第16話 爆撃②
その日の深夜の警戒任務はまさに暇そのものであった。軍のお偉いさまからは日本軍がもう間もなくやってくるから警戒を厳にせよ、なんて言ってはいたが本当にすぐ来るんだろうか?とこの日レーダー観測員として任務に就いていた1人の若者はそんな考えにふけっていた。
――――日本の戦闘機からの不意打ちを受けたのはたったの『2日』前だ。マスコミからも、上層部からも、同僚からもそう聞いている。まさかもう日本軍は準備を済ませたのだろうか?
ただ、それにしては速すぎる、わが軍だって戦争するには準備に3日はかかるのだ。「ありえない」、そう考えている彼はその話題について彼の上司と話していた。
「流石に日本軍もこんなに早くはここには来ませんよね?」
「さあな……ただ、日本軍はかなり迅速に戦争を遂行できるそうだ。一応、朝には陸さんの近接防空部隊がここに援護しに来てくれる。それまでは油断は一切できないな。」
「はっ、わかりました。」
その時、会話していた彼と他の観測員の眼には数秒間、レーダーに反応があるのを発見した。
「少佐!レーダーに反応が!」
「なに……?反応は何秒間だった、そのほかの詳細は?」
「はい、反応は約6秒程度でした。数は1機だけでした、距離は20。少佐、これは……。」
「ああ、わかっている。恐らく日本軍だ、はやく緊急通信しなければなら――――。」
だが、その後の彼の言葉は途絶えた。なぜなら、彼らがいたレーダーサイトは【B-4】によって投下された誘導爆弾によって粉々に爆破されたからだ。
『――――目標は完全に沈黙、これより撤収する。』
『了解、全部隊は合流地点へと移動せよ。なお、今後は作戦に従い散発的に工作を行え、敵の特殊部隊も行動を始めている、十分注意せよ。』
そう締めくくられた通信をあとに、第2機動連隊のとある小隊員たちは破壊されたレーダーサイトから撤退するのであった。
☆☆☆☆☆
【B-4】ステルス爆撃機群より投下された誘導爆弾、これらは爆撃誘導員による誘導のもと、正確に目標――――すなわちレーダーサイトに着弾した。また、対レーダーミサイルも誘導員の派遣が間に合わなかった処もほぼ正確に破壊、これの無力化に成功している。
この攻撃によってなんとすべての固定式レーダーサイトは破壊されてしまい、ニシル国の強固な防空体制は崩壊することとなった。
彼らに残されたのは、防空壕に隠していたために破壊されなかった車載移動式の対空レーダー十数機と、早期警戒管制機および早期警戒機のみとなったのだ、これではまともに防空すらできないも同然であった。
だが、彼らの悲劇はここでは終わらなかった。
――――その数時間後に港から大量の日本軍の艦艇が出撃した。そんな情報が情報部からもたらされたからだ。
ニシル国の情報部はこの日本軍の動きには大分前から気づいていた。なにせ空母を含む大規模な艦隊だし、揚陸作戦をするために装甲車両を民間の船舶に載せる作業をしているのが現地に潜り込んだ諜報員によって目撃、彼らによって報告されていたからだ。
それに、国防の一環として宇宙空間に放っている軍事衛星からの偵察写真にもそれがバッチリと映っていた。
『恐らくは日本軍が攻撃に移るのはあと1日は最低でもかかるだろう』
日本軍のそういった準備から推測していたのがここにきてまさかの最新鋭機による爆撃と艦隊の出撃であった。流石に最新鋭機を投入して爆撃をしてくるのではと想定はしていたとはいえ、本当にそれをやってくるとは到底信じられなかった。
あまりにも早い艦隊の出撃もそうだ、巡洋艦や駆逐艦ならまだしも準備に時間がかかる揚陸艦や航空母艦がこれほどまで早くに日本を出発するなどニシル国の政府上層部にとって想像の範囲外にあった。
ただ、軍はそうでもなかった。日本軍については詳細な報告書である程度は理解していたし、その恐ろしさをわかっていた。ある程度日本軍の動きはつかんでいたし、早ければもう10時間以内には出撃するだろう、と見立てられていたからだ。
そしてニシル軍の統合司令部はこの報告を受けてからはすぐに動き出した。すぐさま海軍に対し、日本海軍を阻止するために出撃命令を出したのだ。
また、日本軍にもギリギリまで悟られないように秘密任務として本土で最低限の防備だけ残してあとは『沖縄攻略部隊』として準備させようと招集をしていた陸軍にもこれを早めるように伝え、彼らはこの日本軍への対応に動き出したのであった。
日本との直接的な戦闘はすぐそこまで迫っていた。
戦闘描写をいろいろ書いたり資料集めがあったりするんで(多分)更新頻度が落ちます。
感想待ってマース