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職業選択とスキル構成

「それで、俺の職業なんだけど……」


あの後、俺はアインに火の基礎魔法、‘‘ファイラ’’と風の基礎魔法‘‘ウィンドレ’’を使ってもらい、服を乾かしてから話を戻した。


「あー、それなのですが、どうやらハルさんのステータスを見る限り、魔法剣士は無理そうですます。というか、よくよく考えたらハルさんは、まだレベル1。冒険者以外の職業に転職できるのはレベル30からなので、どちらにしろ転職はできませんです」


「そうだったのか? うーん、どうしたもんか」


「しゃあないなぁ。取り敢えず、さっき狩ったミニマムウルフの(ケルン)をあげるわ。それで経験値もらって、ある程度までレベル上げてしまい。ホンマは自分でモンスターを倒さずに、レベルだけ上げるのは良くないんやけど、最低限の安全マージンは確保せんとね」


「あー、レベルだけ上げるとプレイヤースキルが上達しないもんな。で、調子に乗って格上に挑んでボコボコにされる。課金ゲームのあるあるだ。」


「うん、一部なに言うてるか分からんけど、そういうことや。まぁ、リスクを把握できてるなら、多少は問題ないやろ。ええやんな、ミルクはん?」


「はい、良いと思いますです。でも、ミニマムウルフは低レベルですが、あの数を売れば、それなりの額になります。それは良いんですか?」


「ま、これから長い付き合いになるかもやし、先行投資ってことで。お兄さんが気にするなら、出世払いでもエエよ?」


「じゃ、それで。支払いが何時になるかは分からないけど」


「期待せずに待っとくわ」


という訳で、アインからミニマムウルフの(ケルン)を約50体分も受け取った俺は、それを砕いて経験値を獲得し、レベルを一気に10まで上げた。


レベルアップの瞬間、ゲームのようにファンファーレが鳴り響く、なんて事はなかったものの、全身が妙な充足感に包まれたのは何とも言えない貴重な体験だ。


思わず「おおぅ……」と、変な声を出してしまい、二人から微笑ましい目で見られてしまったのは、ご愛敬である。


「さて、じゃあ次はスキルを獲得しますです。ハルさんは、どんな戦闘スタイルが良いですます?」


「うーん、パーティーのバランスを考えたら魔法剣士だけど、それは無理って話だったよな? それって、仮に俺のレベルが30まで上がっても無理なのかな?」


「はい、ハルさんのステータスは敏捷がやや高くて、後は平均やや下といった感じですます。レベルが上がれば、当然ステータスも上昇しますが、全体のステータスバランスは一生変わりません。なので、高い筋力と知力が必要な魔法剣士を目指すのは向いてないと思いますです」


「なるほどなぁ。ところで、ステータスって具体的に、どういうものなんだ?」


「ステータスとは、簡単に言えば、体に取り込んだ幻素を色々な身体能力に変える力ですます。運動すれば体が鍛えられる、それと同じで、経験値を得れば、(ケルン)が鍛えられますです。そして、(ケルン)を鍛えれば、体に取り込んだ幻素を、より効率良く身体能力に変換できる、という仕組みです」


「さっき言ってた知力ってのは? 身体能力じゃなくない?」


「知力は、体内の魔力を魔法に変換する力を指しますです。だから、知力のステータスが高ければ、頭が良くなるという訳ではないのですます」


「ほーん、そういうことか」


「ちなみに、ウチら錬金術師は高い技巧のステータスが必要なんやけど、これも手先が器用になる訳やなくて、幻素や魔力を、より繊細に扱うために必要な力なんよ」


「へぇー、なるほどな。たまにゲームでも明らかに馬鹿な奴の知力が高かったりするけど、そう考えると辻褄も合うのか。敵がリポップした瞬間に範囲攻撃して余計なモンスターをトレインしてきた時とかムカついたなぁ……」


「また、よう分からん用語が出てきてるけど。まぁ、ええわ。それで、ステータスを踏まえた上で、お兄さんは何のスキルを選ぶん?」


「そもそも取得するスキルって、どうやって選ぶんだ?」


「ギルドカードのスキル一覧の枠を触れば、項目が出てきますです」


言われた通り、ギルドカードの一部をタッチすると、実体のあるホログラムのような画面が浮かんできた。


「なんかSF感があって、ファンタジーの空気が薄れるんだけど……」


「はいはい、訳わからんこと言うてんと、さっさとスキルを選ぶっ」


「へいへい」


一つ目の項目をざっと見た感じ、各職業の基礎と思われるスキルや、基礎魔法に関するスキルが表示された。


他の項目はグレーアウトしているため、恐らく転職しないと解禁されない仕組みだろう。


俺は大人しく最初の項目の中から欲しいスキルを身繕い、二人にもアドバイスを貰って、獲得するスキルを決定した。


結果、俺が身につけたスキルは以下の通り。


「まずは【基礎刀剣スキル】。刀や剣の扱いが上手くなるスキルだな。名前の通り本当に基礎能力だけで、特別な技を覚えたりはしない。ところで刀って、この辺りで売ってるもんなのか?」


「うーん、あまり見かけませんです。海のむこうにある東方の国には名工がたくさんいるらしいですが、この辺りだと美術品や模造刀、質の悪い贋作くらいしか流通してないですます」


「ミルクって、鍛冶はできないのか? ドワーフって皆、鍛冶が上手いイメージなんだけど」


「ミルクは鍛冶みたいな繊細な仕事は向いてないですます。単純にハンマーを振り回してモンスターを討伐する方が性に合ってると思いますです」


「そっか。ちなみに、アインはどうなんだ? アイテムの作成に武器は含まれてないのか?」


「作れんことはないと思うけど、贋作に毛が生えた様なもんが限界やと思うよ? 錬金術師は、ありとあらゆる素材の効果を組み合わせて、アイテムを作るのが基本やから、何でも作れる代わりに器用貧乏になりがちや。薬も作れる、武器も作れる、ぬいぐるみだって作れる。ただし、特定の素材の扱いだけを極めた専門家とは勝負にならんね」


「まぁ、そりゃそうか。なんでもかんでも超一流の品が作れるなら、他の職業を選ぶ意味がないもんな。じゃ、次に‘‘基礎魔法スキル’’。火、水、風、土、それから光と闇の合計6つを取得したけど、これで獲得したスキルポイントは使いきったな」


レベル1の時点で所持していた1ポイントに加えて、レベルが上がる毎に1ポイント獲得した合計10ポイント。


使用したポイントの内訳は、‘‘基礎刀剣スキル’’と、闇と光の‘‘基礎魔法スキル’’が2ポイントで、残りが1ポイントずつ。


ちなみに、レベル11~20ではレベルアップで2ポイント獲得、レベル21~30では3ポイント獲得できるらしい。


「まさか、ハルさんが光と闇の属性を扱えるなんて。基礎魔法とはいえ、驚きなのです!」


「せやなぁ、ほとんどの人が取得できる基礎四大属性と違うて、特殊二大属性は使える人が限られるんよ?」


「そうなのか? 項目の中に普通に表示されてたから、みんな表示されてるもんだと思ってた」


「まぁ、珍しいとは言うても、皆無ってほどじゃないし、お兄さんは知力があんま高くないから、取得できても、せいぜい初級魔法までが限界やろけどなぁ。勿体ない話やね」


「それでも、光魔法の‘‘浄化’’と、闇魔法の‘‘吸収’’の特性が使えるのは便利ですます! これなら、魔法剣士になれなくても、戦闘の幅はぐっと広がりますです!」


「なら良かった! いやぁ、俺だけ足手まといになるのは格好悪いしな。といっても、しばらくは面倒かけるだろうけど」


「気にしないで良いですます。それに、ミルクは魔法が使えないですから、基礎魔法を使ってもらえるだけでも助かりますです」


「それって、ドワーフの種族的な特性なのか?」


「はい、ドワーフで魔法が得意って人は、あまり聞かないですます」


「その代わり、素材の目利きや扱いが得意やから、商人、職人、錬金術師なんかが多いな。ウチもドワーフに生まれとったら、この天才的な才能が更に神がかってたやろうになぁ」


たしかに、今でも(隠しているとはいえ)天才のアインが、種族的な後押しを受けたら更に凄まじいアイテムを作りそうだ。


その分、ゲテモノ度合いや周囲への被害も拡大しそうな気がするけど。


「とはいえ、結局は無い物ねだりになりそうだけどな。ちなみに人間の種族的な特徴って、何かあるのか?」


俺の何気ない質問に、ミルクが急にポッと顔を赤く染め、アインはそんなミルクをニヤニヤと見つめ始める。


ついでに、足元でプルプル震えていた、もちこが、何故か大人しくなった。


なんとなく、「え、それ聞いちゃうの?」と言われている気分。


なんだ、この空気は?


「え、えっと……その、人間は他の、どの種族とも、赤ちゃんができます……です」


「あー、うん、分かった。もういいぞ、ミル——」


「なぁなぁ、ミルクはん♪ ウチ、子供の作り方って知らんのやけど、教えてくれへん?」


「ちょ、おまっ!?」


人がせっかく空気を読んで話を終わらせようとしたのに、こいつ掘り下げやがった!?


「せ、セクハラですます!」


「え~、なんでセクハラになるん? その大きな胸の内をお姉さんに教えて教えて♪」


「おいおい、アイン。同性でもセクハラはセクハラだぞ? それに、お前みたいな腹黒が知らない訳ないだろ?」


「ハルさんもセクハラに関して人のこと言えない気がしますですが、今はナイスですます! アインさんなら知ってるはずです!」


「まっ、知ってるんやけどね。あとは、どっちの種族が生まれるかは母体の種族で決まるとか」


「確信犯じゃねぇか!」


「まぁまぁ、照れてるミルクちゃん、可愛かったやろ?」


「それは認める」


「もう、ハルさん!」


「ちょ、ミルクやめて! 肩揺らさないで! 頭がガックンガックンして……うっぷ」


その後、俺は久しぶりの頭ガックンで、吐き気に苛まれつつ、ミルクを宥める羽目になる。


そして元凶のアインはと言えば、こちらの騒ぎはそっちのけで、もちこと楽しそうに戯れていた。


そんなこんなで時は過ぎ、ミルク行きつけの武器屋が営業時間を終えてしまったため、俺の武器選びは翌日に延期されたのだった。


……後になって思う。


もしも、この日、何のトラブルもなく武器屋に向かっていたら、俺達は、そして世界はどう変わっていただろうか、と。

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