その7
今回と次の話で、プロローグの意味が解っていただけるかなぁ…
俺は首に手を当てて、頭を右に傾けた。首の筋がぴんと張るのを感じる。それから両手を挙げた。いわゆるホールドアップだ。
「降参だよ。俺にも、そういう変なのが見える」
言うや否や、嬉しそうに俺の右手を両手でぎゅっと握ってきた。手が柔らかくて小さくて、爪もマニキュアを塗ったみたいにきれいな色をしてる。どこまで完璧な美少女なんだ、この子?
「何?何が見えるの?」
「ちょ…、手を、その…」
女の子は大っ好きだ。可愛いし、俺に対してめったに嘘をつかないし。でも、ボディタッチとか、そういうのが平気なわけじゃないんだ。だから正直、めっちゃ恥ずかしいんだよ!
でもそんなの、今まで俺の意見をほとんど聞きもしなかったこの空木空が聞くわけなかった。全っ然開放する気がない。むしろぎゅっと力がこもったくらいだ。
「えっと…、その…」
「何?何なの?」
せめて視線だけでも逃がそうと下を向くと、ダイレクトに彼女の胸元が見える。身長の割に大きな胸が、すごく目立つ。いや、やっぱだめだ。女好きと言いきれないのは、無駄に理性が高い所にあると思う。
仕方なく、そこからさらに奥を見て、保健室の扉に目を向けた。人は誰もいない。万一、空木空が大声を出しても大丈夫だな。
深呼吸で気持ちを整えてから、聞こえるか聞こえないかの小さな声で伝える。
「嘘が…見えるんだ」
「え?何?」
外に人がいたらどうしようという警戒心が残っていた。でも、聞き返されたらそんなことどうでもよくなってしまった。もう面倒だ。
「見えるんだよ、嘘が」
「…嘘」
「君が言うかね」
「あ、ごめん」
俺の手から離れた彼女の両手は、そろってその口元へ引っ込んだ。なんか、動作が可愛いというより、子供っぽい気がする。
「ほふひふふふひ…」
「や、何言ってのか分かんないから」
口に手をあてたまましゃべろうとしちゃダメだろ。
「そっか、そうだよね」と手を下げると、椅子に座りなおしてこちらを見てきた。さっきはベッドに前のめりだったから気付かなかったけど、今の体勢だと彼女の上目遣いが真正面にあることになる。これはこれでいいアングルだけど、ちょっと恥ずかしい。
「どうやって見えるの?」
ソラはまだまともですねぇ