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プレイング ワールド  作者: 白神 こまち
気がつけば……
1/35

そこは異世界。ゲームの始まりだった。

「ここは、いったい……どこなんだ?」

 車一台が、やっと走行できるくらいの道幅だった。

 野道の両脇に茂っている雑草が、そよ風に吹かれて、眩しい太陽の光を仰いでいる。


「……青臭い」


 夏草なのか、つんと臭う。湿った土の匂いもした。

 あたりに目をやる。

 この野道に沿って左側は、樹木が密生している鬱蒼とした森で、小鳥のさえずりが微かにきこえる。


 一方、右側には湖があった。

 その湖の中央に、石造りの大きな城が浮かぶようにあって、陸地へ架けた跳ね橋も見える。BS放送で特集を組んで放送されるような、中世ヨーロッパふうの城だった。

「いや、マジでどこ……?」


 僕は確かに自分の家で、自分のベッドで、寝ていたはずだ。

 なのに、気がついたらまったく知らない、見知らぬ土地にいた。

「誰かあ! 誰かいないのかあ!」

 叫んでみるも、虚しいほどに返事はない。

 と、思ったら。


「おーぃ……ユッキー……」

 聞き覚えのある声だ。

 僕の名前、羽柴優希はしば ゆきのあだ名であるユッキーと声を張っている。

 振り向いてみると、こちらに手をふって駆けて来る人影が。

 ん、あの美少女は……。


「真衣?」

 近所に住む、保育所から一緒で幼馴染みの朝倉真衣あさくら まいだ。

 黒髪のショートヘアを靡かせて、この上なく整った顔立ちにうれしさを浮かべて駆けて来る。

 精気みなぎる血色の良い肌を、やや紅潮させて、

「やっぱりユッキーだったのね! 会えてよかった!」

 息を切らして真衣はそう言った。


 が、僕は、真衣の格好におどろいた。

「真衣……いつからコスプレが趣味になったんだ?」


 これまた中世ヨーロッパふう。

 当時の騎士が着用するような鎧で身を固め、左手に逆三角形のまるみを帯びた盾を持ち、腰には剣を装備している。

 まるで本物のような銀色の鎧は、非常に扇情的で露出度が高く、真衣の、こぼれ出そうな立派な胸の膨らみを、ゆたんゆたんと揺らして艶かしく演出。とってもセクシーだ。


 みずみずしい色気にみちた胸をガン見して僕は、

「でも結構、似合ってるよ。うん」

「ばかっ! コスプレじゃないわよ!」

「じゃあ、それ私服? 僕の知らないところで、そういう性癖を開花させたのか……」

「ちがうわよ!! 私のはなしをしっかりきいて! 大事なだから!」


 卵形の小顔を真剣な表情にして、革のグローブをはめた手で前髪をはらった真衣は、

「ここはゲームの世界よ。しかも、RPG!」

「……はい?」

「ここは、ロール・プレイング・ゲームの世界なの!」


 僕はまだ、夢の世界にいるようだった。

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