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第8話 挑発

 沖縄県 楚辺通信所――――ここには2032年現在、日本空軍が所轄する地上電波測定装置、通称【象の檻】が配備されていた。

 この施設は転移以前には中国、台湾を含むアジアの周辺国家における電子戦の関連情報を傍受していたまさに日本の【シギント】の最前線であった。


 だが、転移後ではこういった任務は若干ながらも減っていたうえ、予算の一部削減に伴い2035年ごろを目安に運用を停止する予定であった。

 そうした状況を一変させる出来事が、今回のニシル国との関係悪化だった。これにより急激に日本周辺の情勢がきな臭くなった結果、運用停止が白紙撤回されこうしてまた元気に稼働を続けることとなった。



☆☆☆☆☆



 現在、この通信所内はここ数日でとても騒がしい状況になっており、それにはある出来事が原因でこうなっていた。

 そしてそこでは、ニシル国の通信を傍受していた隊員と彼の上司が話していた。


 「……コード、ノーヴェンバー(ニシル国)による通信が連日非常に活発になっております。10分前に傍受した彼らの通信によると、――――【ZQ】をジャックまで羽ばたかせろ――――とニシル国の軍司令部から発令されていましてこれを解読した結果、【ZQ】は彼らの最新鋭爆撃機のことであると判明しました。ジャックまで羽ばたかせろ、は日本へと偵察飛行せよという意味になりますので、彼らはどうやら爆撃機で日本まで旅行に来るようです。」


 「本土には連絡したか?」


 「ええ、もちろんです。数分以内に那覇基地からF-6M戦闘機2機がスクランブル発進するそうです。――――それにしても、最近ノーヴェンバーによる挑発行為が多いですね……今回に至っては今まで戦闘機での挑発だったのについに爆撃機まで出てきました。そろそろ彼らも『やる気』なんでしょうかね?」


 「どうだろうな……彼らが爆撃機を出してきたのも、案外日本の対応力を見極めるだけかもな。諜報部による報告だと今回出張ってきた爆撃機はどうやら限定的とはいえステルス性があるらしいからな。日本がそれを探知できるのか知りたがってるんじゃないか?」


 「なるほど……確かに、先進国にとってステルス機を見破れるかどうかは非常に重要な情報ですからね。我が国は、J/FPS-10――――いわゆるマルチスタティックレーダーによってようやくアメリカのB-2ステルス戦略爆撃機クラスを見破れるようになりましたからね。彼らにとって何としてでも知りたいでしょう。」


 「まあ、彼らにとっては探知されない方がよかったんだろうが、足元がお留守だったな。そもそもこうやってシギントで負けてちゃあ意味ないだろうに……まあ流石にそれは酷な話か。」


 「日本だけが技術的に突出していますからね、仕方ありませんよ。彼らだってこうした命令に相当な強度の暗号を使っていますし、彼らもシギントにはかなり気を使っているようです。――――まあ、流石に光量子コンピューターで強引に解読するなんて予想もつかないでしょうけどね。彼らがこのことを知ったら凄まじい表情で悶絶しそうです。」


 「ふふ、違いない。」


 こうしてノーベンヴァーことニシル国の暗号通信は彼らの努力(?)によって次々と解読されてゆく。

 ニシル国の情報部は、一応はこうした暗号を破られるという事実には気が付いていたが、彼らにとって流石にどうしようもなかった。彼らだって血のにじむような努力をしていたのだ、日本に暗号を解読されないように、それはもう日々徹夜の勢いでだ。


 だが、日本はその国力と技術力によるごり押しでやすやすとファイアーウォールを突破しニシル国の暗号はもちろん軍事情報は次々と知られていってしまうのであった。もはやニシル国の諜報部の人間にとって誰が最初に円形脱毛症になるか賭けになるぐらいは酷かった、と言っておこう。


 そしてこのあまりの凄惨たる結果についに軍の上層部も爆発、ニシル国内ではよほどの緊急性の高い事態にならない限り通信は有線でとり行われるようになったのだ。

 これによって国内には莫大な費用をかけて有線による通信網が設置され、これがますますニシル国の国庫に重くのしかかる負担となったのであった。



 さて、こうしたあまりにも無残な諜報戦の結果であるが、更にニシル国にとって屈辱的ともいえる事態が起こっていた。それは『日本海軍の潜水艦による領海侵犯』であった。


 日本は第二次世界大戦において、ドイツ海軍の潜水艦には非常に苦しめられてきた。潜水艦の性能はおろか、探知技術すら不足していたために起きた当然の結果であった。これはアメリカ海軍やイギリス海軍からもたらされた技術が実を結ぶまで、空母が撃沈させられるなどとにかく散々な結果だったのだ。


 そして日本は戦後、他国から「狂気の沙汰」とも言われるほど潜水艦技術とその運用、探知技術に関してなんと80年近く研究し続けて来た。そのかいあってか、現在の日本には通常型としては世界最高性能ともいわれる【伊-501型】通称SS-502(史実のそうりゅう型)を建造するまでとなり、これを運用している。

 また、最近ではそれの改良型である【伊-601型】、さらに2030年に就役した【伊-701型】が日本国内にはなんと28隻もおり、それらは非常に贅沢なことに15年程度で退役しており、新型艦が毎年のごとく建造されていた。


 さらに、日本は艦隊に付随する攻撃型原子力潜水艦に関してもかなり研究しており、現在日本には【二-401型】通称SSN-401と呼ばれる原潜が合計して6隻が建造され国防の要として活躍していた。


 そんな日本海軍の潜水艦であったが、なんと諜報活動の一環としてニシル国沿岸――――つまり国のお膝元であるローサル海峡近辺(転移前の世界での台湾海峡にあたる)にまで侵入をしていたのだ。

 侵入された側はたまったものではなかった。

 なにせ、この海域は非常に深い水深の海域とはいえそう簡単には侵入されてはならない場所であったからだ。


 そして何よりも屈辱的であったのは、この日本海軍の潜水艦を全く探知できなかったことだ。日本がいくら高性能な潜水艦を持っているとはいえ、いくらなんでも探知すらできないことはないだろう――――そう高をくくっていたところを鼻先をフルスイングで殴られたのだ。

 しかもそれが判明した切っ掛けは戦後しばらく経ってから日本が一部の情報を公開したからであり、このあまりの情けなさに号泣する者がいたほどであった。


 こうして、彼らニシル国にとって絶望の日々が過ぎてゆくのであった。




悲ーしーみーのー向こうーへとー(音痴)


なんか都合良すぎますが日本が強ければそれでいいのだ。

これからニシル国にとってどんどん悲しいことが起こっていきます。そして日本つえーがさらに加速します。


一応彼らを擁護しときますが、これでもこの世界でも有数の軍事国家なのですよ、F-22とまではいきませんがそれに匹敵する第5世代戦闘機だって自国開発できる国力だってあるし、イージス艦もどきエリアディフェンス艦も10隻ほど保有しています。正直日本がおかしいだけです。日本は元の世界では2正面作戦を前提とした軍備を計画している設定です、マジキチです、それもGDP比5%未満でちゃんと達成しています。やっぱ国力あるって最高やな!



※F-6M戦闘機は史実のF-15MJに相当します



感想待ってマース

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