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破壊神起きてください!  作者: 天雨雪杜
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第十二話  喚ばれたあの日

破壊神と創造神は旅の途中で様々な人間と出会う。それはただの村人であったり、一国の王であったり、昔からの知り合いだったり、ときに人ならざる者だったりと様々だ。

そして物語を加速させるのは大抵そんな奴らだったりする。

――あの日の記憶 『始』――





 「くっ……」


 なぜか感じる頭の痛みをこらえながら、俺はフラフラと立ち上がった。

 深呼吸で頭痛をごまかしながら辺りを見回すが――


 「――どこだよ、ここ」


 そこはまったく見覚えの無い場所どころか、その空気さえも体がなじんでいないほど異様な空間だった。

 床には赤を基調とした装飾華美なカーペットが敷かれていているし、天井が呆れるほど高いこの部屋というか間は、一本一本が芸術作品とも言える何本もの巨大な柱によって支えられている。

 俺の記憶の中にこんなお城のような光景はない……




 ――記憶?


 ない……。記憶の中の光景がないのではない。『記憶自体』がなくなっている。

 その事実に思わず背筋を冷たい風がなでるかのような感覚が俺を襲った。

 何かを頭の中から引っ張り出そうとしても、とっかかりとなるべきものが何もないのだ。

 それどころかここにいる前のことも思い出せず、軽いパニックに陥る。


 「気分はどうだい、破壊神? ここは天界だよ」


 さきほどの呟きに応える声が背後から聞こえ、俺は振り返る。

 そこにいたのは――ただの少年だった。

 俺よりもずっと年下の、せいぜい十歳ぐらいの子供。

 おそらく王座だと思われる豪華な椅子に、そいつが座っている。


 「えっと……天界? 破壊……神? どういうことなんだよ? 何が、何がどうでなんなのか……くそっ」


 まったく状況がつかめない俺はそれ以外なにも言えなかった。他に出来ることと言えばみっともなく悪態をつくだけ。

 一体どうなってるんだ?

 ここがどこかもよく分からないし、目の前の少年が誰なのかも分からない。

 ましてや、自分の名前すら思いだせないのだ。

 ――だめだ、平常心を離さないようにするのが精一杯で頭がうまく働かない。


 「やっぱり君も同じ反応をするんだね。無理もないけど」


 そう言って少年が向けた視線の後を追うと、そこには俺と同じように今の状況に戸惑ってるっぽい少女がいた。

 少女といっても、王座に座ってる子供とは違ってだいぶ俺と歳が近いように見える。

 その少女の髪は――本物の金よりも美しい金色。

 瞳のほうは、透き通った海のように綺麗な青ときた。

 まるで女神だな。

 状況から見て俺と同じように混乱しているようだが、今の俺に優しい言葉をかける余裕はない。むしろ俺がかけてもらいたいくらいだ。

 それに、俺よりはほんの少しだけこの状況を理解できているような雰囲気だった。


 「さあ、この人も起きたのですし話してください。私たちにいったい何をしたんですか?」


 金髪少女が、偉そうに座っている少年に問いかけた。

 その声は少年の余裕に負けないように必死なのか、少し上ずっている。


 「まあ、落ち着いてよ。順を追って話すから」


 この場の空気を和ませようとしたのか少年が笑顔を見せた。

 なんだろうこの違和感。なぜかコイツは妙に落ち着いている。

 今この場で最も情報を持っているからこその落ち着きではない。

 この雰囲気は素だ。

 しかも、ただ単に大人びた子供という感じではない。

 ……目の前の少年、いやこの人は、とても大きな何かを背負っている。

 根拠はまるでないのだが。俺の直感がそう言っているのだ。


 「じゃあまずは自己紹介をさせてもらおう。といっても、僕が言うべきことはひとつしかない。それは僕が――『神』であるということだ」


 「「…………」」


 神? そんなバカな。この少年が?

 ありえない。

 妙にしっくりくるのは確かだが、たとえそうだとしてもなぜ俺達は神と対面しているのか、という新たな疑問が浮かんでくるだけだ。

 それ以外にも聞きたいことはたくさんある、が。

 ――それらの疑問を解決しても、さらに追加の?が湧いてくる気しかしない。


 「『神』であるということだ」


 「二回言わなくても、ちゃんと聞こえましたよ。あなたの頭がちょっと……なんていうかオカシイ? いえ、すいませんなんでもないです」


 おい。

 初対面の人に対してそれはマズいだろ。しかも相手は神を自称するやつだぞ。

 けなされた自称神様は、笑顔をひきつらせつつも我慢しているようだけど。


 「力を与える人間を間違えたかな。まあ、いまさら選び直すなんて無理な話なんだけどね、下界は僕が……隠す必要もないから言うけど、滅ぼしたから」


 「滅ぼし……た? ちょっと待て。お前にとっての下界って、俺達にとっての――」


 まさかとは思ったが、聞かずにはいられなかった。

 痛む頭がすでに弾き出していたその答え。

 相手が神だと確定していたわけでもないのに、最悪の光景が頭に浮かぶ。

 完全な直感ではあったが、それを指し示すであろう言葉を神は口にした。

 



 「――そう、君たちが『Earth(アース)』とか『Teraa(テラ)』とか呼んでいた世界のことだよ」




読んでくれてありがとうございます。そして実はこの作品、異世界転生ものだったりします。

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