第13話 準備
2033.2.13
総理官邸 地下 危機管理センター
09:12 日本標準時
ニシル国に宣戦布告をしてから2日後、近藤 総理大臣と大村 国防大臣、林 統合参謀長を含む何人かの人間がここ危機管理センターに集まって本日最初のNSCを開いていた。そこでは日本軍の展開状況について話し合いが行われていた。
「――――えー、ただいま陸軍は第5師団の装備の積み込みが完了しました。とりあえずは彼らを揚陸させるために、それぞれ【択捉、国後、色丹、利尻】、【下北、国東、大隅】に分担して搭載しております。また、これでも一部積み込み切れなかったため、【25式機動揚陸艦】にも搭載しております。そして、この長安作戦の第3段階である揚陸作戦についてですが、まず『ノーヴェンバー』のとある場所にこの第5師団を揚陸させたのち、この場所のすぐ近くにある港をこの戦力で完全に抑えます。その後は幾つか支援を行いながら、わが国のRO-RO船と事前集積艦をフル動員して機甲師団である第7師団を速やかに揚陸させたのち、『ノーヴェンバー』の機甲師団と戦いながらあと詰めとして完全機械化された第1師団と第8師団を一気に上陸させて優位に立たせます。そのあとは、第1空挺師団を敵後方に投入し包囲殲滅をもって本作戦は完了となります。」
「よろしい、ところで第1、第2空母機動艦隊の再編成は完了しているか?」
「ええ、すでに最新鋭の【蒼龍】、【飛龍】、そして【翔鶴】を中核とした航空艦隊として編成済みです。また予備戦力として旧式の【赤城】を中心に据えた遊撃隊もすでに編成しており、万が一の際もこれで十分でしょう。他にも沿岸用駆逐艦で固められた、勝連基地にいる第11艦隊と横須賀の第6艦隊も出撃させます。第56掃海隊群と共同で対潜任務を行い、また上陸支援などに対応させる予定です。」
「そして、敵による巡航ミサイル攻撃を想定して現在、呉と舞鶴からは第6、第8巡洋艦隊がすでに出撃しており対空警戒に当たっています。」
「潜水艦隊はどうだ?」
「はい、呉と横須賀からそれぞれ4個潜水艦隊がすでに出撃済みです。彼らには空母機動艦隊の護衛任務についてもらうのと同時に『ノーヴェンバー』の領海で通商破壊作戦に従事してもらいます。また、『ノーヴェンバー』の艦隊には何隻かエリアディフェンス艦が紛れ込んでいますので、空母艦隊を囮として使ってこれを優先的に潰していきます。」
「今回の『長安作戦』の第1,2段階である特殊部隊の隠密作戦と破壊工作だが……なんとかうまくやっているか?」
「ええ、それはもちろん。――――『ノーヴェンバー』国内では今頃大混乱ですよ。攪乱作戦は彼らにはタカ派の大統領を嫌った反政府勢力がおり、それらを支援すると同時に各地で破壊工作を行っているので、彼らはそれを守るために陸軍の部隊をいくつも割りあてています。今頃は国内は治安も悪化してそれを鎮圧するのにも陸軍を使っていますので、著しい戦力分散が起こっています。ただ、今回揚陸地点として選んだローサル島はかなりの防備が固められており、わが軍の特殊部隊を持ってしても破壊工作は困難であるため無傷であります。」
「……ただ、ここを一度でも取ってしまえば彼らにはもはや再奪還するほどの戦力は残されておりません。その為の戦力は国土の治安維持のためにほぼ抽出されていますからね。嫌がらせする程度の戦力しか残らないでしょう。――――このローサル島はそれだけ彼らにとっての重要な場所、ここだけで『ノーヴェンバー』の戦力のうち、40%近くの戦力が配備されています。完全装甲化された1個機甲師団に加え4個師団もおり、空軍戦力も3個飛行団が常駐しております。航空戦力による支援なしで正面からの真っ向勝負をすればわが軍とて甚大な被害を被るでしょうね。」
「それをさせないのが空軍だ、そうだろう?」
「ええ、今回の作戦には虎の子である第3戦略爆撃隊が投入されます。彼らと、空母航空隊が共同で敵の早期警戒網を破壊して空の目を奪い、かつ発電所や通信指揮施設、飛行場、軍港、駐屯地、また橋梁の破壊、鉄道と高速道路等の寸断等、重要施設に対して爆撃を行なう任務が彼らに割り当てられています。その後はじっくりと料理ですかね?」
「ああ、じっくりと炙ってやろうじゃないか。二度と空も飛べないようにこんがりと、な。我が国の航空隊の恐ろしさを存分に教えてやろうじゃないか。」
「ええ、了解しました。それと、今回の揚陸支援には航空優勢が獲れたのちに、【E-10C J-STARS】2機を投入します。流石にガンシップは彼らのMANPADS――――携帯式防空ミサイルシステムによって墜とされる可能性が高い為に投入はしませんが、CAS(近接航空支援)として【B-1J】も投入されます。流石に投入しすぎかもしれませんが、相手は先進国ですのでご了承ください。」
「ああ、わかっている。油断して適当なことをしているようじゃ何人戦死者がでるのかわかったものではないからな。そのあたりは抜かりなく頼むよ。」
「はい。お任せください。」
「はぁ……それにしても、今回の戦争はまた一段と予算がかかりそうだな……一応は臨時の補正予算案は提出したからまだ何とかなるが、なるべく早くに戦争を終結させないと野党に叩かれかねんな。ただでさえ彼らは我々を軍国主義者呼ばわりしているんだ。世論にも気を付けないとな、今は『ニシル討つべし』で統一しているがいつ支持率が落ち込むかわからん。全く面倒な時代になったものだ。」
「これもまた時代、ですかね。気軽に戦争ができるアメリカが羨ましいですよ、まったく。」
「仕方がありませんよ、他国は他国、日本は日本なのですから。」
「そうだな、くよくよ言ってても仕方があるまい。せめて彼らには潔く散って貰おう。」
こうして日本側にとって準備が整い、ついに戦争の火ぶたが切られたのであった。
そろそろ次こそは戦闘に入らせたいんですが、もしかしたら入らないかもしれません。なるべく戦闘シーンを入れていきたいのでもうすこしだけお待ちください。
空挺師団の存在を今の今まですっかり忘れてました、やべぇ……
【25式機動揚陸艦】は今アメリカ海軍が数隻保有している機動揚陸プラットフォームのことです。あれヘリも運用出来たりとすごく万能なので日本にも導入させました。
沿岸用駆逐艦
http://ncode.syosetu.com/n6466di/3/
感想待ってマース