転生先は現実でした
慣れてない感はありますがそれでも楽しんでいただければ幸いです
現実なんてクソゲーだ
そう感じたことのある人は一体世の中でどれくらいいるのだろうか?
少なくても俺はこれ以上にリアルを的確に表した言葉はないと思う。
いや、この世界はゲームと言うにはあまりに不条理で不合理だ。
それでもなお、図々しくもこの世界をゲームだと定義するならばきっと、これ程までにバグに満ちたゲームなんて他に存在しないだろう。
そしてもし買ったゲームがクソゲーだったら人はどうするだろうか?
そう、ゲームならプレイするのをやめればいいだけの話だ。
ならばリアルだって同じだろう。
現実があまりにもクソゲーだと言うなら死ねばいい。
2129年7月13日
学校の制服に身を包み、俺はあるビルの屋上にいる。
未だ梅雨に入っていない、でも季節外れの少し冷たい風が吹く。
どうしてこんな所にいるのか?
冒頭で話した通りこのゲームを放棄するためだ。
「死ぬ恐怖はあるんだな……」
震える手を握りしめ恐怖を押し殺し足を1歩前に出す。
するとその瞬間、体は落ちてゆきマイナス重力に襲われる。
人は死ぬ時今までの記憶がフラッシュバックすると言われているが僕の頭の中はもっとクリアだった。
やっと楽になれるという思いだけが頭の中にあった。
そして、数秒後体に衝撃が走る。
体を痛みが支配し、意識が遠のいていく。
俺は薄れいく意識の中で願う。
なぁ神様、もし生まれ変わることが出来るなら、神ゲーとは言わない。
だからせめて、良ゲーだと思える世界にしてくれ。
「その願い、僕が叶えてあげるよ月城奏斗くん」
誰だ……? いや、いいか。
どうせ死ぬんだから。
そこで俺の意識は途切れた。
「奏斗くん」
誰、だ?
誰かの呼ぶ声が聞こえる。
「月城奏斗くん」
うるさいなぁ、なんだよ。
俺は覚醒しきらない意識で思考する。
俺はどうなった? ここはどこだ?
あぁ、そうだ、おれは死んだんだ。ならここはあの世ってことか。
「それは違う」
俺は少しずつ目を開け体を起こす。
全身が痛くて重い。
まだ少し意識ははっきりせず視界もぼやける。
「……っ!!」
ただそんな体の痛さや気だるさも全てを忘れさせるくらい目の前のそれはあまりにも常軌を逸していた。
「やっと起きたね。 おはよう奏斗くん」
「お前は、誰だ……!?」
「僕はファルサ。 君たちの世界で言うところの悪魔だよ」
「は……?」
ピンク色でウェーブがかった髪に整った容姿に黒を基調とした露出度の高い服、そして控えめながらも最も存在感を放つ羽と尻尾をぶら下げ宙を舞うその姿は何と言われれば悪魔としか言いようがない。
だが、そんなことが……
「そんなことがありえるわけないだろ……!」
悪魔なんて所詮は空想の生き物でそんなものが存在しているはずがない。
「君が信じるか信じないかはどっちでもいいけどそれが事実なんだよね」
信じ難い、しかし幻覚にしてはリアルすぎる。
「はは……仮にお前が本物の悪魔で俺の幻覚じゃないとして、その悪魔様が俺に何の用だよ?魂でも食うのか?」
「魂?そんなのは君たちが僕達に植え付けたイメージでしかない。 僕達悪魔は人間の魂になんて興味はない」
「だったらなんでだ」
「僕達は確かに君たちの魂なんかに興味はない。 でも僕達のこの欲は君たちにしか満たすことは出来ないんだよ」
「どういうことだ?」
「記憶だよ」
「記憶……?」
「そうだ、僕達は人間の記憶を食べるんだよ。 特に何か何か強い感情を持ち続けた記憶は格別だ!」
記憶かなるほどな。
「だったら、勝手に食えばいいだろ? 俺はもう死んだんだよ!」
「記憶の中でも色々あって、僕は負の感情を抱え続けた記憶はあまり好きじゃないんだよ」
「ならどうして俺なんだ!? 負の感情を抱えた記憶が嫌いなら俺を選ぶのはおかしいだろ!?」
「そうだね、君の記憶は負の感情で満ちていいる」
「だったら……」
「だからこそ君を選んだ。 負の感情を抱え続けたものは正の感情を抱くとほかの人間の数倍強く記憶に残す。 僕は君のその記憶を食べたい」
今まで記憶が頭の中をよぎる。
正の感情……
「でもおれには、そんなもの……」
「ないよね。 僕は君をずっと見ていた。 だから知ってる、君は正の感情の記憶なんて持ち合わせていない。」
「それを知っててなんで?」
「だから君にはここでもう一度やり直してもらう」
「……は?」
やり直す? やり直すって何をだ? そもそもここってどこだ?
「そしてひとついい事を教えてあげる。 君はまだ死んでない」
「なに、言ってんだ?」
俺は思わず声を漏らす。
死んでない? 俺が? そんなわけない! だって俺はあの時確かに……
「君は確かにあの時死んだ。でも君は生きている。 いや、生き返ったの方が正しいかな」
ファルサが俺の思考を先読みしたかのように言う。
「生き返った……?」
「そうだよ、僕が生き返らせた。」
「生き返らせたって……そんなことが出来るわけないだろ」
ファルサの発言はあまりにも常識を逸脱し過ぎているし口では否定しているけど俺にはどうしても嘘を言っているように聞こえなかった。
「それが出来るんだよ。もちろん代償はあるけどね」
俺は起きた時の痛みや気だるさを思い出す。
「あれか」
「そう、そしてあまり僕達を君たちの常識や概念で考えない方がいい。 僕達にそんなものは通用しない」
おれは早まる鼓動を抑え状況を整理する。
「……お前の言ってることはまだ信じられないし納得なんてできない、でも理解はした。 それで俺はこれからどうしたらいい?」
「理解が早くて助かるよ。 さっきも言った通り君にはもう一度リアルをやり直してもらう。具体的には君が高校入学した2128年の4月から君が死ぬ2129年7月13日までの約1年間を君にはもう一度高校生活を送って貰う。」
もう一度高校生活を、か……
俺は以前の高校生活を思い出す。
「悪いがそれは無理だ 。 見ていたならわかるだろ」
死ぬ前は俺はただ一人を除いては人と関わるのが怖くて協力関わらないように生きてきた。 そしてその1人も……
「もちろん分かってる。 だから僕は君に1つ僕の能力を与えた」
「能力?」
「そう、その能力はある一定までの出来事を記録し自分が戻りたいタイミングでその時間を巻き戻すことが出来る」
「時間を巻き戻す……」
「もっとわかりやすくするために君達の世界の言葉を借りるならセーブ&ロードってとこかな」
「はは、それはまた本当のゲームみたいだな」
俺は少し引きつった笑みを浮かべて言う。
「へぇ、今度は疑わないんだね」
「お前が異常なのは身に染みて分かったからな。 それに今お前が俺に嘘をついてもお前になんのメリットもない」
「ふふ、やっぱり君を選んでよかったよ。セーブ&ロードのやり方は使いたいタイミングでセーブならセーブとロードならロードと心の中で唱えるだけだ 。」
ファルサはほんの少しの黒さを含んだ、でも少し楽しそうな笑みで言う。
「試してみるといいよ」
今の時間は午前6時37分。
俺は時間を確認して目を閉じファルサに言われるままセーブ、そして2分ほど時間を空けてロードを心の中で唱える。
「……これでいいのか?」
俺は目を開けてファルサに尋ねる。 正直時間を戻したという感覚は全くない。
「うん、時計を見て」
俺は時計を確認する。 そして自室のディジタル時計はさっきと同じ午前6時37分を表示していた。
「本当に戻ってる」
「これで分かったでしょ?」
「あぁ」
「さぁこれで説明は終わり」
ファルサは少し後ろに飛び両手を広げて言う。
「これはゲームだ!君の好きにプレイするといい! さぁ、ゲーム開始だ!」
セーブ&ロードのが出来る2週目プレイ。
いくらステージがリアルといえど確かにこれはゲームと言って差し支えない。
だが……
「そうだな、だが断る!!」
誰もやるとは言ってない。
「明日の君に会うために」もまだ途中ですが2作目です。
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「明日の君に会うために」も更新して行くので一緒に読んでいただけたら幸いです