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8 絶対に嫌だ

そもそも騎士に女性が少ないのには、大きく分けて理由が二つある。



一つは、女性の方が男性と比べると非力で体力も少ないからだ。良くも悪くも、騎士は基本的に体力勝負である。王都の見回りや長期間の遠征など、体が弱いといくら剣が強くても話にならないことが多いのだ。それに、力が弱いと、騎士用の剣を持ち上げることすらできない。



身体強化の魔術を使えば筋力は上がるのだが、基本的に魔術を習うのは学び舎に入ってからのこと。そのため女性が剣の修業をはじめられるのは10歳ごろからだが、その時には既に体が出来上がってしまっている。そのため、あまり剣が上達しないのだ。



もう一つは、こちらも女性ならではの理由で、結婚と出産の問題があるからだ。王国では、貴族女性は学園卒業後の17歳~25歳までが、平民女性は17歳~25歳までが結婚適齢期だとされており、30を過ぎて独身だといきおくれなどと言われるのだ。さらに女性には、結婚したらその相手と子供を作る義務がある。そのため、どんなに腕の良い女性騎士であったとしても、25歳くらいで一度騎士団をやめなくてはならないのだ。



出産が終わってからも、子育てやら家事やら―貴族女性だとお茶会とか夜会とか―で忙しくなるため、すぐに騎士団に戻ってこれない。ようやく落ち着いたと思ったら既に40代で、ブランクもあり以前のように剣をふるうことも出来なくなるのだ、と平民出身で結婚を機に騎士団をやめた女性から聞いた。長くても十数年しか働けないというのに、わざわざつらい剣の修業をする女性は少ないのだとか。



平民の女性でもそうなのだから、貴族出身の女性騎士はさらに少ないのだ。剣をふるう暇があるのなら、礼儀作法を学べだの刺繍やダンスを上達させろだの、家族から非難を浴びるらしい。剣の得意な女など好かれないし手が荒れる、足が太くなる等で結婚に不利になる、とこれもまた文句を言われるのだ、と例の女性騎士が愚痴っていた。



しかしまあ、それはそれでありがたいことかもしれない。私は、出来ることならば結婚などしたくないのだ。



これは、性別が変わったからという理由だけでなく、前世からずっと思っていたことだ。自分が誰かと添い遂げている未来など、想像することすらできなかったのだ。恋愛などしたこともなかったし、もちろんお付き合いしていた女性もいなかった。


別に同性愛者というわけではないし、他人に関心がないというわけではないのだが、何故かそうなのだ。恋愛対象というよりも、敵か味方か、守るべき相手か大切な仲間かという見方しかできないといったほうが正しいかもしれない。



もちろん、貴族の結婚など、個人の感情よりも互いの家の利益を優先して行われるものだとは知っている。恋愛ではなく、貴族に生まれたもののいわば“仕事”のようなものだと。



でも、結婚した後にお互い歩み寄り愛を育んできた夫婦を数組―それも高位の貴族の方々だった―見てきているからこそ、そんな関係になりうるはずがないと分かっている私と結婚することになる相手が気の毒なのだ。



―本当のことを言ってしまうと、結婚というよりも子作りのほうが嫌なのだがな!体が女性だとしても、中身は三十路手前の男なのだ。何が悲しくて男とそういう行為に励まなければならないのだ、絶対にお断りだ。


...恥ずかしながら、前世で一度もそういう経験はなかった。王族の護衛に見回りに遠征、書類や訓練など、いろいろ忙しくてそんな暇がなかったのだ。たまにあった休日も、義弟と出かけたり王太子のお忍びに付き合わされたりで、すぐに終わってしまう。ひどい時なんて、明け方まで王太子の愚痴に付き合わされて飲んだこともある。



まあともかく、前世で経験もせず死んでしまったのだ。なのに、初体験が男となんて、絶対に嫌だ。

誤字脱字あったら教えてもらえると嬉しいです。

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