親父の行方
少し更新が遅れて、申し訳ありません。
今回は、主人公の旅立ちの話です。
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ある日、突然、親父から手紙が届く。
その日、義理の母宛てに一通の手紙が届いた。
義理の母は、その手紙を読んだ後、俺と妹を呼んだ。
何か、その手紙には、重要なことが書かれていたらしい。
「リリム、クルト、話しておかなければならないことがあります」
リリムは、覚悟していたような顔で答える。
「何でしょう、お母様」
俺も、事情は分からないが、真剣そうなダリムの表情から何かを察する。
「はい、お伺いします」
「お父上は……今、異世界の扉の前にいます。
異世界の扉を封じるために。
封印が、今にも解けそうなのです。
そして、封印が解ければ、異世界の扉が開いてしまい……」
ダリムは、そこで一旦話を区切り、苦悩に満ちた表情で続ける。
「そうなれば、お父上は、もう、こちらの世界に戻ってくることは出来ないでしょう……。
ですが、お父上一人の力では、異世界の扉を封印することが出来ない。
そう手紙には、書かれているのです」
「異世界の扉とは、何ですか?」
「ここではない、どこか別の異世界へ通じる扉です。
どこに通じているのかは、分かりません。
ただ、その扉が開いてしまえば、かなり多くの者たちがその影響を受けてしまうでしょう。
異世界へと強制的に飛ばされてしまうのです」
それは、俺とは逆バージョンということか……。
「この世界に、そんな扉があったなんて…」
ダリムは、扉について、更に説明を続ける。
「元々は、この世界には、3つの異世界の扉があるとされています。
その内の2つは、今は封印の力で、閉ざされています。
残りの1つが、正に今封印が解かれようとしているのです。
長い年月を経て、封印の力が弱まったのです。そして」
ダリムは、少し俯いて、沈んだ表情を見せる。
「その残りの1つに封印を施し、扉を閉ざすことが、
魔術師であるお父上に与えられた使命なのです」
俺は、話を聞きながら、思っていた。
そんな扉があるのなら、俺、元の世界に戻れるんじゃないのか…?
「俺、親父のところに行ってみようと思います」
「クルト、あなた…」
まさか、俺が異世界から来たことは話せないが、
戻れる可能性があるなら、行く価値はある。
「何より、俺は魔術師ですから、封印に協力出来ますよね?」
「ええ、あなたほどの魔術師であれば……
お父上のお力と合わせて、封印を完成することも可能かもしれない」
「でも、お母様、封印は解けそうなのですよね?
あと……どのくらいの猶予があるのでしょう」
ダリムは、困ったような顔をして、娘の顔を見返す。
「おそらく……持ってあと1か月と」
「私も…私も、一緒に旅に出たいと思います」
「リリム!!」
ダリムが、心配そうに、リリムの顔を見る。
「お母様、ごめんなさい…でも、私、お兄様を放っておけないのです
お兄様は、剣術の心得がありません。
もし、魔法の効かない魔物に出会ってしまったら……」
ダリムは、力なく微笑んだ。妹の気持ちを、理解したらしい。
「リリム、大丈夫よ、あなたも一緒にお行きなさい」
「お母様……」
リリムは泣いていた。母を置いて行くのが心苦しいのであろう。
「私なら、大丈夫よ。私とて、元剣士の端くれ。
村に魔物が攻めてきたとて、遅れは取りません」
「お母様……」
「ところで、親父殿は、どこにいらっしゃるのだろう」
さっきから、俺が気になっていたところだ。
「王都ハルディアにある時の神の迷宮です。
時の神の迷宮は、時の神の神殿の地下にあります」
「王都ハルディア…ここからは、かなり遠いですわね、お母様」
「時の神の迷宮は入り組んでおり、
幻を見せて人を惑わすと言われています。
そして、異世界への扉は、その最奥部、次元の狭間にあると」
次元の狭間って何だ?!かなりヤバそうな予感がするのだが…
「王都ハルディアまでは、歩いてどのくらいなんだろう」
「お兄様、馬で20日という距離ですわ」
「確かに、遠いな……
それならば、今すぐにでも、出発しないと」
「そうですわね……このままでは、お父様が」
そんな会話を聞きながら、ダリムは、目の前に、どんと大きな包みを2つ置く。
「あなたたちなら、そういうだろうと思って…準備しておいたの」
そう言いながら、ダリムは二人に向かって、ウインクした。
「さぁ……迷わず、お行きなさい」
「はい、母さん!!」
「はい、お母様!!」
こうして、俺と妹は、村から真っ直ぐ北にある、時の神の神殿、
もう少し詳しく言うならば、時の神の神殿のある王都ハルディアへと向かうことになったのだった。
次回は、再び、魔法無双の話になる予定です。
ご期待下さい。
ここまで読んで下さって、本当にありがとうございます。