その2
主人公のナルシストっぷり、解放の回です。
なんという内容もなく、あっさりとホームルームは終わった。
吉野に続きを聞こうと振り返るのとほぼ同時に、女の子たちが集まってきた。
「紫合君っ!昨日通学路で『リセ』ってカフェテリアを見つけてね…」
「紫合君って今度の週末は暇?」
「あ、このシャーペン使いやすいよね、あたしも持ってるよ!」
あっという間に周囲に輪を作った彼女たちは、思い思いに話し出す。輪に巻き込まれる形になった吉野が、女の子たちの顔と俺の顔を交互に見た。そして思わずつぶやく。
「ほんと、女子ってイケメンに目がないよな」
自覚はないけど、と言いたいところだが、残念ながら俺には自分が「イケメン」と呼ばれる類に入る人種だという自覚がある。自覚を持たなきゃ、本当に残念な人たちに申し訳ないからな。
「悪いな」
俺は嘘が嫌いだ。だから、謙遜もあまり好きじゃない。正直に生きるまでだ。
でも、正直に生きていれば、これで嫌な奴だとはなかなか実際思われないようで。
「そのキャラがいいんだって」
「そうだよ、紫合君は性格だって素敵だもん」
「どんなにカッコよくたって、性格悪くちゃダメだもんね」
先ほどまでばらばらに話していた女の子たちが、結託して「ねー」と声を合わせる。女の子の結束力ってすごい。
同性の吉野も、
「ほんと、『ただしイケメンに限る』だよな」とケタケタと笑った。怒ってる様子も、嫌がる様子もない。世渡り力もなかなかだな、俺。
しかし、なにはともあれ美少女の話題が気になる。女の子たちが俺をほめてくれているすきに、こっそりと聞いた。
「なぁ吉野、隣のクラスの…」
「ゆーうだー!」
ドアのほうでクラスメートの男子が呼んできた。
「悪ぃ、今取り込み中だから!」
「俺じゃない!客、客!」
…客?俺に?
前に言った通り、まだ他のクラスとの交流はない。でも、クラスメートなら、わざわざ入り口で呼んでもらう必要もないわけで…
つまり、誰?
「え~、いっちゃうの?」と残念がる声を出す女の子たちに、可愛いなと思いながら、ドアのところに向かった。
次回、やっと題名にもある「空」登場です。言うほど美少女じゃなかったらどうしようか…