その9
主人公が少し暗くなってしまいました…
「ここに紫合君が入ってくれれば、完璧じゃない?」
何がどう完璧なんだろうな。
気付かれないように失笑する。どうせ、苦笑いだとか作り笑いを浮かべたって、彼女は気付かないんだろうけど。
夕暮れはほとんど沈みかけ、茜色の端を夜闇が染め始めていた。布団をめくり、靴を探して履く。めくれたズボンのすそを戻して、ソラちゃんが持ってきてくれたのだろうカバンを持った。
ソラちゃんは嘘をついていない。こんな馬鹿げた話をして、あんなふざけた理想を語っていたのに、一度も彼女の口から泡が出なかった。冗談だって、俺の目には嘘の一つだ。紫色の嘘に比べれば、多少は淡い色をしているけれど、同じように泡が見える。だからわかった。
あんな馬鹿みたいな、異質の力で「ヒトダスケ」なんて夢企画を、彼女は心の底から言ってる。孫うことなき本心だ。
馬鹿らしい。
きらきらと輝かしい目を向けられながら、俺は出口に直行する。その動きを追っていた期待が、どんどん小さくなっているのを感じる。
「あ、あれ?紫合君?」
「悪いけどさ」
振り返ると、困っている表情が目に入る。その顔に、さっきのソラちゃんみたいな、満面の笑顔を向けた。
「残念なことに、俺、そんな前向きな人間じゃないんだよね」
そう言って、力の限り扉を勢いよく閉めた。
フェミニストにも限界が…




