その8
主人公の秘密完全解禁と、空の告白内容が解ります
「泡だよ」
「泡?」
伝わりやすいと思ってたんだけど、どうも勘違いだったらしい。さて、どう説明しようか。
彼女の反応を見ながら話し始める。
「ソラちゃんさ、水の中で目ェ開けたことある?」
空木空改めソラちゃんは、こくりとうなずいた。まあ、水泳ゴーグルが一般的な時代だしね。
「あの時、口をあけるとブクブクっと泡が出てくるでしょ?あの感じ」
おかげでいつも水の中にいるみたいだ。世の中は思っているより、ずっと嘘が多いのである。
ちゃんと理解を得られたようだ。ぽかんと、些か間抜けにも見える表情をして固まっている。
次の瞬間、彼女が勢いよく立ち上がった。どのくらいの勢いかというと、座っていたパイプ椅子が盛大な音を立てて倒れたくらいだ。がちゃんという激しい音が、耳に響く。
「すごい!すごいね、それ!すっごい魅力的!」
…え?ここで告白?っていうか、すごいのは俺?見えるってこと?
目を丸くする俺の手をソラちゃんががっしりと掴んだ。恥ずかしいって言うより、ただ吃驚する。
「ねぇ!協力して!」
何にだよ。そういう感情が、表情から駄々漏れだったようだ。慌てて付け足してくる。
「あのね!あたし、この力を使って人助けがしたいの!」
人助け。その言葉を受けて、なんだかがっかりした。そんなことを知るはずもないソラちゃんは、まだ熱を入れて語っている。
「今はまだあたしとクロウだけなんだけど、紫合君も一緒にやろう!」
「へぇ、人助けって何やるの?」
完全に、意地悪な気持ちから来た質問だった。たぶん、今そうとう悪辣な顔をしてるんだろう。もしくは皮肉気か。
手を離して、可愛い顔に満面の笑みを浮かべる。純粋なことで。
「あたしは人の傷が見えるし、その傷に触れれば何が傷になってるのかわかるの」
そして思い出すように、嬉しそうに話す。
「クロウはね、物が持ってる情報が見えるんだって!鳥や木とも話せるのよ」
…嫌な能力だな。
「いろんなものがラッピングされてて嫌なんだって」
意味がわからないけど、まあ、ソラちゃんに説明を求めても無駄だろうな。
一応、三月の間は日々更新するために頑張ります