突な質問に俺は声が裏返ってしまう
風海「よし…合図をし…そこから湖エリアの方…向けて『放送は無視して広場にある非常電源を稼働して、非常…通信を起動しろ!』って伝えてくれ」
俺「でも奴らが…」
風海「私を信じろ!」
そんな投げやりな言葉が
今の俺には頼もしく感じてしまった
俺「は…はい!」
風海「よし…!」
灯「クソ…」
灯は裁判で冤罪が証明され
遊園地へ遊びに来ていた
灯「池に落ちるわテロが起こるわ散々だな」
「まあ…そのおかげで助かったんだけどな」
「しかし…どうするか…犯人共一体何人いるんだ…これじゃまともに動けな…」
ジジッ
灯「なんだ…?」
〜ピンポンパンポーン♪〜
〜現在…大規模な火災が発生しております…生存している方は南門までお集まりください…繰り返します…現在……〜
灯「なんだ…?行った方がいいのか…?……ん?」
バタバタ
「あいつらまだ生きていやがったのか?」
「とりあえず南門行くぞ!おい!全員来い!」
灯「これは…」
お〜〜い……!
灯「ん?」
放送は無視し…広場にある非常電源を…働して…常用通信を起動し…くれ!!聞こえてるか!放送は……
灯「なるほどね」
風海の作戦はこうだった
園内放送でテログループのメンバーを広場と湖から遠ざけ、その後、非常電源をつけろと観覧車の中から叫び、灯に気づかせる
「誰だか知らないけど」
「一か八かやってみるか!」
灯は走り出した
ダッダッダッ!
ダッダッ!
灯「ここだな?」
「非常電源を入れて」
「非常用通信をONと」
ピコン♪
ガガガッ!
灯「これでいいのか?」
〜ピンポンパンポーン♪〜
〜非常用通信が起動しました…
ピコン♪
火災を感知…
スプリンクラーを展開…稼働します〜
ガコン
ガガガガ
シャァァー
ザァァァァ
灯「火が…消えていく」
「しばらくかかるだろうがこれで消えるだろう」
「少し火傷しちゃったな」
俺「やった!!」
風海「彼女もよくやってくれたみたいだ」
しかし、まだ終わってはいない。
俺「でもどうするんです?奴らはまだ…」
風海「それなら……」
ピーポーピーポー
ウゥゥゥゥ
包囲されている!
直ちに投降しなさい!
風海「警察が何とかしてくれるはずだ」
俺「良かったぁ…」
俺はそっと胸を撫で下ろす
風海「ああ…お前がいなかったらどうなっていたことか」
俺「いえいえ」
こっちのセリフですよと言おうとした時
灯「君か、あの時声を出していたのは。私は灯だ、よろしくな」
あの時の少女だった
俺「ええ…」
彼女に会うのは初めてのはずなのに
何故か懐かしさを覚える
何故だろうか
警察「家族の方は先に病院へ向かっていると」
警察「貴女方は後で事情聴取を行いますのでここで待機していてください」
俺「はい」
そんな時
一人の少女がこちらを見ていた
俺「?」
パーカのフードを被り
ワンピースのようなスカートが揺れていた
風海「どうした?」
俺「いや…あの子こっちを見ていない?」
風海「本当だな」
灯「手でも振ってみるか?」
そんな風にはおどけてみせる灯と違って
俺には何故か既視感のような、胸の奥のモヤが消えていくような感覚に陥っていた。
フワッ
不意に風が吹く
少女のパーカーのフードを揺らし、フードがめくれ上がる
風海「……は?………」
そこには
俺「なんで…?」
灯「どういう事だ…?」
風海が立っていた
ワンピースの上にパーカーを着た姿で
俺「ああ……」
風海が
風海「私………?」
立っていた
胸のモヤが晴れ
聞き覚えのない、しかし懐かしい声が
頭に響く
「せめて…私が貴方に真実を伝えるまでは逃げ切ってくれよ…?田折 哲也………」
「全ての行動に……リスクがないと思わないでくださいね……?」
「………私の名前は 風海 幸」
俺の意識はここで途切れた
お読みくださりありがとうございました
次回もよろしくお願いいたします