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くらいへやで3 (カテノナ:A)

 くらい、くらいへや。


「もう少し、すすんだらまた来ますね」


 そう言って男は部屋から出ていった。

 無慈悲に扉が閉まる。

 まだかろうじて動く首で、部屋にたった一人残された女は周りを見渡す。

 身じろぎをしようにも、きつく巻かれた布によってそれも叶わない。


 ただ暗いだけの、水が滴る音だけが聞こえる部屋。

 自分だけしかいない部屋で女は天井を見上げる。


 最初に椅子に座らされた時、自分はもっと周りを見ることが出来ていた。

 それなのに今は、随分と低くなった視界。

 下を見ようとしたが、慌てて頭を振りその行動を否定する。


「もう少し、すすんだら」


 少し前に言われた男の言葉を、女は呟く。


「すすむという言葉が、こんなに嫌な意味になるなんて……」


 前向きな言葉のはずなのに、今の自分には命の終わりに向かって「すすむ」ということでしかない。


「私は、……死んじゃうの?」


 そう言葉をこぼす女の両眼からは涙が。

 そして未来を憂う思いがこぼれ、溢れていく。


「嫌だ、死にたくない!」


 叫びながらもここから出られないのを認識せざるを得ない。


 なぜならもう、体は動かない。


 なぜならもう、体が動かせない。


 ――だってもう、自分には体が、ない。

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