表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
もしも理想のパーティー構成に実力以外が考慮されなかったら?  作者: 雪月 桜
第1章:【アイン・シュタイナー】の罪
77/81

謎の体調不良

「お、お姉ちゃん!?」


「どうしたんだよ、アイン!?」


「顔が真っ青ですます!」


「……ごめん、ちょっと気分が悪くなってな……。しばらく、一人にして貰ってええ?」


アインは何とか気丈に振る舞おうとしているものの、その口から漏れる声は、ひどく弱々しい。


大して暑くもないのに、額には汗をかいているし、明らかに不調が見て取れる。


「そんなこと言ってる場合か!? 早くプリムを呼んできたほうが……って、ここからじゃ遠いな。くそっ、ミルク、他に治癒師の当ては!?」


「ありますです! すぐに戻ってくるので待ってて欲しいですます!」


そう言い残して、ミルクは足早に部屋を飛び出した。


取り敢えず、これで医者の確保は何とかなるか……。


念のため、後でプリムにも診察してもらうとして、今は俺が出来る事をしないとな。


……。


…………。


………………。


あれから、俺はアインの看病をしたり、不安そうなフィーアを宥めたりと大忙しだった。


また、ミルクが連れて来てくれた医者によって、アインの不調は肉体ではなく精神に起因するものだと診断された。


そして、現在、アインを除いたメンバー全員が食堂に集まり、駆けつけてくれたプリムの話に耳を傾けている。


「――という訳で、(わたくし)が診察しても結果は同じだったわ。あの子の体から不調の原因は発見できなかった。この(わたくし)が調べても分からないなら、考えられるケースは二つ。そもそも病が存在しないか、あるいは人間にどうにかできる病では無いという事よ。前者なら別の角度から不調を検証すべきだし、後者なら手の施しようが無いわ。せいぜい神頼みでもすることね」


無駄だと思うけど、と口にしなかったのは、プリムなりの気遣いだろうか。


まぁ、声に出さなくとも顔に出ているので、あまり意味はないけどな。


「ということは、やっぱり精神的な何かが影響してるって事なのか。あの先生も、そう言ってたしな」


ちなみに、ミルクが呼んでくれた先生は、人が良さそうな、お婆さんだった。


心理カウンセラーとしてのスキルも取得しているそうで、この街で彼女を知らない人は、ほぼ居ないらしい。


今はアインのカウンセリングに取り組んで貰っている最中だ。


「それだけなら良いのだけどね……」


「何か心当たりでも?」


「ほら、昨日のこと覚えてる? あの子がお腹を壊して(わたくし)が診てあげたこと」


「あぁ、それが?」


「その時、妙に回復魔法の効果が薄かったのよね。ただの腹痛なら一瞬で治せるのだけど、この(わたくし)が時間をかけても完治させることが出来なかった。でも、他に心当たりも無いって言うし、特殊な食材も使ってたって言うから、そんな事もあるのかもって思ったのだけれど……。どうやら、あの子、何か隠し事をしてるようね」


プリムの確信めいた発言に、俺はアインの言葉を思い出す。


『ウチには秘密があるんよ。墓まで持っていくつもりの秘密が。そして、それはフィーアにも関わりがあること。だから、この子の事は出来るだけ知られたく無かった。どこから秘密が漏れるか分からんからね』


俺は、無意識にフィーアに視線を向けた。


彼女は何かを恐れるように肩を震わせ、俯いている。


アインの秘密。


それに関わるフィーア。


謎の体調不良。


どうやら新たな出会いは、新たな事件の始まりでもあったようだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ