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第3話 転移後

 日本が転移した世界は、なぜかいままでの地球とほとんど変わらない――――というよりもむしろほぼ同じ世界であった。そして日本が転移してきた場所はなんと元々の場所と同座標であったのである。


 なぜこのような奇跡が連続してきたのかは日本としても永遠の謎であった。だが、もし全く関係のない場所に転移していたとしたら……恐らくは気候変動や異常気象が多発し、酷ければ国土ごと傾斜していた可能性もあっただろう、と専門家の間ではささやかれていた。もしもその場合であれば被害だけでも数十兆円にも上り、復興には長い年月を必要としていたであろうことは間違いなかった。


 このような奇跡が連続していた日本であったが、一応、元の世界とは異なる点というものはあった。

 それは日本列島は日本が転移してくる今まで存在していなかった、ということだ。実はそのせいでこの星全体の気候が地球とは大幅に異なっており、温暖化現象が滞ってしまい史実でいう人口爆発は起こっていない。


 そして世界全体の人口がそれほど多くないため、大気中の二酸化炭素濃度も上昇しなかったことも関係してかこの星全体の気温がかなり低下していた。


 転移して間もなくの日本はこの気温低下に大いに苦しめられることとなる。なぜなら日本がこの世界に来る前の季節は夏であったからだ。幸い、転移後の世界も気候的には夏であったために特に都市部ではむしろ涼しくなったと国民の間では喜ばれたが、農業においては冷害などでかなりの痛手を被り、この年の被害額は数十億円にも上るとされていた。


 そして日本が転移してきた年からはこの星全体で気温が徐々に上昇し、各地で異常気象が発生するなどの被害が多発することととなる。



☆☆☆☆☆



 転移後、日本はすぐさま行動を開始した。

 まず取り組んだのは世界全体への諜報網の構築、とされている。転移前の日本の諜報組織、特にヒューミントに関しては転移が事前に発覚したためになんとか人員を失わずに済んだ。だがイミント、いわゆる偵察衛星を利用した諜報活動はそうはいかなかった。


 かつての地球では専用の偵察衛星のほかに、通信衛星とあわせて軍民共同で使用していた日本版GPS――――全地球測位システムを展開していた。しかし転移によってこれがほとんどすべて失われてしまい、現在日本は画像偵察どころか有線を除いた軍用・民間用の通信システムが一切使えなかった。そのためこれを最初に構築するのを優先的に行わなければいけなかった。


 これには軍用の緊急展開用の空中発射ロケットが大いに役立った。もともと日本はこの転移まで時間的な猶予があったため、偵察衛星や気象観測衛星を急ピッチで作っていた。これが正式に打ち上げられれば早くても数年以内に転移前と同水準にまで引き上げられる、とされていたのだ。

 ただ、それでもしばらくの間は画像偵察と気象観測、そして通信システムが使えないことが予想されたためこのような空中発射ロケットが用いられたのだ。


 日本が開発したタイプである緊急展開用の人工衛星は数カ月程度しか使うことのできない短期運用型ではあった。だが、それでも通信システムを補うには十分な働きではあった。


 そして次に日本が優先的に行ったことは、潜水艦探知網の再設置であった。日本はかつて、半世紀以上かけて海底にセンサーやケーブルを設置して潜水艦探知網として役立ててきた。それが転移によって一度にすべて失われてしまったのである。それもデータごとだ。

 ある意味日本にとってはそれが一番ダメージが大きかった、何より憂鬱だったのはまたすべてのデータを集め直さなければならないことだった、それも短期間のうちに、だ。


 もしもこの世界でも【核爆弾】や【電子励起爆弾】といった大量破壊兵器を搭載した戦略型潜水艦がいたとして、それらを早期探知できなかったらそれこそ国家存亡の危機であるからだ。


 探知網の整備は早急に行なわなければならなかったし、これらの整備にかかる費用のことを考えると日本をもってしてもまさに頭痛の種であった。


 だがそれ以外の事柄――――特に資源関係に関してはなんの問題はなかった。転移前に各国と国交を結べており、転移直後からすぐさま貿易を行えたために資源不足に陥ることはなかったからだ。

 ただ、問題は輸出であった。日本は資源輸入国家であり、それと同時に生産物を輸出して収益を上げていたからである。

 しかし、それもわずか1年で解決することとなる――――なぜならば、この世界では戦争も一度だけ数千万人が死傷するほどの世界大戦が発生して以来、各地でちょっとした紛争が発生する程度であり非常に平和であったこともあり、技術自体もかなり発展が遅れていたことが起因していたからだ。


 具体的には日本が地球にいたころより技術的に20年から30年近く遅れていた。そのせいで日本が持ち込んだ製品はそのどれもがことごとくオーパーツじみたものになっており、その先進的な技術を輸入しようと各国からの注文が殺到したのだ。


 日本政府もこれは情報として事前につかんでいたためにすぐさま軍事技術に繋がりかねないような重要な技術の流出は防げた。そのため一部の工業製品は輸出が差し止められるも、それ以外の製品に関しての輸出は順調であった。

 そしてこの海外からの注文が殺到した結果、のちに第二次高度経済成長期と呼ばれる空前の好景気を記録。そして翌年にはGDPがついに1000兆円を突破し、名実ともに超大国としてこの世界に君臨してゆくことになる。



 だが、こんな日本の成長を快く思わない国家があった。それは地図上において中国の位置にあり、面積はその1/3程度の領土を持つ国家、名を「ニシル国」という。

 




ご都合主義がこれでもかと詰まってます

ちなみにあくまでも異世界転移ではありますが地球だけど色々違う世界、いわゆるパラレルワールドな感じです。

だって別の星なんかにしたらいろいろ都合が合わないですし、地球の方がいろいろ考えなくても済みますからね(本音)


※国家総力戦はなかった、と書きましたが流石にそうなると技術発展が遅れに遅れ、下手したらジェット機すらまともに飛ばないんじゃないかと思い始めたんで修正しました。



感想待ってマース

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