第21話 絶望
『こちらエンジェル01よりフェアリー02に通達、方位2-6-8、高度10000、距離400にボギーを探知。注意されたし。』
『こちらフェアリー02、エンジェル01。了解した、これより戦闘態勢へと移行する。』
「全員聞いたな?これより戦闘状態に入るから気を抜くなよ!」
「了解!」
ローサル島から北東の空、そこには那覇基地からF-10Aの2個飛行隊がノーヴェンバーでの航空優勢を確保するために出撃してきていた。
ノーヴェンバーことニシル国は日本との初戦闘において日本空軍からの先手である戦術爆撃によって多大なる被害が与えられていた。彼らは一応は警戒していたとはいえ、各地にあるレーダーサイトを爆破され、戦闘機を含む航空戦力の実に6割がただの一度の爆撃で失われたのである。
この攻撃によって作戦行動が出来、なおかつ稼働率を維持できる戦闘機の数は120機程度、しかもそのうち日本とまともに戦えるであろう【Y-11】ステルス戦闘機はわずか28機、平時の1個飛行隊程度しかないのだ。
そして何より最悪なのはパイロットの損失であろう、爆撃によって80名近くの優秀なパイロットが失われてしまったから、この損失は計り知れないであろう。そして、彼らに更なる悲劇が襲い掛かる。
そう、日本空軍が本格的な航空撃滅戦を行うために最新鋭戦闘機を惜しむことなく投入してきたことだ。そして彼らは奮闘した、何機墜とされても、パイロットの損失すら厭わないくらいには。
だが、その虚しい努力は日本空軍の強大なる戦力の前にはかなく散ってゆくこととなる。まず、彼らの戦闘機が異常であった。
探知しようにもレーダーの性能があまりにも違いすぎたために先制することすら叶わなかった、日本はこの戦闘機開発において次世代型ハイパワーレーダーを実用化させておりその探知距離と精度ははるか上の水準にあったし、F-10A/Bの開発でようやく実用化された「高出力マイクロ波照射装置」でアビオニクスが強制シャットダウンさせられるし、AAM-6――――中距離空対空ミサイルもなにより厄介極まりなかった。
このミサイルは何より探知できないのだ。恐らく指令送信機、シーカー、近接信管などが特殊な変調方式をかませているらしくレーダー・ミサイル警報装置が反応しない ため、気づいたらすでに撃破されていた、なんてふざけた事態が起こるのだ。
このあまりの蹂躙劇にはニシル国の軍上層部は顔面蒼白を通り越してもはや土気色に近い有様であった。
なにせ戦争が始まってから1週間もたたないうちに航空戦力、とりわけ制空能力を持つ戦闘機が50機を割っていたのであるのだから。
一応爆撃でいくらか数が減ったとはいえCOIN機を含む対地攻撃機がまだ100機は残存しており、上陸阻止自体はできるかもしれないが航空優勢どころかもはや制空権すら奪取された状況とあってはもはや空軍に組織だった行動をさせるのは不可能であった。
またもや日本空軍が我々から空を奪うためにやってきたようだ――――もう自分たちには1個飛行団という単位すら組めないというのに、なんとも好戦的な連中である。
ただ、ここで見逃すともう我々には何も残されなくなる。そんな覚悟を抱く第204戦術飛行隊の隊員たちは
日本空軍に決死の覚悟で襲い掛かるもこの時をもって全滅し、ついにニシル国の防空体制は完全に崩壊してしまうのであった。
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2033.2.14
ニシル国 大統領官邸 地下指令室
10:27 日本標準時
「いったい何が起こっているのかね!!」
「大統領、落ち着いてください!……確かにこれは想定外でしょうが、焦っていては何もできません。どうか気を落ち着かせて下さい。」
「ふぅー……わかった。それで、被害はどうなっているんだ?」
「はい、現時点で判明しているのは空軍だけでも10個飛行団が完全に壊滅、もはや残っているのは戦力として除外している教導隊しか残っておらず、制空任務すら遂行不能な有様です。海軍も開戦直後の日本軍による潜水艦からの攻撃によって潜水艦基地が壊滅、そのうえ第1艦隊が全滅してしましたが第2、3、4艦隊はなんとか健在です。陸軍に関してはほとんど兵力は損失していませんので戦えはしますが、制空権すら獲られてしまった現在、はたして日本軍を相手にしていつまでもつか……。」
「つまり、もはや戦況は不利でしかない、そういうことなのだな?」
「ええ、悔しいですがこのままであればわが軍は壊滅するでしょう。」
「――――仕方がない、か。」
「……え?」
「『ブラックケース』を起動させろ。また、大統領権限53417の発令を許可する。現在、太平洋にいる潜水艦群に巡航ミサイルの特殊弾頭の使用を許可する。起爆コードは00000000だ。」
「大統領、まさかとは思いますが?」
「そのまさかだ……目標は日本軍の空母艦隊とオキナワの軍施設だ。威力は小規模だがこの際やむをえまい。」
「切り札とはいえ、こうも早くに使ってしまうのですか?」
「そうでもしないと日本軍の侵攻を止められんだろう。それに、仮に防がれたとしても電磁パルスでしばらくはレーダーも使えまい。ああ、空母艦隊への攻撃は対艦ミサイル攻撃が行われると同時に行え。そうでもしないと易々と迎撃されてしまうだろうからな。」
「了解しました。軍にはそのように通達します。」
「もはや我々にはこの手しか残されていないのだ、いままでの攻撃は何倍にして返してやるからな……。」
Q:もし日本に核攻撃したらどうなるでしょうか?
A:相手は死ぬ 慈悲はない
ちなみにネタバレしますが彼らはこの攻撃でついに日本人を本気で怒らせます。
感想待ってマース




