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空木空観察日記  作者: 環田 諷
第一話
5/56

その4

変な子、というよりは、まだ空気が読めないみたいな感じだなぁ

「その目の傷、どうしたんですか?」

 …へ?

 目の前に美少女の顔があるのに、顔を真っ赤にするのも忘れた。プレイボーイでもないんだけど。

 この距離で聞こえなかったとでも思ったのだろうか?もう一度、同じセリフを彼女は言った。

「あの、その目の傷、どうしたんですか?」

 …ひとまず読者の皆様に説明させていただこう。俺の目に傷なんてない。そんな海賊漫画みたいな特徴は一切ない。いたって普通のイケメンだ。某男性アイドル事務所系というよりは、俳優系かもしれないけど、そんな、顔に傷があるほどワイルドじゃない。

「えー…と」

 今解った。さっきのあの視線。あれは「羨望」じゃない、「同情」だ。この俺が憐みの目を向けられたんだ。本来羨むだろう状況で、こう思うなんて思わなかった。

 誰か助けて!

 俺が困っていることに彼女が気付いてくれた。ネクタイから手を離し、ごめんなさいと謝ってくる。そして彼女は眉をハの字にして笑う。

「自己紹介もなしに、失礼でしたね」

 うん、自己紹介があっても驚くけどね?

「あたし、空木空(うつぎ そら)っていいます」

 …え?彼女が吉野の言ってた、隣のクラスの美少女?

 バッと振り向くと、少しずれて吉野が俺から視線をそらした。そのまま、わざとらしくカバンを漁りだす。

 もしかして、なんか大切なことを聞き逃したんじゃないか?

 困り果てた俺の腕を、グンと勢いよく引いた。

「クロウ以外に初めてなの!目に傷のある人」

 クロウって誰やねん。あまりに意味のわからないことをいうから、思わず関西弁になったじゃないか!がっつり関東人なのに。

 でも。

 目に傷のある人(・・・・・・・)

 この表現は、地味ィに気になった。ちょっと、心当たりがないというわけではないのだ。

 しかし、次の一言が決定打になった。

「ねぇ、あなたには何が見えるの(・・・・・・)?」

 すっと血の気が抜ける気がした。まるで幽霊が見えるというような彼女の発言に、クラス中がざわめいた。幽霊は確かに怖い。霊能者なんて、正直テレビの中だけでいい。

 けど、俺が驚いたのはそこじゃない。

 なんで知ってる?それは誰にも言っていない、俺だけの秘密のはずだ。

 手の体温がなくなる。足もどんどん冷える。とっさに、これだけは理解できた。

 この子と関わってはいけない。

 どうする?どう逃げる?

 頭がフル回転する。回答が出るより先に、彼女が自分の口をふさいだ。

「あ、これ人前じゃダメ?」

 今さら解ったかとか、そんなことも思えない。

 女の子の前で立ち止まったまま、動きもせずトークもできないなんて、柄じゃない。だからクラスメートが見ているのだと、心から信じた。


主人公ピンチのまま次回へ続くっていう、ありがちな展開で申し訳ない(笑)

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