64/98
人出品子は思う
身が潔白であることを表す『白日』を名乗っている自分達は、その名にふさわしいと言えるのだろうか。
ヒイラギの手を握り、歩きながら品子は言葉の意味を考えていく。
確かに白日には、痛みを防ぐことが出来る『祓い』の存在がある。
それにより理性が保たれて、秩序を重んじることが出来ているというのは間違いではないだろう。
だが、この儀式も果たしていつまで続けられるものなのか。
上の連中もうすうす気付いているだろう。
終わりは近い、と品子はにらんでいる。
儀式に必要なマキエがいなくなり十年が経つが、後継者の誕生はいまだ無い。
直系であるヒイラギとシヤの可能性を潰したのは確実に彼らでもあるわけだから、そう言った意味で上の人間達は自業自得といえる。
もし、今後『祓い』を行えなくなったら。
もう組織は、この名を語る存在ではあり続けられないだろう。
ヒイラギにも聞こえない、わずかに吹いた風にすらかき消される声で品子は呟く。
「きっとその時には、私は……」




