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アインの真実?

「目は()かれるわ、変な臭い嗅がされるわ、爆発の余波で吹っ飛ばされるわ、散々な目に遭った……」


街に戻った俺達は住人達の熱い歓迎(苦情の嵐)を掻い潜り、何とかギルドの酒場までたどり着いていた。


ちなみに、ミルクは持ち前の人脈と人望を活かして火消し役に回ってくれている。


本当にミルクには世話になりっぱなしなので、戻ってきたら好きなものでも奢ろうと心に決めつつ、今はアイン相手に愚痴を吐いているところだ。


「変な臭いとは失礼やなぁ。元はうら若き乙女の甘酸っぱい青春(汗)の匂いやのに」


「やめろ! あんな化学兵器が元は女の子の匂いとかマジでやめろ! 男の幻想を壊すな!」


「女の子に対する幻想は早めに捨てた方がええよ~。まぁ、さすがに今回のは色々と手を加えすぎて原型が残ってないから、心配せんでええよ♪」


「女の子の体臭を兵器に変えるとか悪魔か、お前は……。まぁ、その話はもういい、忘れよう。それよりも、パーティー加入の件だ」


「あー、この感触やと、お断りの雰囲気?」


「……いや、ミルクの意見も聞いてみるけど、俺としては加入して欲しいと思ってる」


「へぇ、意外やな。てっきり、ウチみたいな問題児は追い返されると思うたけど。そんなに余裕がないん?」


「それもあるけど、単純に興味もあるんだ。アインって、実は天才なんじゃないか?」


「……お褒めに預かり光栄やね」


「無理に誤魔化そうとして、変に丁寧な言い回しになってるぞ」


「……仮にウチが天才やとして、そう考えた根拠は?」


「わざわざ聞くほどのことか? 誰でも思い付くと思うんだけど。それとも、そう発想させないためにガラクタを作って変人を装ってるとか?」


「質問に質問で返すのは感心せぇへんね」


「あー、悪かった。単純な話だよ。さっき、使った道具。一見、変なものが多かったけど、全て計算されて有効に働いてたろ? あの閃光弾なんかは出力にも気を使ってたみたいだし」


「お兄さんは目を灼かれてたけど?」


「でも、後遺症はない……だろ? それに住民の苦情でも、‘‘眩しかった’’以上の被害を訴えた人は居なかったみたいだ。ぬいぐるみ爆弾も必要最低限の威力で、地形には対して影響を与えてなかったし、香水は僅かに異臭が残っただけ。アインの道具は敢えて奇をてらってるだけで、本当は優秀。なんなら、もっと効果の高い物だって——」


「はい、ストップ。よう分かったわ、ありがとう、お兄さん。だから……それ以上は言わんといて」


俺の言葉を遮ったアインは目を反らし、どことなく怯えているようで、俺は勝手に興奮していた自分を恥じた。


「ごめん、なんか踏み込み過ぎたみたいで……。周りには隠してるんだよな。誰にも言わないから……」


「ううん、聞いたのはウチやし、隠しきれんかったのもウチの不手際や。気を遣ってくれてありがとうな?」


やめて欲しかった。


本当に気を遣えるやつは、こんな無神経に踏み込んだりしない。


「すまん。パーティー加入の件は考え直してくれても……」


「大丈夫。ウチはそこまで繊細な女と違うよ? ほら、仲直りの印。これで、この話は、おしまいや!」


アインから手渡されたのは一杯のグラス。


この店で使われているもので、中には見覚えのある鮮やかな緑色の液体が注がれていた。


「あぁ、精霊水を使ってるっていう飲み物か。サンキュー」


これで、文字通り水に流そうってことだな。


そういうことなら、飲まない訳にはいかない。


以前、飲んだ経験から俺の体は精霊水では酔いにくいと知ってるので、グラスの中身を一気に煽る。


しかし、その前に気が付くべきだった。


俺が注意すべきは、酔いの心配ではなく、アインその人だと。


「ぶはっ!?」


鼻を駆け巡る濃密な、木々? 薬草? 野菜? 


とにかく、そんな感じの匂いと苦味!


加えて、無駄に爽やかな炭酸が喉を刺激して、絶妙な不快感を演出する!


「アハハハハっ! お兄さんに一つ訂正。ウチには確かに隠し事があるけど、ガラクタ作りは、それとは別で、ただの趣味。まぁ正確には、ガラクタを作るつもりはないんやけど、面白ければガラクタでも良いかなって感じ?」


「げほっ、ごほっ。……それと、このドリンクになんの関係がっ?」


「よーするに実験台やね。あぁ、心配せんでも毒ではないよ? むしろ、栄養満点で朝と晩に飲めば、お肌がピチピチに若返る効果もあり! ウチが自分で先に試したから間違いないで!」


「わざわざ、こんな不味いもの作って飲まなくても……」


「そら、自分で試しもせんと人様に使う訳にはいかんからね。それに、これはあくまで実験。別に料理に興味がある訳やないよ? 人体に及ぼす効力とか、副作用とか、色々とデータを取りたいだけ。ホンマ、協力ありがとうな? これからもよろしゅう♪」


「くっそ、お前なんかミルクに拒否られちまえ!」


そんな俺の叫びも虚しく、戻ってきたミルクは、あっさりとアインの加入を認めたのだった。


理由を問えば、俺が認めたなら問題ないとのこと。


いったい、俺のどこを見て、そんな信頼を抱いているのか。


いつか悪い男に騙されないか、ミルクの将来が少しだけ心配になったのだった。


……ところで、この一件でリンネの贈り物に目処が立ったのは不幸中の幸いだろう。


くっくっく、リンネの奴め、覚悟しておれ。


次にパンナコッタを求めて地上に降りてきた時が、お前の最後だ。


あーっはっはっは!


……うぅ、気持ち悪い。

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