2 いったい何が起きた
初投稿です。よろしくお願いします。
…ある貴族の邸宅の一室、そこでは、一人の女性が趣のあるソファに腰かけていた。その女性、アンナは、彼女の娘である赤ん坊を抱きかかえ、片手に本を持ち、読み聞かせをしていた。
「…こうして、シュバルツの謀反はシュバルツ伯爵の死亡により失敗に終わりました。ですが、その代償はとても大きかった。運悪く魔物に殺されてしまった住人たち、魔物と戦い命を落とした王立騎士団の騎士の方々、そして、自らの命を挺して皆を守って下さった騎士団長クリス・ハイドン様。彼らの犠牲を悼み、広場には石碑と、助けて下さった光の精霊王様、クリス様の銅像が建てられたのでした。…おしまい。私たち貴族も、彼のように民を守らなくてはいけないのよ。それが、貴族の務めなのだから。わかった、クリスティーナ?」
「あうー!」
「そうよ、いい子ね、クリスティーナ。ああもう、なんで可愛らしいのかしら!食べちゃいたいくらい」
アンナの言葉に被せるように、赤ん坊が泣き出す。
「あー!あうー!」
「うふふ、冗談よ、クリスティーナ、安心なさい。にしても、この子はなんて賢いのかしら!もう私の言葉を理解しているのかしら」
「っうーー!」
「まさか、そんなことないわよね、うふふ」
「うぁーー」
「次のお話は何がいいかしら?クリス様と光の精霊王様の契約の時のお話とかどうかしら?」
「やぁーー!」
「まあ、クリスティーナはクリス様のお話が大好きね。やはり、お名前が似てるからかしら。」
「やぁーー!」
否定するように赤ん坊が声を上げたが、アンナは気にするそぶりを見せなかった。
「実はね、あなたの名前もクリス様からとってクリスティーナって名付けたのよ。クリス様のような立派な子になれますように、って。」
「あぅ〜〜〜?」
「さあ、次のお話をしましょう。それは、クリス様が学園に通っていらした時のこと…」
赤ん坊は、笑顔で話している母アンナを死んだ目で見ていた。いや、見ているのだろう。ここには鏡がないから確認することはできない。でも、私の、クリスティーナの目は絶対死んでいる。確信できる。
―何が悲しくて、前世の自分の話を、それも数万倍美化された自分の過去を、抱っこされながら聞かなくてはならないのだろうか。恥ずかしすぎる。今すぐ顔を覆いたい。
もうお分かりだとは思うが、私、クリスティーナの前世は、先ほどから語られている、クリス様などと大袈裟に呼ばれている男だった。
そう、死んだはずの私、王立騎士団団長、クリス・ハイドンは、貴族家に、それも女子として生まれ変わっていたのだ。...いったい何が起きた。
誤字脱字あったら教えてもらえるとありがたいです。あと感想もできれば。