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破壊神起きてください!  作者: 天雨雪杜
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第四話  遥か遠くに見えるもの

破壊神と創造神は旅の途中で様々な人間と出会う。それはただの村人であったり、一国の王であったり、昔からの知り合いだったり、ときに人ならざる者だったりと様々だ。

そして物語を加速させるのは大抵そんな奴らだったりする。




 教会(ガレキ)を後にした俺達は、鬱蒼(うっそう)と茂る森を出るために先へと進む。

 整備された道どころか、獣道すらないくらいびっしりと植物がはびこっているため、注意しなければすぐにでも足をとられそうだ。

 転ばないように気を付けたほうがいい。後ろを付いてくる創造神にそう注意を促そうとするが、どうやら手遅れのようだ。

 ――さっきから何回も聞こえてきてるからな。「きゃっ」ていう短い悲鳴が背後から。


 「大丈夫か創造神? あと早めに言うべきだったけど、足元気をつけろよ」


 俺が立ち止まって振り返ると、そこには葉っぱやら土やらをあちこちに付けた創造神がいた。

 おそらくというか……絶対転んだな。それも複数回。


 「大丈夫ですよ。転んだりなんかしてません」


 「転んだ……んだろ? ほら、頭についてるぞ」


 「転んでません。あ、ありがとうございます」


 意地を張って転倒した事実を否定しているくせに、俺が頭についた葉っぱを取ってやると素直に感謝の言葉を伝えてくる。

 ――相変わらず変なやつだ、創造神は。今も昔も。

 ただ一つ違うとすれば……今の創造神は全盛期と比べればめちゃくちゃ弱くなっているということだ。


 その話を創造神から聞いたときは本当に驚いた。

 俺が地上に降り立った理由である弱体化が、他の神にも起きていたというのだから。

 それによって力を失った神の内、何人かは……存在ごと消えてしまったらしい。

 神の消滅なんて記憶にあるかぎり一人しかいない。それが何人も……

 その問題をどうにかできないのかと俺が聞くと、創造神は「あるには、あります」と答えた。 

 だがホッと胸を撫で下ろしたのも束の間、創造神が言うには「人間たちの信仰が戻ればれば再びこの世に生まれる」らしく、それがどれだけ先のことになるかは分からない。


 ようするに、今すぐ解決できる問題ではなから後回しにせざるを得ないということだ。

 そして神々の消滅を後回しにしなければならないほどの問題が別にある。

 悩ましいことにそっちのほうが今の俺達にとって重要度が高い。


 ――俺達、神が帰るべき場所である天界の消失。

 あまりに深刻な問題で思わず苦笑してしまうほどだ。

 なんでそうなったのか。

 創造神情報によると、消滅を恐れた神のほとんどが下界に降りて残った力を自らの存在の固定化に使ったから、だそうだ。

 つまり天界の神々は全てを捨てて……人間になる道を選んだのだ。

 俺が死んでる間にそんなことが起きていたなんて、遺憾だ。

 その結果、天界を管理できるほどの力を持つ者はいなくなり、隔離次元ごと自然に崩壊。

 俺たち二人は路頭に迷うこととなった。

 まあ他の神と違って、人間の感情も力にできるから消滅こそしないだろうけど。

 それでも今の創造神は、ほとんど役に立たないぞ。


 ――俺の復活に力を使いすぎたせいだとは思うが。


 「破壊神、あなたにそんな難しい顔は似合いませんよ」


 かなり真面目なことを考えている俺に、創造神が邪魔をしてきた。

 しかもちょっと失礼だ。人のことを言えた義理じゃないけど。


 「考えずにはいられないだろ。先のこと、特に衣食住の三点が」


 「でも今はこの森を抜けるのが先です」


 そう言って創造神は俺の手を引いて先行し始めた。

 茂みをかきわけながら、奥へ奥へと進んでいく創造神に、置いて行かれないように足を運ぶ。

 ついていきながらもこいつが前を歩いて大丈夫なのだろうか、と思ったがそんな心配はいらなかったようだ。


 「破壊神見えましたよ、町が」


 ――森が開けて、草原の向こうの港町が遠くに見えた。

 そう、遠くに。

 距離にしておよそ……わからないけど、遠いというのはわかる。

 そんなの分からないのと同じだが、どうせ歩いていればいつか辿り着く場所だ。それがどれだけ近くとも、遠くとも関係ない。


 「距離ありすぎて心が折れそうだけど、頑張ろう」


 「ええ……頑張りましょう」


 視界に見える町の小ささに、俺達はため息をつくしかなかった。

 本当にこの先が不安だな。




わざわざ読んでくれてありがとうございます。そして次回もよろしくお願いします。あと次々回も。

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