007.繁殖力とシオンの心情
魔物を配置してから1時間。思ったりよりも早くゴブリンが繁殖を開始し始めた。
自室兼書斎から少し北西に離れた場所に簡素な部屋を二つ作り、スライムの部屋は『作成』と『イメージ』を掛け合わせて、湿度の高い部屋にした。物はなにもない四角い岩肌の部屋だ。ゴブリンの部屋は、少し広めの部屋に区切りをつけて繁殖スペースを作った。丸見えの場所でゴブリン同士がそんな行為してるのを見るなんてたまったもんじゃないしな。
スライムはもう少しかかるそうだが、3匹しか居ないゴブリンは一体のメスゴブリンを取り合うように二体のオスゴブリンが……って、やめておこう。
そんな状態が2日続いてからは、あっという間に数が増えていった。スライムは、水分と少量の核から放出される魔素を吸収し、一定の大きさになると二体に分裂して元の大きさに戻る。また、その二体が一定の大きさになると分裂。更に分裂、分裂、分裂…ということで、スライム部屋が大変なことになっている。
現在、およそ80体のスライムがいるので30体程はダンジョンの通路に待機させ自由に分裂させて、スライム部屋にいるスライムは湿気の量を減らし分裂速度を落としておいた。
これなら多分、程よく分裂してくれるはずである。
ゴブリンに関しては、メスゴブリンが可哀想なぐらい必死だ。ただ、体力に限界があるのか、ある時メスゴブリンが近づいてきたオスゴブリンの急所を思いきり拳で殴り、奇絶させていた。
ゴブリンが人間と同じように痛がるのにもびっくりしたが、無意識に内股になってしまったのは内緒だ。
召喚する際は性別指定が出来ないので、正直メスを召喚してあげたいが、メスゴブリンが最初から召喚されなかった場合、無駄なポイントを使うことになる。ポイント自体は低いが、ケチってなんぼである。可哀想だが、もう少し、あのメスゴブリンにはうまくやってもらおう。
スライムは、一時間に3体〜5体
ゴブリンは、一日に1〜2体
の間隔で増えていった。恐るべし繁殖力。
色々とひと段落して、確認してみた。
残りのポイントは1790pt
2000ptもきったので、そろそろダンジョンを繋げていこうと思う。
「はい、そこで、このダンジョンの名前を決めたいと思うんだけど、何かいい案ってある?」
「そうですね。………ハヤトダンジョンとか…あとは、ハヤト村、ハヤト島、ハヤトタワー、ハヤトシティ、ハヤトー…」
「ちょ、ちょっと待って。そのハヤト縛りなに!?自分の名前を付けるとかちょっと恥ずかしすぎて出来ないから!しかも村でも町でも無いしな…」
「も、申し訳ありません。」
泣きそうな顔で真っ赤に頬を染めたまま、ダンジョンの名前を考えている間に時間が過ぎていった。
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✳︎シオンサイド
【本日は、私の命を生み出してくださった偉大な創造主様とダンジョンの名前を考えました。
今までも、創造主様には色々と質問をしていただいたり、私の意見を怒ることもなく取り入れていただいたり。こんな私でも頼りにしていただけているんだと思い、日々がとても幸せです。
ですが、本日は少し調子に乗ってしまったみたいです。
ダンジョンの名前を決める際に、なにかいい案が無いかと聞かれました。
私が好きなものが参考になら無いかと思い、思い浮かんだことを言葉にしたら、思わず創造主様の名前を連呼してしまいました。
ほぼ無意識に発言してしまったので、創造主様には「そんな恥ずかしい名前は無理だ」と、不快な気分にさせてしまいました。怒ってしまわれたでしょうか…
ですが、無意識とはいえ創造主様の目の前であんなに何回もお名前を呼んでしまいました。しかも…】
「ハヤト………うきゃああぁぁ〜〜」
私はシオン。毎日、その日あったことを日記にまとめる事が日課です。創造主様に頂いた毎日を一日一日忘れないために欠かさず付けているのですが、本日は筆の進みが悪いです。
「だって、ハヤト様のことをハヤト、ハヤトって、ああ〜〜」
今はハヤト様がおやすみする時間なので、睡眠をとる必要は無いですが私も休憩のお時間を頂いていました。
明日ハヤト様が起きてきたとき、どんな顔をして会えばいいのかわかりません。
私にとってハヤト様は……
今日はもう休みましょう。
シオンの可愛い部分は、ハヤトの前以外でチラホラ見え出します。