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第28話 越えられない壁



 ニシル陸軍が誇る戦車群がものの数十分で殲滅させられた、という報告は彼らニシル軍上層部にとっては

受け入れがたい現実であった。

 当初、ニシル軍の想定としてはこの戦車を含む機甲部隊で強固な防御陣地を築けば、いかに日本軍とはいえども想定では数日は持たせられた「はず」であったからだ。

 だが、こうした想定はあくまでも「格下のみ」を相手にしてきた上にゲリラなどの非正規戦にばかり慣れてきた軍隊の想定でしかなく、彼らが圧倒的な自信を持っていた最新鋭の第3.5世代戦車に相当する戦車でさえも日本軍のテクノロジーのもとにあっけなく崩壊してしまった。


 そしてこの「あっけない壊滅」はニシル陸軍にとって最悪の事態であり、当初進められていたローサル島防衛作戦の早期破綻を意味するのであった。

 ただ、防衛作戦といっても日本軍をローサル島から完全に追い出すことを想定していたわけではない。あくまでも頑丈な陣地を築くことによって日本軍の衝撃力を殺し、戦線を膠着化させることが目標であった。


 そうして戦線を膠着させたのちに休戦協定を結ぶなりして本戦争を終わらせることこそがニシル軍が考えた「防衛戦争」であった。


 だが、それはあくまでも国家間の戦争がほとんど行われず戦争の「ルール」がまだ冷酷になり切れていない国の甘い考えでしかなかった。

 当然、日本はそんな馬鹿な考えは持ち合わせていなかったし、耐えきるはずだった機甲部隊による防衛ラインはとっくに破られてしまったため膠着どころではなくなってしまった。


 そして、ニシル陸軍はこの戦いによって唯一ローサル島に配備していた機甲師団を事実上失ったことにより急速にその動きを鈍らせることになるのであった。



☆☆☆☆



 「あれがタイプ10か。……よし、距離4000から発射する。ミサイルの状況は?」


 「問題ありません、いつでも発射可能です。」


 そう小声で話す彼らがいるのは即席で作り上げた蛸壺に対赤外線処理が施された森林用の迷彩が施され、陣地全体を覆い隠すように張られた布、そしてその陣地の中に置かれた対戦車ミサイル――――そう、対戦車陣地である。

 これは機甲師団が事実上壊滅したニシル陸軍が苦肉の策として作られた防御陣地であり、こうした陣地は航空機はおろか10式戦車のセンサーをもってしても容易に発見できるものではなく、ミサイルが発射されるまでなかなか気づけないほどの優秀さを見せ、終戦まで撃破はされなかったものの何両もの10式戦車を後方送りにさせ日本軍を悩ませた。


 「距離4500……よし、発射用意。」


 「了解。」


 「距離4000。撃て!」


 射撃命令を受け、引き金を握っていた兵士は命令通りに発射、その1秒後には毎秒400mで進む大型の対戦車ミサイルが故障することもなく正確に10式戦車の砲塔側面(・・・・ )に吸い込まれてゆく。

 そして最新鋭戦車ですら破壊されるほどの威力を持つこのAT-5対戦車ミサイルは目標に正確に着弾、HEAT弾頭を起爆、発生するメタル・ジェットで装甲板を貫通し、10式戦車は弾薬庫を引火させその「大きな砲塔」を宙に打ち上げる――――はずだった。


 「……は?」


 「命中を確認するも、効果なし。……隊長、いかがしますか?」


 「いや、一旦退避を――――」


 「しよう」と言う瞬間、ミサイルの発射地点を探知した10式戦車による反撃によって第107対戦車分隊は放たれた120mmのHEAT-MPにより肉片すら残らずに爆散するのであった。


 彼らは知る由もなかったが、実は10式戦車はもともと車体に比べて1mほど砲塔の幅が狭い。先に述べたようにこの戦車は戦闘によって追加装甲を付与できる戦車であり、今回第107対戦車分隊が相手したのは10式戦車の中でも最も対ゲリラ戦に向いた【3型装備】と呼称されるタイプだ。

 これは市街地などでの戦闘をする際、側面や上面に対する不意の攻撃に対応するためにそれらに追加装甲を施したものであり、側面は1m分まるごと特殊軽量装甲で埋められており、その防御力は対CE弾で1000mmはあるのだ。

 しかも彼ら第107対戦車分隊にとって運が悪いことに、ちょうどこの分厚い側面装甲にHEAT弾頭の対戦車ミサイルを当ててしまった。

 もしも彼らが【AT-5対戦車ミサイル】を使用せず、もっと大口径であるミサイルを使用していれば、それとも側面ではなく上面にミサイルを当てていれば結果は変わっていたかもしれないが、すべては後の祭りであった。

 

 こうした対戦車陣地からミサイルを撃ち10式戦車に命中させるという事態は何度かあったが、残念ながら撃破するに至らず、逆に曝露され陣地ごと戦車砲で吹き飛ばされてしまい貴重な人員を失うといったことが相次いで発生し、ニシル軍を悩ませて行くのであった。

 ただ、彼らにとって悪いことばかりではなく、こうした陣地に不用意に近づかないように日本側もかなり慎重に進軍するようになり、図らずも彼らの「防衛作戦」は意外なところから一定の戦果を見せていた。



 そして、事態はさらなる展開に発展する。



間隔が伸びすぎるのはいかんので投稿しました。



感想待ってマース

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