表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬野つぐみのオモイカタ ―女子大生二人。トコロニヨリ、ヒトリ。行方不明―  作者: とは


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

36/98

力の根源

「極端に言ってしまえば、私達の力の根源は『思い』と『言葉』なんだ。私達はそれぞれが『ある存在』を媒体にして、それらを一緒にして発動する感じなんだけど……」


 ゆっくりと人差し指で宙に円を描きながら、品子が話すのをつぐみは黙って聞いていた。


「私達の力はね、思いの強さで変わってくるんだ。例えばある人の力は、一時的に人の記憶を操ったり消したりできる。その力を思いっきり使うと……」


 手のひらを大きく広げ、つぐみの前に出してきた。


「相手の記憶を、全て消すことも出来ちゃう。さらに言えばその人の生きる気力とかも消すことも出来ちゃう。ばーんってね」

「そんな力まで存在するのですか。何もない自分には、すごい力だとしか」


 驚くつぐみをちらりと見て品子は続けていく。


「でも、使いすぎは自分にも危険となる。反動まではいかなくても、強く使えば自分にも負担がかかる。自分の能力に見合わない力を使おうとすると、自分も壊れちゃう」

「壊れる、つまりは死んでしまうのですか」

「そこまではいかない。でもそれに等しい状態といえるね」


 それだけ危険なものを持ち続けるとは、どれだけ大変なことか。

 自分には到底、抱えきれないだろうとつぐみは思う。

 

「また別のある人は事故で力と身体能力を失ったんだけど、思いの力でその一部を取り戻している。すごいよね。そこまでいくと執念に近いんだろうけど」


 指を閉じたり開いたりしながら語る品子の顔は、少し悲しそうだ。

 その人を、思い出しているのだろうか。

 つぐみは品子の表情でそう推測する。


「ざっくり言っちゃえば、私達の力は『思い』、いやそれよりも強い『(おも)い』で発動可能になるといった方が近いかもね。……さてと、話がそれてしまっていたね。本題に戻そう。どうやってその店を探そうか」


 重かった雰囲気を変えるように、品子はくるりと表情を変える。


「確かに、強い思いを持って店を探すってどうやればいいんでしょうね?」


 つぐみの問いかけに、品子は拳をぐっと握るとつぐみを見つめた。


「店! 見つけてやるぞ! この野郎! な心意気で探せば見つかるかなぁ?」

「な、何となくですが、多分それでは無理だと思います」

「品子、これってやっぱり惟之(これゆき)さんに一度みてもらった方がいいんじゃないの?」


 少し前にリビングに戻ってきたヒイラギが品子へと聞く。

 

「これゆきさん? みてもらう?」


 ヒイラギの意見とつぐみの言葉に、品子はあからさまに表情を変える。


「えー。あいつに頼むのやだー、言い出しっぺのヒイラギが依頼を出してよ」

「何が言い出しっぺだよ。お前、絶対わかってたけど、口に出さなかっただけだろ」

「あの、惟之さんって一体?」

「あぁ、惟之っていうのはさっき言ってた解析組のリーダー。すっげぇ意地悪で、私にいつもひどい扱いしてくる、極悪非道(ごくあくひどう)の垂れ目人間なんだ」

「知らない相手なのをいいことに、嘘を言ってんじゃねーよ。あんた騙されんなよ」


 わいわいと言ってくる二人につぐみは戸惑う。

 そんな時、廊下からつぐみへと声が掛けられる。


「つぐみさん。お風呂どうぞ」


 その言葉と共に、シヤがリビングに入って来た。


「あー! 湯上りのシヤは、やっぱりかわいいねぇ!」


 品子はシヤの傍に駆け寄ると、すごい勢いで頬ずりを始める。

 かなりの速さの、頬ずりだ。

 それなのにシヤは、それを無表情に受け入れている。


「洗面台に、品子姉さんのお泊りセットを一つ置いておきました。それを使ってもらえばいいんですよね?」

「うん、そう。冬野君、遠慮なく使ってね!」

「あ、ありがとうございます」


 高速頬ずりを続けている品子を後にして、洗面台に向かいながらつぐみは思う。


 ――帰ってくる頃には、シヤの首は取れているのではないだろうかと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ