9 私は将来、騎士になる
初体験が男とで、しかも自分がヤられるほうだなんて、拷問としか思えない。しかも恋愛云々全く関係ないただの“仕事”相手と。よく貴族の女性はこれを受け入れられるものだと思わず感心してしまう。それとも、精神が男でなければ、貴族の務めと割り切ってしまえるものなのか。そういうものだと教育されているのかもしれない。
まあどちらにせよ私はお断りだ。結婚したら拷問が待っていると分かっているのに、自ら進んで死地に飛び込むほど馬鹿ではない。...白い結婚でいいのなら考えなくもないが、それは貴族の結婚では許されないことなのだろう。貴族の結婚とは両家の血を引いた子を次世代に残すことが目的なのだから。
だからこそ、私は騎士になる。これこそ、結婚を避けるほぼ唯一の手段なのだ。
先ほども話したが、女性騎士が少ないのは結婚・出産の問題があるからだ。特に出産をすると、そのまま騎士をやめることになる。貴族の、それも高位貴族の妻が現役の騎士なんてできるはずもない。彼女らには社交界に出るという任務があるのだ。
だから。だからこそ、だ。もしも私が、騎士として名をあげ、国中で有名になったのならば。私の存在が、他国や犯罪者から脅威として恐れられるようになったならば。そうなったら、いくら貴族とはいえ、私に騎士をやめさせてまで無理に結婚させることはできないだろう。結婚はその戦力を失うことと等しいのだから。
王族や国は、時に個人の感情を無視して動かざるを得ないこともある。約束したところでそれが絶対に破られないという保証はない。私という戦力の存在価値を示す。軍事的にも政治的にも、私は必要な駒である、と認識させることで、ようやく国は重要な駒を失わないよう動いてくれるのだ。私はそれをひどいとは思わない。それが国である、ということなのだから。
結婚を避けるために戦力の存在価値を示すとは言ったが、これはあくまで前世の知識を生かしたうえでの話だ。もし状況が一変してしまっているのであれば、全く役には立たなくなる。だが、私の推測では、あれから百年もたっていないはずだ。多少の変化はあれど、国の方針が全く逆になっていることもないだろう。それならば、まだ勝算がある。
前世の私は、国内最強ともいわれる騎士であり、大勢の騎士を率いる騎士団長であり、光の精霊王との契約者だった。いわば国の最大戦力といっても過言ではなかったのだ。今世の私は、その地位まで上り詰める必要がある。
私は、将来騎士になる。それが最期の願いであり、望まぬ未来を避けるための唯一の手段であるのだから。
...もしもこの夢を反対されたり、無理やり縁談を進められるようであるならば。育ててくれたアンナ嬢らへ恩を仇で返すこととなってしまうことになってしまうが、家を出させてもらおうと思う。もちろん、そうならないよう勝算や自分の価値をアピールし家族を説得した上で、騎士になることを許してもらえるのが一番いいのだから。
さて、ずいぶん長い間考え込んでしまったようだ。もうすっかり夜も更けてしまっている。頭の整理も付いたので、今後は引き続き情報収集と、騎士になるための体力作りをメインに過ごすことにしよう。出来れば、騎士になったという兄と会いたいのだが。
私はそこまで考えた後、目を閉じ、何も知らずにぐっすりと寝ているアンナ嬢の腕の中で、明日に備えて眠りについたのだった。
とりあえずこれで第一章?的なものは終了です。
続き...内容は思いついてるのに書けない...文才が欲しい...もしくは頭の中のネタと登場人物の動きを映像に保存して繰り返し見れる秘密道具が欲しい...