ライブに行こう!
優羽、咲、雪菜の3人はルナキラのライブがある会場にきていた。その会場の見て、俺の口から感嘆の声が漏れる。
「あいつらも、人気者になったもんだなー」
雪菜も、
「うわぁ、凄いなぁ」
咲は感動のあまり言葉を失っていた。
会場の入口に来るとはっきりいってやばい。何がって?もちろん人だよ?いや多すぎ・・・あ、これだけ人気ってことか。しかし、こんなに人気になるなんて初めてあった時には想像もしなかったな。
たしか初めてあったのはアニメ化が決定して、そして、様々なことが決まっていって制作に入った時にOP曲とED曲のアーティストが決定して挨拶に来た時だったなぁ。OP曲がルナキラでED曲がえっと・・・やべっ・・・誰だか忘れた・・・ま、いっか、それで、2組とも声優さんだったから声も綺麗だったな。最初にルナキラが挨拶に来たんだっけな。
「emeral先生、ルナキラ様が挨拶にお見えです」
「わかった、アリス。通してくれ」
「では、失礼します」
アリスがそう言いながら扉を開けて入ってくる。そして、そこで目にしたのは俺と仲良く話す雪の姿だった。
「な、なんで雪菜先生までいるんですか!?」
アリスは予想外の雪の登場に驚きを隠せずにいた。えっ、そんなに驚くことかな・・・まぁ、黙って呼んだんだけど(笑)
アリスは「コホン」と咳払いを一つして、
「まぁ、いいです。どうぞ、お入りください」
そう言うと、アリスの後から2人の女性が入ってきた。
「今回のOP曲を担当するルナとキララです。宜しくお願いします」
と、キララと名乗った大人っぽい女性が挨拶をした。それを聞いて俺は、
「あ、よろしく〜それと敬語は使わないでいいよ〜俺苦手だから、敬語使われるの」
「「は、はい」」
一通り挨拶が終わり、俺はアリスの方を見る。
「で、アリス。これからどうしたらいいの?帰っていいの?」
「えっ!?い、いや、その、どうしましょ・・・」
逆に質問される始末である。おい、その後のことぐらい考えていてくれよ・・・・・・全く。そんなアリスと俺を全く気にもしない様子で、雪はルナキラの2人と楽しく?話していた。
「ぼ、僕、ルナキラさんの大ファンなんです!!サインください!あ、後、握手もお願いします!」
「あ、は、はい・・・」
「ありがとうございます・・・」
なんて積極的に話している雪の姿を見て、あいつスゲェなと思いつつ、アリスと話を続けた。
「なぁ、アリス」
俺は少し真剣な顔でアリスに聞いた。
「まじで、もう帰っていい?」
「えっ、今なんて?」
あら、聞こえなかったのかな?それに、口調がなんか変な気が、でも、もう1度・・・・・・
「だから、もう何もすることないから帰っていいかなーと思って・・・・・・」
「うん、帰っていいよ(怒)」
「えっ、いいの!?じゃあ、」
そう言って、ドアの方へと歩きだそうした瞬間、襟を後ろから掴まれた。
「ぐぇっ。な、何すんだよ!アリス」
と後ろを振り向いた先にいたのは・・・・・・いつもの優しいアリスではなく、日々のストレスが溜まり、堪忍袋の緒が切れかけているアリスがいた。なんというか、イラついていた。
「ゆうちゃん?いいよって、言われてこの状況で普通帰る?」
あ、これやばいヤツだ。
「えっと、そのぉ、次号の原稿も書かないといけないんですけど・・・・・・」
言い訳をして逃れようとするが、
「それは大丈夫でしょ?」
真顔でアリスが言い放つ。
「へっ?」
全くの予想外の答えに思わず情けない声が出てしまった。
「いつもの2.3倍で書けば間に合うでしょ?それに、ワガママ言ってアニメの方にも出てるよね?」
と真顔で親指を立てて、言われても・・・・・・あっ、もしかして、俺に死ねといっているのかな?
「まぁ、どうしても無理って言うなら、発売日が遅れて、全国にいる読者が悲しむだけだから、関係ないもんね。emeral先生は、待っている読者の皆様を大切にしない人でしたもんね、うん」
あぁ、ダメだこりゃ、もう諦めるしか・・・・・・、
「わかったよ、やるよ!やってやるよ!」
「うん、頑張ってね」
思い出した、全くといっていいほど、話したことがないじゃないか!
まぁ、あのおかけで俺の執筆スピードも上がったんだっけな、と少し昔のことを思い出し、ふと現実に意識が戻った時に、少し先の方で係員らしき人が、
「開場時間になりましたので、どうぞお入りください」
という声が聞こえてきた。まぁ、俺達が、並んでるのは列の真ん中ぐらいだし、もう少しかかるかな・・・と思っていると、後ろから、
「ねえねえ、君可愛いね。いくつ?」
「このライブの後にさー、二次会行かない?」
おいおい、まてまて。なんだ今の超古典的なテンプレのナンパ文句は。それに、ライブの後の二次会って何!?初めて聞いたんだけど(笑)いやいや、そんな事はどうでもよくて!どうやって間に入るか・・・・・・うーん、俺の前には咲がいるし、これは困った。と、俺が頭の中でうーんうーんと悩んでいると、言い寄られている雪が口を開いた。俺の右腕に抱きついて、
「ごめんなさい!実は僕結婚してるんです!」
なんて言い放ちやがった。マジかよ、マジですか。あなた男ですよね!?それに結婚って誰と!?もしかして、この状況だと・・・俺!?
はぁ、相変わらず凄いことを言う、全く雪は。恐らく、ナンパした2人もさぞ驚いているだろうに・・・そう思うことで、どうにか冷静になった。仕方ない、ここは雪の作戦に乗ってやるか。そう覚悟を決めて、後ろを振り向いた。
「どうしたんだ、雪。いきなり抱きついてきて」
「ゆっくん〜ナンパされちゃった。キャハ」
何がキャハだこの野郎、俺の覚悟も知らないで、と穏やかじゃない俺の心の中の事なんて全く気づいていない様子でベタベタしてくる。しかし・・・こう頼られるのも悪くは無いかもしれない・・・はっ、危ない危ない。
と、そこに前を向いて待っていた咲が後ろの騒ぎ?に気付いた。そして、咲は見事な程に大きな爆弾を無意識に落とした。
「パパ?どうしたんですか?」
ピィキーン
周囲の空気が一気に凍りついた。
長い沈黙を破ったのは、ナンパしてきた2人のうちの1人だった。
「既婚者で子持ち!?一体いくつなんだ!?」
「女性に歳を聞くなんて失礼ね!」
いや、あなた男でしょ!俺は心の中でツッコミを入れる。
そして、雪は
「そういうことだから、ごめんなさいね♡」
と、ウィンクと捨てゼリフを残して、咲の手を引いて前の方へと歩いて行く。その後ろを慌てて俺は追う。ナンパしてきた2人はもう会うことはないだろうと思いながら。