異界編_3Mの帰還
3Mの第三十九弾、今回から異界編です
「年貢の納め時だな」
そう勝ち誇った顔をする一人の魔導師が居た。
神剣を構え、幾多の悪魔を切り捨て居た勇者、アアアが宣言する。
「我は、決して負けない! 何故ならば、我が後ろには、護るべき者が居るのだから!」
高笑いを上げる魔導師。
「愚かな! どれほど願おうと、絶対の力の前には、無力。それが解らないのか!」
「愚かなのは、お前だ! 我欲に溺れ、悪に下ってまで権力を欲する者よ!」
睨みつけるは、最強の武道家、エエエ。
「負け犬の遠吠えだな。歴史は、正義は、最後に勝った者だけが語れるのだ。さあ、イイイ。今こそ我が手の元に帰るだ!」
手を伸ばす魔導師に、王となったアアアの妻として王妃になったイイイが告げる。
「私は、アアアの妻。最後の瞬間まで、アアアと共にあります」
歯軋りをする魔導師。
「何処までも我の意に逆らうか! 良いだろう。邪魔なもの全てを排除し、ゆっくりとその心を手に入れるまで。やれ、悪魔達よ」
魔導師の命じられるままにその者達は、アアア達に襲い掛かる。
多くの返り血を浴びながらアアアの神剣は、振り続けられ、オオオの拳は、悪魔を貫き続けた。
しかし、人には、限界が存在する。
「どうした、そんな荒い息をして、もう限界なのか? まだまだ悪魔は、山の様に居るぞ!」
魔導師が言葉通り、王宮内には、無数とも覚える悪魔が存在していた。
その全てを倒す事等、例えアアアでも不可能であろう。
「神剣の力を全開で放てばどうにかならないか?」
エエエの言葉にアアアが首を横に振る。
「無理だ。溜めるだけの時間を作れない」
舌打するエエエ。
「こんな時にオオオがいたらな」
アアアが正面を見たまま答える。
「それを言うな。あいつは、メグミを本当に好きだったのだ」
「そうだったな。追いかける様と無理してたな」
エエエが懐かしむ顔をしながら語る。
「最後の噂を聞いてからもう十数年、無事にメグミの世界にいけていたら良いな」
「きっと行けている。あいつは、諦めない。絶対にやりぬく男だ。そして、俺も一度、言った事は、やり遂げる。ここは、大切な人間を護りきる!」
アアアの神剣が襲ってきていた悪魔を切り裂いた。
「流石は、大魔王バーマを倒した勇者アアア。しかし、もう限界だな」
魔導師の言葉の通り、アアアとエエエの体力は、限界に近づいていた。
「最後の賭けだ! 俺が時間を稼ぐ。その間に……」
エエエがそう言おうとした時、激しい衝撃が王宮を貫いた。
「な、何が起こった!」
動揺する魔導師と違い、アアアとエエエは、冷静にその要因を悟る。
「僧侶ウウウが施した結界を打ち砕く強力な力が王宮に放たれた。誰だ?」
アアアの呟きにエエエが嫌そうな顔をする。
「メグミが居た頃ならともかく、今の状況で考えられるのは、敵の増援だな」
「結界が破れた以上、この王宮とて安全とは、言えない。イイイ、子供達と共に逃げるのだ!」
アアアの言葉にイイイが悲しそうな顔をする。
「そんな、貴方を置いて逃げるなど出来ません!」
「甘えるでない! お前は、人類の次なる希望を護る使命がある。頼む、逃げてくれ!」
アアアの叱責にイイイが零れそうになる涙を堪え告げる。
「わ、解りました。必ず、人類の希望、貴方の息子を護りとおして見せます!」
背を向けようとしたその瞬間、その前に一人の少女が居た。
「逃げなくても大丈夫だよ」
いきなり登場した少女にイイイは、困惑した。
「貴女は、誰? 城の者の殆どは、事前に逃げていた筈?」
少女は、面倒そうに言う。
「流石に解らないか。それより、準備が出来た」
「もうちょういだ! それまでそこの二人に頑張らせろ!」
奥から返って来た野太い声を聞いてエエエが戸惑う。
「おい、今の声ってまさか」
アアアに至っては、少女の顔を見て呆然としていた。
「お前、その姿は、どうしたんだ?」
苦笑する少女。
「まあ、色々あるんだけど。そこのあんた。確か、元イイイ王女の婚約者で、王国一の魔法使いって名乗っていた、貴族のマママだよね?」
魔導師、マママが声を荒げる。
「黙れ! 我は、今やこの世界最強の魔導師だ! 悪魔ども、見せしめにあの小娘をなぶり殺しにしろ!」
マママの命令に一斉に襲い掛かる悪魔。
「危ない!」
庇おうとするイイイを引き寄せて空中に印を描く。
悪魔達は、描かれた印に弾かれる。
「おい、今のってまさか?」
エエエの疑問にアアアが気の抜けた顔で答える。
「どうしてあんな姿をしてるかは、解らないがそうだろうな」
エエエが呆れた顔をする。
「おーい、そんな格好して恥かしくないのか? 俺は、見てて恥かしいぞ!」
「五月蝿い、エエエ! さっきも言ったけど色々事情ってもんがあるの。そんな事より、いい加減、準備終わったでしょうが!」
少女が怒鳴ると、少女が現れた入り口から鎧を着込んだ男が入ってくる。
「お前のピンチに颯爽と現れるって奴をやってみたかったんだがな」
少女は、ニコリと笑う。
「そんな冗談を次ぎ口にしたら、その口を二度と開かなくするよ」
びびる鎧の男を見てエエエが囁く。
「あれって間違いなく本気だよな?」
アアアが疲れた顔で言う。
「泣いて土下座して治してもらうあいつの姿がはっきりと想像出来るな」
「お前等な、ピンチに助けに来た仲間にそういう事を言うか?」
鎧の男の言葉にイイイが驚く。
「仲間、貴方達は、アアアの仲間なのですか?」
鎧の男がアアアとエエエの前に立ち告げる。
「久しぶりで忘れられてるみたいだから挨拶しておく。俺は、大魔王を倒した勇者パーティーの戦士、オオオだ!」
オオオは、その拳で悪魔を吹っ飛ばす。
「戦士オオオは、行方不明だった筈だ!」
マママの追求に少女が言う。
「ほら、直ぐに帰らないから時間が大幅にずれて大変な事になったでしょうが」
「仕方ないだろうって、お前達、何休んでやがる!」
オオオの追求に座り込んだエエエが言う。
「そういうな、こっちも年なんだ少しは、休ませろ」
「すまない、正直、ギブアップ直前だったんだ。少し休ませて貰う」
アアアが手を合わせて謝罪をしながら体を休める。
「オオオ、そういう訳だから、暫く壁役頑張って!」
少女の言葉にオオオが嫌そうな顔をして言う。
「はいはい、解ったよ、メグミ」
その名前にマママの顔が強張る。
「い、今なんと言った! メグミだとまさか、あの娘がミラクルマジシャンメグミだというんじゃないだろうな!」
「だと言ったらどうする?」
少女、メグミの答えをマママが否定する。
「そ、そんな訳が無い! あれは、生きていたとしても四十過ぎ! お前みたいな小娘な訳が……」
言葉の途中でマママの頬が切れた。
「女性の年齢を気安く口にするもんじゃないよ」
メグミの忠告にマママが半歩さがったが、首を横に振って一歩踏み出した。
「例えお前が本物の3Mだとしても、今の我に勝てる訳がない! 悪魔の力を……」
メグミは、天に手を翳す。
『万の言葉、億の記憶、兆の理。世界の真理を表す汝と魂を共にする我が手の中に戻れ、界理の杖』
メグミの手の中に何処にでも転がっていそうな木の杖が現れた。
震えるマママ。
「界理の杖だと! そんな杖が界理の杖な訳が無い!」
その言葉は、強かった。
しかし、その強さは、マママの願望の強さでしかなかった。
「終りだな」
エエエの呟きと共にメグミが杖で床を衝く。
それは、波を産み、広がり、悪魔達を消失させていった。
杖で軽く肩を叩くメグミ。
「久しぶり。またちょくちょく厄介になるからよろしくね」
そういってメグミが手を離すと杖が消える。
「この世界の全ての理が刻み込まれた世界樹の枝。その力は、この世界の理を逸脱する存在を拒絶する」
マママが顔を引きつらせていた。
「あれだけの悪魔をあっと言う間に」
呆然とするイイイにアアアが言う。
「それが3M、メグミの実力。例え数多の敵軍とて、その存在がこの世界の者で無い限り、排除出来る。その力があればこそ、魍魎跋扈する大魔王の城を最低限の消耗で突破できたんだ」
「さてと、まだ戦う気?」
メグミがゆっくりと近づくとマママが、怯えた表情でジリジリと後退りながら言う。
「こ、今回は、不意を突かれたって事で一時撤退してやろう。しかし、我の後ろには、お前等が想像も出来ない強大な力を持つお方がいるのだ! 精々恐怖するのだな!」
強がるマママに対してアアアが睨みつける。
「お前は、どうやってこれだけの悪魔を従えた!」
「そうだな、小物にそんな真似出来る訳が無いからな」
エエエの言葉にオオオが首を傾げる。
「小物ってこいつってどんな奴だっけ?」
「「「「忘れるな!」」」」
アアアとエエエとメグミとマママが一斉に突っ込む。
「仕方ないだろう、片手で数える程しかあってないんだからよ」
オオオの弁解にメグミがイイイを指差す。
「婚約者を救うのは、私だとアアアに何度も突っかかり、その度、あちき達や周りに信じられない迷惑掛けてたでしょうが」
「聞いています。そして今回、こんな事になって本当に申し訳ありません」
深々と頭を下げるイイイを庇う様にアアアが言う。
「お前が気にする事じゃないよ」
その姿にメグミが胸を押える。
「こっちも意外とダメージ多そうだな」
エエエの言葉にオオオが目を寄せて言う。
「このチャンスに俺が上だって認めさせる」
そんな会話の横に逃げ出そうとするマママ。
「所で、悪魔王は、完全にこの世界に現臨しているの?」
メグミの問い掛けに冷や汗を垂らし振り返るマママ。
「どうしてそれを知っている?」
エエエが驚く。
「おい、マママのバックの事を知っているのか?」
メグミが頷く。
「大魔王バーマと肩を並べる存在、それ故に深遠の昔の争いで大魔王バーマの策略でこの世界から締め出され、戻る事が出来なかった者、悪魔王デモン。大魔王バーマが滅びた所為で帰還したって所じゃないかな??」
オオオがマママの胸倉を掴んで睨み告げる。
「そうなんだな?」
マママが否定する。
「ち、違う! 悪魔王デモンなど知らぬ!」
あからさまな虚言にエエエが突っ込む。
「さっき、メグミの質問にそれを知っているのか驚いていただろうが?」
「そ、それは、その。そうだ、ただのフェイクだ!」
思いついたままに嘘を吐くマママにオオオが拳を振り上げる。
「何発か殴っておくか?」
「や、止めろ。我に怪我をさせれば悪……強大な力をもったあの方が許さないぞ」
口を滑らしまくりのマママにメグミが近づいて笑顔で問い掛ける。
「喋りたくないならそれでも良いよ。ただしね」
メグミは、指先を噛んで流血させて、その血でマママの胸に印を描く。
「それは、人の隠し事に反応して効果を発動させる呪印。さて聞かせて、貴方の後ろには、誰が居るの?」
「誰が喋るか! ウグゥゥゥ!」
答えと共に苦しみ出すマママ。
「もう一度聞くけど、貴方の後ろに誰が居るの?」
顔を逸らして沈黙しようとしたマママだったが顔色を更に悪くする。
「黙って居ても隠している事には、変らないよ。オオオ、尋問続けていて、あちきがこっちのメンバーに説明をしちゃうから」
「任せておけ」
マママをオオオに任せてメグミがアアアの前に立つ。
「お久しぶり、えーとこっちの時間では、多分十数年ぶりになるんだと思うんだけど、あちきの体感でも一年くらい、オオオだとその半分って所」
「時間の流れが違うのですか?」
聞き返してくるイイイにメグミが頷く。
「そう。そしてあちきは、元の世界に戻った時、その差からこっちに来た時の外見に戻っていたの。こっちに来る時は、このままの姿だから何かあるんだと思うけど、それよりも問題は、悪魔王だよ」
アアアが頷く。
「大魔王バーマと肩を並べる存在がこの世界を狙っているって一大事だ。今すぐに討伐に向わなくては!」
メグミが首を横に振る。
「まだ完全に現臨してないというのがあちきの予想」
「その予想の根拠は?」
エエエの問い掛けにメグミが答える。
「大魔王バーマは、単独で悪魔王デモンを追い出していた訳じゃない。この世界に住む三体の獣王、幻獣王バハム、魔獣王デビン、覇獣王ガルンの力を借りている。少なく共その三体は、あちきが居た頃は、現存していたし、そう簡単にやられる訳が無い」
「そうすると悪魔王デモンの完全に現臨は、難しいわけだな?」
エエエの確認にメグミが首を横に振る。
「残念だけど不正解。あいつみたいに配下の悪魔を下賜された奴がきっと獣王達を襲う筈だから。逆言えばあんな小物が悪魔を操っているうちは、完全現臨は、されてないと思っても良い訳だけど、時間は、あまり余裕が無い」
アアアが深刻な顔をする。
「そうなると、俺達がその三体を護り通さなければいけないのか?」
「あちきが三体と交渉して、悪魔王デモンを追い出した術の主権を得れば、再び完全に締め出す事が出来るよ」
メグミの答えにアアアが申し訳なさそうな顔をする。
「平和な自分の世界に戻っていたのにすまない」
そんなアアアの顔を見てメグミは、本当の笑顔で答える。
「あの時も言ったけど、この世界は、あちきにとって第二の故郷。そして護りたい人も居る。だからあちきは、やってきたの」
「ありがとう」
アアアに抱きしめられ顔を真っ赤にするメグミとそれを憎悪の視線でみるオオオであった。
異界、悪魔王編開始です。
三体の獣王と悪魔王との対決の残り四話を予定しています。
ゆっくりお待ち下さい。




