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クエスト名称:キャラバンを活用せよ


 虫笛をぶんぶんまわしてモンスターを呼び寄せ、ファイア無双で倒して、またモンスターを呼び寄せるを繰り返す。


 そのサイクルの合間合間に僕は、フィールドに落ちていたり生えている素材を集めた。

『植物素材』の筆頭はやはり、ヒットポイントを回復させる薬草だろう。


 ほかにもいろいろあって、熱冷ましの〔解熱草〕、

 幻覚を引き起こす〔フリフリ草〕、

 一時的に疲労度を回復させる〔タパン花の蜜〕をゲットした。

 集めた素材はこれだけではない。


『粘土鉱物』だ。

 フィールドで泥濘んだ場所があって、そこで〔赤い粘土〕と〔タングステンの粘土〕をゲットした。

 これら素材を用いての武器・防具等の作成は行わないと、真衣と決めたので、ポポ村に帰ったとき、店で売却してお小遣いにしよう。


「ちょっと! 素材ばっかりたくさん入れると、袋からあふれちゃうでしょ!」

「いいじゃん。そのときは不要なものを捨てればいいしさ。それに、重さは関係ないんだろ?」

「そうだけどね……まったくもう。蒐集欲を抑えなさいよ」

 言って、真衣が虫笛でモンスターを呼び寄せる。

 すると姿を現したのは、猫の皮をかぶったウサギ——りんちょだ。

「もふもふの毛をゲットするぜ!」

 意気込んでファイアを唱えようとすると、突然。


 りんちょは垂れたウサ耳をピンッと立てて、四方八方に動かし、あたりを窺う仕草をみせた。

「あ! りんちょが逃げて行くぞ!」

「戦闘から逃げるモンスターじゃないのに、どうしちゃったのかしら?」

 真衣と顔を見合わせて首をひねると……。

 遠くの方から、ラッパや太鼓、シンバルの演奏が近づいて来た。


「なんだ!? 賑やかな連中がやって来たぞ!?」

 牛のようなモンスターに曳かせた車と、それに搭乗する人たち。

 車といっても幌馬車で、荷物を背負わせたロバのようなモンスターも一緒に引き連れて、彼らはやってきた。

「あれは、タンポポキャラバン!」


「真衣、知ってるのか? タンポポ……キャラバン?」

 こくりとうなずいて真衣は、

「私もまだ1回しか会ったことがないわ。タンポポキャラバンは、武器や防具、アクセサリーを販売する商人たちで、この世界の各地をまわっているの。ここで会えるなんてめずらしい」

「へぇ。そう言われると気になる。ちょっと行ってみようよ」

 ということで、キャラバンを冷やかしに行くことに。


 太鼓をドンドン叩いているおっちゃんが、

「おや、旅人かな? それとも冒険者? ハハハ。俺もむかしは、君たちのようにモンスターを相手にしていたが、膝にブリザドの氷刃を受けてしまってな……。ま、とにかく商品を見て行ってくれ。スズランキャラバン一押しの品たちだ」

「スズランキャラバン? タンポポキャラバンじゃないの?」


 疑問符を頭の上に浮かべて真衣が、小さな布の袋を掻きまわし、

「ほら、これを見て」

 と、ハガキサイズの用紙を取り出した。

「以前、出会ったキャラバンに貰ったのよ。ここにハンコを押してもらったわ。タンポポキャラバンって名前が入ってる」


「ハハハ。キャラバンはタンポポだけじゃないぞ。われらキャラバンは、スズランという名で世界をまわっている。詳しいことはスズランキャラバンのリーダー、その名もスズランに尋ねてみな」

 親指でおっちゃんが、うしろの幌馬車の中をさした。


 中には、鈴蘭のように白い肌をした綺麗な少女が、カラフルな民族衣装を着て座っている。可愛い少女だった。

 リーダーであるスズランを見た真衣が、

「タンポポキャラバンのリーダーも、名前をタンポポと言って、スズランキャラバンのリーダーと姿がそっくり。……グラフィックの使いまわしだわ」

 テンションの下がる発言をした。


「旅人ですか? よろしかったら、わたしたちの商品をご覧ください。まあ! キャラバンスタンプ帳をお持ちなのね。スズランがないので、スタンプを押しましょう」

 ぺったんこ。

「スタンプの数で、商品の価格を割引します」

 八重歯を覗かせて微笑むスズラン。

 いろいろと商品を見せてくれた。

 ポポ村のような小さな村にある店では取り扱っていない商品がたくさんある。

 武器も防具もアクセサリーも、魔法の書物や素材だって販売してある。


「ん? 〔中くらいの布の袋〕があるわ。値段は……200Gもするの?」

「割り引いてくれるんじゃないのか? 買っちゃいなよ。そうすりゃ僕もたくさん素材を入れられるし」

 名前からして、中くらいの布の袋は小さな布の袋の上位だと思われる。


「うーん……そうする……かな」

「あ、だったら小さな布の袋はいらなくなるだろ? 僕にちょーだい」

「ちゃっかりしてるわね」

 お金を支払って、中くらいの布の袋を購入した真衣。

 僕は、真衣のお下がりの小さな布の袋をゲット。


 ついでに……。

 僕が集めた素材を売却して、手持ちのゴールドは1200Gになった。

 小金持になったけれど、

「魔法の書物も買ったほうがいいわね。割引してくれるし」

 と、財布の紐を握っている真衣が言った。


「どんなのを買うんだ?」

「そうね……

 ファイアの上位魔法『ファルガ』、

 氷魔法の『ブリザード』、

 雷魔法の『サンダー』。

 あとは……回復魔法の『ケルファ』、

 毒や麻痺などの異常を回復する『デトックス』。

 補助魔法で、味方の攻撃力をアップさせる『ストライク』。こんなところかしら」


「いっぱい買い込むなあ……」

 魔法の書物と大量のゴールドが飛び交う。

 僕が集めた素材で得たゴールドが、一瞬で吹き飛んだ……。


 と……。

 妙な商品が目に入った。

「なんだこれ?」

 プラスチックの吸盤のような物で、表側にはぷっくりとしたツマミのような凸起が。

 僕の問いに、スズランが答える。

「これは、〔シャランポアのつけ乳首〕です。セクシー度がアップします」

「つけ乳首!!」


 衝撃の商品が置いてあった。18禁アイテムじゃないのか!?

「こちらには、〔シャランポアのヌーブラ〕、〔シャランポアのキワドい水着〕などもありますよ」

「なに、そのシャランポアシリーズ!」

「もし、りんちょの毛が素材としてあれば、〔シャランポアのバニー服〕が作成できますが、持っていますか?」

「いやー、残念ながら、りんちょの毛は持ち合わせていなくって……」

「なにが『残念ながら』なのよ!」

 憤慨した真衣が怒鳴り散らす。


「持ってたら作る気なの!? バカじゃないのまったく!」

 打倒魔王に関係ないでしょうが! と捲し立てた。

 だが、本当に関係ないのか?

 僕はシャランポアシリーズの真価を見出すために、想像した。


『真衣、見てごらん! シャランポアのつけ乳首をつけて、シャランポアのキワドい水着を着てみたよ! 似合うかな?』

『あら! セクシーじゃない、どうしたの?』

『イメージチェンジってやつさ。セクシー度をアップしたんだ!』

『まあ、そうだったの。でも、こういうのを経験する事のほうが、もっとセクシーになれるわよ』

『わわっ。真衣、どこに手を入れているんだよ……水着の中はダメだって、そんな……。僕は男の子だよ』

『この世界では、女の子でしょ? ふふ。どう? 気持ちいい?』

『ああぁ、そんなところ、くちゅくちゅされちゃったら、あっ、あっ』

『ふふっ、気持ち良いのね。それじゃあ、ここをクリクリするのは?』

『そこ……んあっ! んんー、きもちいぃぃぃ』

『お互いの初めて、交換しよ? ふふふ』


 ムハァーッ! これはエロい!!

「真衣! シャランポアのつけ乳首は、是が非でも買うべきだ!」


「買うわけないでしょうが!」

 鬼の形相をした真衣に、

 ガツン!!

 鈍器のような魔法の書物で頭を叩かれて、

「なにを妄想してんのよバカ! どーせ、イヤラシイことでしょ! ふんっ」


 ものの見事に看破されてしまった。

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