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冬野つぐみのオモイカタ ―女子大生二人。トコロニヨリ、ヒトリ。行方不明―  作者: とは


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再び反論を

 ヒイラギは品子の前に立つと話を始める。


「まず、さっき話したシヤのリードで突入する。これを変えるつもりは無い」

「それは確証がないから無理って、言ってあったはずだよ」


 ヒイラギの言葉に品子は呆れた様子を見せる。


「確証がないなら、作りゃいいんだろ?」

「兄さん。言ってることがおかしいです」


 シヤも品子と同様の顔つきをしてヒイラギに目を向けてくる。


「何だよ、シヤまでそっちの味方かよ。まぁ聞いてくれ。俺達の力は、思いで発動が可能になる。そうだよな?」

「その通りだ。それで?」

「思いが強ければ発動の威力が上がる。ならばリードと俺自身にその思い、いや『(おも)い』を乗せて発動させればいい。こんな障壁なんか砕いてやるって」

「念いを乗せて、……発動する」


 呟くようにシヤが、ヒイラギの言葉を繰り返す。

 

「ようやく俺の考えを理解したようだな。遅っせーぞ、妹よ。……さて品子、さっき言ったよな。『その程度の気持ちでは駄目なんだ』と。それはつまり、俺達の本気の念いを見せろっていう話なんじゃないの?」


 答えを確認するべく、ヒイラギは品子を見つめる。


「なら言ってやる。上手くいくか、いかないかなんて関係ないんだよ。上手くいかせるんだよ。これが俺の念いであり反論だ!」


 ヒイラギは一気にまくし立て、品子へと問う。


「さぁ、品子。どうなんだ?」


 ヒイラギの言葉に品子はヒイラギとシヤを見つめる。


「……悪くはなかった。よくそこまでたどり着いたと言ってもいい位だね。うん70点だ」

「じゃあ!」


 弾んだ声を出したヒイラギに品子の冷たい言葉がかぶさる。


「だけどその意見は、却下させてもらおう」

「……何で? 何がいけないんだ?」

「品子姉さん、兄さんの理論はそんなに間違っていると思えません。私もこの案に賛成します」

「少し疲れた。惟之、悪いけど私は仮眠を取らせてもらうよ。二人ともその間に帰りなさい」


 品子はソファーの方へと歩いていく。

 数歩分、ヒイラギは見送ったが、抑えられない感情のまま品子の前に立ちふさがると腕を掴み叫んだ。


「結局、品子は怖いんだろ! 助けられずこうやってじっとしているのが! 上が待機って言ってるからって、それに乗っかってるだけなのか? 俺はな! 俺はたとえ一人でも行く! お前なんていなくても、絶対にあいつを助けてみせるからな!」


 シヤもヒイラギの隣に来ると、ヒイラギを見つめ話し始める。


「兄さん、一人ではないです。二人に訂正して下さい。私も行きますから。つぐみさんが待ってますし」


 シヤはそのまま視線を、品子に向けていく。


「品子姉さん、私達は本気です。助けてくれとは言いません。だから邪魔しないで下さい」


 あのシヤが、ここまで自分の主張をするとは。

 今までに一度もみたことがなかった妹の姿にヒイラギは驚く。

 品子もシヤの態度に戸惑いの様子を見せている。

 しばらく考え込んだ表情をしていた品子が、そのまま下を向くと肩を震えさせていく。


「し、品子? 具合でも悪いの?」

「く、くく。そうだねぇ。いいよぉ、その本気は」


 どうしたことか品子は笑っている。

 あまりに場違いな行動に、ヒイラギは品子を見つめることしか出来ない。


「ねぇ、惟之ちゃーん」


 おもむろに品子が、惟之の方を向く。


「私さぁ、一つ提案があるんだけど。ちょっと相談に乗ってくんなーい?」

「……偶然だな。実は俺も、一つ相談したいことがあるんだ」


 品子は自身の腕を掴んでいるヒイラギの手をそっと外す。


「ちょっと外で大人の相談してくるから。そこで待ってて。すぐ戻るよ」


 それだけ言うと、惟之と一緒に部屋を出て行く。

 ドアを閉じる前に、ひょこりと品子は顔を出した。


「お前達の力を借りるよ。少しの間だけど、休んでおきなさい」


 扉の閉まる音と共に静けさが訪れる。


「大丈夫だったって思っていいのかな?」


 ヒイラギはシヤにそう呟き、一緒にソファに座る。

 隣のシヤは、何も言わない。

 何となくヒイラギはシヤの手を握ってやる。

 握り返してくるシヤの手に力を込め、二人は大人達の帰りを待つのだった。

お読みいただきありがとうございます。


次話タイトル「大人の相談」

そろそろ大人組も本気出していきます。

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