その1
三日目も主人公は、朝っぱらから不運ですね
翌朝もまた、早々と駅に着いた。
歩いていると、隣を神鷹の生徒が通り過ぎていく。そういえば、クロウは神鷹の生徒だったか。
そういえば、なんで彼がクロウと呼ばれているのか聞き逃した。だってあれ、完全に日本人だろ。実はお面を外すと目が青いとか?
考え事をすると、注意力が散漫になる。人が通り過ぎたことにも、後ろから誰かが近付いていたことにも気付けなかった。
「やあ、遅いね」
こもった声に吃驚して振り返ると、馬が立っている。もちろん本物の馬じゃない。パーティーとかで使う、あの馬のかぶり物だ。そして少なくとも今日はハロウィンじゃない。路上パーティーなんて素敵なこともしてない。ただの春過ぎの変質者だ。
「…誰?」
「ひどいなぁ、一日たたずに忘れるなんてっ!」
馬はおいおいと嘘泣きをする。いやだって、こんな変な知り合いは…いた。昨日できたんだ。
泣き真似をする馬を観察すると、服は神鷹の制服だ。今日は規定カバンではないけれど、これ以上エリート校に変な奴がいるとは思いたくない。
「…もしかして、クロウか?」
「あったりー」
ひょいと立ちあがると、泣き真似をして目元をこすったせいだろうか?馬面は見事に横を向いていた。
「ありゃ、視界が真っ暗だ」
「ぶっ」と思わず噴き出した。ソラちゃんも変だけど、彼のほうがずっと変だろ。馬の鼻先を探すクロウを見て、ふと気付く。
あれ?もしかして彼は…
「ソラちゃんと一緒にいるから、そんな変な格好を…?」
「あ、ごめん。これ耳のところ穴開いてないんだよね。なんて言った?」
「や、いい」
彼みたいなのがそんないい奴なわけないか。ソラちゃんが変に見られないように、もっと変な格好をしてるのかと思ったけど。
結構歩いていたはずが、まだ後方に駅が見えた。時間的には早いのに、なんで「遅いね」と言われたのかと疑問だったが、俺の歩行速度の話だったのか。
神鷹は俺たちの学校を通り過ぎた先にある。厳密にいえば、最後の曲がり角を曲がらずにまっすぐ進めば神鷹に着くというルートだ。そしてそれはつまり。
「せっかく会ったんだし、学校前まで一緒に行こっか?」
やっぱり。こんな馬面かぶったような男と、十分ほどの道のりを一緒に歩かなければならないなんて。
今日の俺はツイていないようだ。
クロウみたいな人を見かけたら、全力で逃げるのが本来は正解かと…




