表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空木空観察日記  作者: 環田 諷
第一話
6/56

その5

プロローグとやっとつながり始めるかなぁ…という回です

「な、にを、言っているのかな?」

 とりあえずしらばっくれることにした。しかし、そんなことで許してくれる子じゃなかった。

「じゃあ、屋上に行こう!そこでなら話せるでしょ?」

 や、話す気ないって!

 彼女はまた俺の腕をつかむと、そのまま廊下に引っ張り出した。

 まずい。放課後の廊下はだめだ!

 抵抗するのが遅かった。俺は廊下に出てしまった。

 目の前に現れる球体。廊下中に浮かび上がっているそれが、俺の視界を埋め尽くした。視覚から強い吐き気を覚える。思わず壁に身を預けるが、その際にいくつかの泡に触れてしまった。

「ごめんねぇ!今日一緒に帰れなくてさぁ」

『ってか、あんたあんま好きじゃないんだよね』

「中間テストどうするよ?おれ全然勉強してなくてさ」

『ま、ばっちり勉強してんだけどな』

「え、代わってくれるの?助かる~!今日塾でさぁ」

『本当は彼女とデートなんだけど、そういったらこいつ代わってくれるしな』

 様々な声が頭の中に響き渡る。頭が痛い。だるくて全身から力が抜ける。

紫合(ゆうだ)君?!」

 最後に聞いたのは、あの変な美少女の声だ。驚いた声も可愛いことで…


 はっと目を覚ますと、目の前は真っ白だった。泡の姿はない。どこだ?ここ。上体を起こそうとするがけど、体が重たくて持ち上がらない。かろうじて持ち上がった右腕を、目の上に乗せた。視界が一転、真っ暗になる。

「あー…、やっちまった…」

「何を?」

 びくっとして声のほうを見ると、空木空(うつぎ そら)が立っていた。相変わらず、外見だけは目の保養。俺を介抱してくれてたんだろう。まさに天使。うん、絵だけなら十分に天使。

 俺は博愛主義だ。自他共に認めるフェミニストでもある。でも、平穏を崩されて怒らないでいられるほど大人じゃない。

「君のせいで!俺の高校生活はもう終わったってこと!」

「なんで?」

…イラッとしてくるぞ、これは。

 でもなんでかガツンと怒る気がしなくて、大きくため息がふぅと出た。

 放課後の保健室で美少女と二人。なのに喜べないって、どういうことだよ?

勘の鋭い人は、もう泡の正体がわかってしまったかも…。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ