第19話 海戦②
沖縄県 那覇基地、ここには第2次大戦時からある日本軍の航空基地が存在していた。戦後は日本陸軍、海軍から一部が独立してできた日本空軍による航空基地として、転移後はニシル国に対する前哨基地として国内でもかなりの規模として存在してきた。なかでも今回のニシル国との戦争において、前線基地として大いににぎわっていた。
そのなかでも特に異彩を放っていたのはとある航空機である。その名は【B-1J】戦術爆撃機、またの名を『空中巡洋艦』と呼ぶ人間もいる。
なぜ、『空中巡洋艦』なのか、それはこの航空機の性能にあったからだ。この航空機はアメリカとのある意味での共同開発によって生まれた爆撃機であり、この機体は敵地への超低空侵攻による核、および通常攻撃や巡航ミサイルプラットホームなどの任務に加え、日本独自の要素として『対艦攻撃』を主軸に置いた開発がなされた。
これによってこの【B-1J】は驚くことにASM-3といった大型対艦ミサイルを1機当たり24発も抱えながら亜音速で敵艦隊に向かって攻撃することが可能となっている。有事での1個航空隊――――つまりは30機が全弾撃てば、なんと720発もの対艦ミサイルが敵艦隊に向かって飛んでゆくのだ。ゆえにその単機での攻撃力の高さから『空中巡洋艦』と呼ばれるようになった。
そしてこの恐るべき攻撃力をもつ攻撃機が、いま沖縄には60機――――2個航空隊も駐屯していた。そのほかにも対艦攻撃部隊として参加してきた【P-1】哨戒機も合わせると総勢100機を超える航空機たちが集結していた。
一応、近接航空支援や対潜哨戒などのミッションもあるためにこのすべての航空機が対艦攻撃には参加はしないが、それでも本戦争においては【B-1J】と【P-1】だけでも合わせて1500発近い対艦ミサイルが投入される予定であった。
今回、彼らがわざわざ来た理由、つまりは任務、それはニシル海軍の艦隊の撃滅にある。
情報軍や潜水艦、偵察衛星などによる諜報活動によると、ニシル海軍はかなりの規模の艦隊を編成しており、このままだと統合打撃艦隊と戦闘に陥ると推測されていた。彼らがこの艦隊を出撃させた理由は統合打撃艦隊を阻止するためなのか、それとも「沖縄」に攻め入るつもりなのはまだ把握しきれていなかった。(彼らはばれていないと思っているようであったが、この沖縄攻略部隊の準備はすでに見破られていたのである。)
ただ、それでもまだ上陸部隊を集めるにしても準備に時間はかかるであろうし、何より日本から上陸部隊が艦隊を連れて押し寄せているので恐らくはこれの防衛だろう、と日本軍の司令部はそう判断していた。
そして、わざわざこのような爆撃機たちを出したのには理由はある。
それはこの戦争では水上艦に余計な被害を出さないためと司令部が決定したためである。(そもそも『統合打撃艦隊』はあくまでも上陸部隊を守るための盾であって、艦隊決戦のために派遣しているわけではなかったからだ。)
それに、司令部はかなり怒りをあらわにしていた、というのもある。ニシル海軍はどうやら潜水艦で【松】を沈められて自信を得たのだろうが、あくまでも沈めたのはコア人員が100人もいない小型艦だ。日本にとってあまり痛手ではなかった。だが、この撃沈を受けて彼らは受けるはずのない被害を初手で受けてしまい恥と感じていたからだ。
ゆえに彼らはこれを徹底的に叩きのめす必要があったし、上陸戦が控えている艦隊を疲弊させたくはなかった。
それに、ニシル国の艦隊といってもエリアディフェンス艦はそこまで多くないし、航空機からのASM-3と魚雷だけで葬り去れる自信が日本軍にはあった。
また、ニシル海軍も日本海軍からの攻撃を防ぐため、かなりの規模の艦隊を築き上げて日本に対抗しようとしていた。航空母艦こそないが戦闘艦の艦艇数において日本軍とタメを張れるほどにだ。
だが、彼らは想定していなかった事態に遭遇した。そう、このイラついた日本軍に八つ当たりのごとく送り込まれた爆撃機隊、それとローサル島近辺に潜伏していた潜水艦群らによる猛攻撃に晒されることを。
後世から「ローサル海戦」と言われる一連の戦闘はすぐそこまで迫っていた。
この世界の日本がキレると1千発超のステルス超音速対艦ミサイルで襲い掛かってきます
陸からの対艦ミサイルを合わせるとたぶん3千発近くは保有してるんじゃないかな
感想待ってマース




