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第32話 決着




 「……総理、停戦が破棄されたことについて、司令部に作戦継続の旨を伝えますか?」


 「ああ。だが、今更手加減する必要性はない。全力で攻撃せよ、国防大臣、統合参謀長、」


 「了解しました。『長安作戦』作戦、再開します。ただ、作戦としては地上戦ののち最終段階となるローサル島の奪取が本来のプランでしたが、敵残存兵によるゲリラ活動の停止、および残存兵の排除へと修正いたします。修正案としては敵の支配地域に電子励起爆弾を集中投下し建築物を一掃したのち、機甲部隊と歩兵部隊を連携させ敵を確実に殲滅します。」


 「わかった。ニシル本国は武装解除できているんだな?」


 「はい、総理。ただわが軍だけではこの広大なニシル国を支配しきれないため一時的にニシル軍に軽装備を持たせ、巡回に当たらせております。重火器に関しては流出させないよう厳重に管理しているのでご安心を。」


 「ニシル製の重火器が他国に流出して周辺国の情勢が悪化しました、なんてシャレにならないからな。ああ官房長、それでニシル国に対する賠償などの草案は決まったのかね?」


 「ええ、具体的な案としては100兆円規模の賠償金と本戦争を引き起こしたチャールズ・ミタノフ大統領を筆頭に数名の閣僚の日本国への引き渡し、そして数年間ローサル島を占領するといった条件ですね。それとこれはニシル-日本政府間にのみ交わされるいわば『裏条約』ですが、これはニシル国における船舶建造の制限を設けることや航空機保有の制限、核兵器を廃棄、ないし制限するといったものになります。」

 

 「本来であれば日本に一切歯向かえないようにすべきではあるが?」


 「さすがにそれは国際情勢的、そして将来的に見て厳しいかと。国民にはニシルに対して懲罰を与えた、という実績が必要ではあるのですがやりすぎるとかの国から恨まれ、百年かけて復讐されかねないですしなにより国際社会でもそれなりの立場だったニシル国を奴隷のように扱ったとなれば国際世論の反発も必至でしょう。表向きは不満が出ない程度に穏当にし、裏でニシル国を腑抜けにしてしまうほうが賢明かと。」


 「それもそうか……。まあなんにせよ、これはローサル島の状況が安定してからだな。――――日本が覇者になるには相当な年月が必要だが、必ずしも不可能というわけではない。心してかかるぞ。」


 『はい。』



 ☆☆☆☆☆



 ニシルとの実質的な戦争が終結し、停戦合意が破棄されてから2週間後。ローサル島ではニシル軍残存部隊は虫の息であった。

 いや、2週間も良く持ったというべきだろう。なぜならそれほど日本軍からの攻撃は激しいものであったからだ。日本軍のやり方はいたってシンプルであり、まず地図上にある都市を一つずつ緻密に攻撃してゆくのだ。

 具体的には最初に機甲部隊を最速で街中を走らせてわざと囮として攻撃を誘発させ、その後攻撃があった区域ごと電子励起爆弾を投下し、爆破後更地になった場所にゆっくりと機甲部隊と歩兵部隊を進撃させ制圧してゆく。

 日本軍のやり方はとにかくシンプル極まりなかったが実に効果的であり、残存部隊はかなりの数がこうした掃討作戦によって散っておりもうほとんど残っていなかった。そして民間人も日本軍の事前に再三にわたって行われた勧告によって避難しているため、肉の盾すらまともに使えなかったのだ。頼みの核兵器すらすでに使い切っている現状、もはや彼らには降伏という手段しか残されていなかった。

 

 そしてさらに数日後、日本軍がローサル島に残された最後の都市を攻略するその数時間前、反乱部隊はついに白旗を挙げて投降。2週間にわたる抵抗はついに終結した。


 その後の展開は非常にスムーズに進んだ。なぜなら日本軍に投降した残存兵の中に停戦協定の締結時に起きたテロ事件の首謀者であり、この抵抗部隊を指揮していた佐官がいたためだ。それを知った日本軍上層部は直ちに彼を重要参考人として緊急逮捕し、異例ともいえるスピードでこの主犯の男を死刑をもって処罰した。

 そして一部の駐屯部隊の部隊を日本から入れ替わりとして派遣したのち、全部隊を本土へと帰投させたのち日本政府による「作戦終了宣言」がなされたことによってついに戦争は終結したのであった。


日本側の戦死者は軍民合わせて4387名、これはほとんどが核攻撃による被害であり、直接的な戦闘では上陸戦時の被害が最も大きく、次に魚雷による攻撃で轟沈した【杉】が多大な戦死者を出していた。

 航空機は戦争の発端ともなった2機の撃墜であり、これ以降戦闘機は撃墜されていない。艦艇としては【杉】の撃沈のみであり、本戦争において最も大きな被害を負ったのはやはり陸軍であった。装甲車両数百台の大破が主な被害で、幸いなことに戦車は1両も撃破されていない。


 ニシル国の被害としてはそれはもう悲惨の一言であった。戦闘機はほぼ撃破され、残されたのは輸送機であったり戦闘にはほとんど役に立たない機体ばかりだ。

 海軍も多くの艦艇が撃沈されてしまい、もはや彼ら単独ではシーレーンの維持にすら苦労する程度には戦力が低下していた。陸軍に関してもあまりの被害に自国の防衛すら困難になるほどの膨大な戦死者であり、戦後しばらくは日本に依存しなければならないほどには弱体化する結果であった。


 こうして数週間にわたって起こった日本とニシル国との戦争は日本国の勝利に終わり、極東のパワーバランスは大幅に変わることなるのであった。

 これは日本としては非常に望むべき結果であり、すなわち日本の立場が大幅に上がるということに他ならない。こうして日本は世界の覇者になるべく、順調に一歩を踏み出したのであった。




俺たちの冒険はこれからだ的な。でも完結はしないし(多分)まだ続くんじゃよ。

とりあえず外伝しばらく書く感じになるかも。



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