放課後
帰りのホームルームで、数学の小テストが返された。
20点満点中、6点……。
ヤバい……。どんだけ間違えれば気が済むんだっていうくらい、間違えている。自分がこんなにバカだとは思わなかった。
「ねえねえ、数学、教えてよ」
ホームルームが終わって、大半のクラスメートが帰ったころ、あたしは二つ後ろの席の山田くんに話しかけた。英語は苦手だけど数学は大得意の山田くんは、
「今日の小テスト?」
と訊いてきた。
「うん。山田くんは何点だったの?」
「俺? 聞いて驚くな、満点だー!」
ドヤ顔でプリントを出してくる山田くん。たしかに20点満点、しかも花マルつき……。
「関口は? 何点?」
そう聞いてくるから、無言でプリントをわたすと、
「うわっ、マジで! おい、高島ー、関口の点数すごいんだけど」
山田くんと仲のいい友人、高島くんがなになに、とおもしろそうにプリントを覗き込む。そして直後、
「あははっ、ウケるー! 6点って何? 20点満点中6点って、逆にすごいんだけど。関口、おまえってバカだろ!」
「うるさい! バカじゃないし!」
くっそー、思いっきりバカにされた。この間の単元テストでは、二人とも見事に追試くらったくせに! あたしより20点以上低かったくせに!
高校生になって3ヶ月。だいぶ高校生活にも慣れ、仲のいい友達もできた。放課後には、山田くんや高島くんたちとふざけていることもある。もちろん勉強してるときだってあるけどね。
最近、あたしは山田くんが気になっている。きっとあたし、山田くんのこと好きなんだろうなーって思う。でも山田くんって意外とライバルが多くて、あたしのことなんて全然見てくれてないよね。そこはちょっと悲しかったりする。
でも、放課後はこうやって話ができるわけで……。
ホームルームが終わって15分後、あたしは山田くんに数学を教えてもらっていた。
「えー、意味わかんないし。何これ。なに、このわけわかんない因数分解。もうやだ。二人とも、なんでこんなのがわかるわけ?」
「俺、理数系だから」
ドヤ、って感じで言ってくるのがまたむかつく。くそ。
「いいもん。英語で勝つから」
「はいはい。――それで、ここの公式だけど」
ブルーのシャーペンが紙の上を行ったり来たりする。山田くんの手、大きいな……。指長いし、きれいだし。あたしは、思わず山田くんの指に見とれた。
「わかった?」
「うーん、なんとなく」
「おい」
苦笑する山田くん。その姿が可愛くて、ちょっとドキッとした。
「こんなのもわかんないなんて、関口ってバカだなー」
そう言って高島くんは、あたしの青ペンを奪った。
返せ返せと高島くんを追いかけると、残っていた女子からヤジが飛ぶ。
「愛梨、うれしそう」
「ホントだー。愛梨って、M?」
「わー、MだMだ、ドMだー」
「Mじゃない、ドMじゃないっ! うれしくもないから! っていうか、青ペン返せ!」
わいわいと賑やかな放課後の教室。
あたしはこの時間が好きだ。ちょっと気になってる山田くんと話したり、高島くんとわちゃわちゃしたり、かわいい結衣をぎゅーって抱きしめたり、萌ちゃんと恋話したり、そんな時間が好きなんだ。
あたしにとって放課後は、キラキラと輝くもの。
こういう平和な日々がずっと続けばいいなって思うのは、あたしだけかなぁ?
どうも、百田真咲です。
ペンネーム変更後、初の投稿となります!
この話は、百田の実体験が元です。なんつって(笑)
百田も放課後は好きです。
昼間はできないことができるし、いろんなこと話せるし。
なんか、『放課後』気に入っちゃった。放課後シリーズ、これから書いていこうかな……(笑)