時の神の迷宮 其の一
いよいよ時の神の迷宮にやって来た俺と妹。
時の神の迷宮は、王都の地下にあり――
王都ハルディアは、要塞都市であった。
高い壁に埋め込まれた、巨大な扉の前には、人々が列をなしている。
都市に入る前に、身元確認が行われるのだ。
その列に並び、無事に身元確認を終え、城壁の内側へと入る。
区画された大通りが真っ直ぐお城まで伸びており、その傍らには様々なお店がひしめく。
道具屋、武器屋、防具屋もかなりの数があり、見て回りたいところだったが、
時間がないため、時の迷宮へと急ぐ。
時の神の迷宮は、意外にも、街中にあった。
その入り口は、高く立派な建物にあった。
入り口を入ってすぐに、時の神の迷宮が、この建物の地下にあることを知る。
ということは、この建物が、時の神の神殿なのだろうか。
すいぶん近代的な建物のように見えた。
それに反して、時の神の迷宮の方は、どうやら、古代に人為的に創られたダンジョンのようだった。
時の神の迷宮に入って、すぐに、異変に気付く。
周りの景色があちこちで歪んでいる。
「ここは、少し奇妙な感じがしますわ、お兄様」
リリムが、大剣を構える。
最初は、短剣しか持ち合わせがなかったのだが、
途中で立ち寄った街で、大剣を調達していた。
理由は単純で、魔物が純粋に強いためであった。
「魔物だ!!!」
俺は、ロッドを構える。
そこには、ぐにゃりとした赤いゼリー状の物体がいた。
スライムだろうか。
5匹だ。取り囲んでいる。
リリムが、すかさず大剣を振るうが、その剣をスライムは、するりとかわす。
慣れている様子だった。かなり手強そうだ。
「では……これでは、どうだ?!火炎刃!!!」
火は刃となり、スライムに斬り掛かる。
クリティカルヒットだったが、スライムには効いていないようだった。
「そうか……赤色……火耐性か……!!」
俺は、氷系の魔法に変えてみることにした。
「氷柱槍!!!」
氷の槍が、スライムたちを貫く。
これは、弱点だったらしく、スライムたちは解けていく。
「お兄様……もしかしたら、ここの敵には、あまり物理攻撃が効かないのかもしれません」
リリムが力なく言った。
「まだ分からないさ。まぁ、魔法に弱い敵が出たら、任せてくれ」
「はい、お兄様!!リリムは、お兄様を信じております!!」
その後も、魔物が出て来たが、ここの敵はスライムばかりだった。
どうやら、上位種のスライムのようだった。
色が何種類かあって、色によって、属性が異なるらしい。
なので、俺は、火・氷・雷の魔法を使い分けながら、ダンジョンを攻略していった。
そして、時の迷宮の半分ほども来たのだろうか、
分かれ道があった。
道の先は、ぐにゃりと曲がって見える。
これが、次元の狭間への入り口だろうか。
だが……どちらに進めば良いのだろう。
「道は2つ……一緒に行くか、別れて進むか」
「お兄様、万が一ということがあります。
私は一緒に進みたく思います」
「そうだな……その方が安全か。
右か左……どちらに進む?」
リリムは、少し考えた後、左を指差した。
「こちらに、お父上の気配を……少しですが……」
「よし、じゃあ、左に進もう」
俺たちは、左の道を進んで行くことにした。
ぐにゃりと見えていた道に入りかけた時、俺たちは、ここは異次元なのだと確信した。
その先には、もう道はなかったのだ。
そして、後ろを振り返ると、そこには、もう道は見えなかった。
歪んだ空間が連なって、空間全体が捻れているように見えた。
そして、俺は、悟った……
ここが次元の狭間なのだと。
それは、確かに道なき道であった。
そこに、突然、光の球が幾つも現れる。
その光の球は、規則正しく配列しており、一つの道を形作っていた。
それに沿って、俺たちは進んで行く。
そして、その空間の中に、それはあった。
確かに、扉が存在していたのである。
そして、扉の前には、人影が見えた。
それは、こちらの俺の記憶の中にあった父親の姿であった。
俺は、父親に向かって呼び掛けた。
「親父!!」
次回は、父親とついに対面出来るのでしょうか?
更新、がんばります。
ここまで読んで下さって、本当に、ありがとうございます。